2022/12/21

【優勝者決定】白熱のピッチコンテスト「Startup CTO of the year 2022」。栄冠は誰の手に?

2022年12月20日(火)、東京大手町で開催された「Startup CTO of the year 2022 powered by AWS」。
創業5年以内のスタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、技術課題の解決を通じた経営インパクトやリーダーシップなどを評価指標に今年最も輝いたCTOが表彰された。
登壇者は、事前応募の中から厳正なる審査を経て選ばれた6名のファイナリストたち。
1.FastLabel株式会社 恋塚 大氏
2.テックタッチ株式会社 日比野 淳氏
3.株式会社ログラス 坂本 龍太氏
4.株式会社FLUX Edwin Li氏
5.株式会社スマートラウンド 小山 健太氏
6.株式会社ナレッジワーク 川中 真耶氏
最終審査員には、グリーCTO/デジタル庁CTO 藤本 真樹氏、ビジョナルCTO 竹内 真氏、Chatwork CEO 山本 正喜氏、MIRAISE Partner&CEO 岩田 真一氏、AWSスタートアップ事業本部 技術統括部 本部長 塚田 朗弘氏など、技術理解が深いメンバーがそろった。
果たして、Startup CTO of the year 2022の栄冠は誰の手に──。テクノロジーを武器に新たな産業・ビジネスの創出を目指す、新時代のスタートアップの挑戦を速報レポートでお届けする。
INDEX
  • 1.FastLabel 恋塚 大
  • 2.テックタッチ 日比野 淳
  • 3.ログラス 坂本 龍太
  • 4.FLUX Edwin Li
  • 5.スマートラウンド 小山 健太
  • 6.ナレッジワーク 川中 真耶
  • Startup CTO of the year 2022の栄冠は誰の手に?

1.FastLabel 恋塚 大

1社目に登壇したのは、FastLabel開発統括の恋塚氏。同社は「AI革命のインフラになる」をミッションに、AIを活用し教師データ(AIに学習させるためのデータ)作成を効率化するAIデータプラットフォーム「FastLabel」を提供する。
恋塚氏は、「事業スケールを支える技術」と題して発表。ノーコードを活用することで、非エンジニアでも案件ごとにAIを作成し、教師データ作成を自動化した取り組みを紹介した。
審査員からは「意思決定のプロセスにどう関与したのか」「プロダクトの勝ち筋をどう描いているのか」といった質問が寄せられ、恋塚氏はビジネスサイドと開発サイドの関係性の深さやプロダクトの将来像、AI開発の未来への意気込みを熱く語った。
グリーCTO/デジタル庁CTO 藤本 真樹氏

2.テックタッチ 日比野 淳

2社目の登壇者は、テックタッチCTOの日比野氏。同社は「すべてのユーザーが、システムを使いこなせる世界に」をミッションに、さまざまな業務システム上でリアルタイムに表示されるナビゲーションをノーコードで作成・表示できるSaaS、「テックタッチ」を展開する。
日比野氏の発表テーマは、「プロダクトを堅実に伸ばすための大きな意思決定」。コードの複雑化による開発スピードの低下を理由に、サービスリリースから半年ほどで「サービスの大部分である拡張機能を0ベースで作り替える意思決定」をしたことを明かした。
質疑応答では、意思決定プロセスの苦労やビジネスサイドとのコミュニケーションに関する質問を投げかけられたが、共同創業者であるCEOの井無田氏との信頼関係や、価値提供を追求する組織のスタイルからもビジネスサイドとの衝突はなかったと力強く語った。

3.ログラス 坂本 龍太

3社目は、ログラスCTOの坂本氏が登壇。ログラスは「テクノロジーで、経営をアップデートする。」をミッションに、データドリブンな意思決定を加速させる経営管理クラウド「Loglass」を提供する。
「お客様に徹底的に向き合うプロダクト戦略」と題して、CTO自ら顧客課題と向き合う重要性を語った坂本氏。100社以上のヒアリングを通じて、後のプロダクト成長を大きく左右した「数日後の経営会議のために、数千枚のExcelと戦う担当者」との運命的な出会いや顧客課題に向き合う大切さを伝えた。
ピッチの最後には自身の夢として、「自動運転が現実になる時代、企業経営は勘や経験だけでいいのか。人間を超える意思決定があるのではないか」とビジョナリーなメッセージで締めくくった。

4.FLUX Edwin Li

4社目に登壇したのは、FLUX CTOのLi氏。同社は「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」をミッションに、メディア収益最大化ソリューション「FLUX AutoStream」などを提供する。
Li氏は「高速成長を支えるCTOの役割」をテーマに、“経営視点”を通じた課題設定やCTOとしての取り組みを紹介。グローバルかつアカデミックなバックグラウンドを持つLi氏ならではの国際技術団体との取り組みや、外国籍エンジニアの採用戦略を語った。
質疑応答では、「アカデミックの素養とビジネスのスピード感のトレードオフについてどう折り合いをつけているのか?」という質問が寄せられたが、2、3年先の未来を見据えたうえで、両者のバランスをとりながら意思決定する大切さを強調した。
MIRAISEPartner&CEO 岩田 真一氏

5.スマートラウンド 小山 健太

5社目に登壇者したのは、スマートラウンドCTOの小山氏。「スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界をつくる」をミッションに、 スタートアップの資金調達業務と投資家の投資先管理業務の効率化を行う「smartround」を提供する同社。
小山氏は、「スマートラウンドの経営課題と挑戦」と題して、スタートアップ全体の「大きな非効率」を解決する取り組みを紹介した。創業当初、日本に類似サービスが存在しないなか、ゼロからUI/UXを作り上げてきたこと。情報セキュリティ課題に対して、小山氏自ら手を動かし体制構築に挑んできたことなどを語り、前例のない課題に対し、自分自身の頭で考え問題解決に挑む大切さを強調した。
質疑応答では「セキュリティとUXのバランス」に関する質問を投げかけられる場面があったが、CEOの砂川 大氏が理想のUXを追求し、CTOの小山氏がセキュリティリスクをカバーするなど、お互いの役割を分担しながらユーザー視点と理想を追求する大切さを語った。
AWSスタートアップ事業本部 技術統括部 本部長 塚田 朗弘氏

6.ナレッジワーク 川中 真耶

6社目に登壇者したのは、ナレッジワークCTOの川中氏。同社は「できる喜びが巡る日々を届ける」をミッションに掲げ、セールスイネーブルメントクラウド「ナレッジワーク」を提供する。
川中氏は、「規模が拡大しても耐えられる創業期のシステム・組織設計」をテーマに発表。創業期にシステム・組織の2つを十分に設計する大切さや、それを実現するCTOとしての役割を語った。
最後に、「エキスパートによる完全分業体制」や「ドキュメント文化を構築し、コミュニケーションの定義」をしたことで、職種やチームが増えても歩みを止めずに成長拡大できていることを語り、ピッチを締めくくった。

Startup CTO of the year 2022の栄冠は誰の手に?

白熱のピッチが繰り広げられた、スタートアップCTOによるピッチコンテスト。表彰式では、視聴者による投票で決まる「オーディエンス賞」と「Startup CTO of the year 2022」が発表された。
まずオーディエンス賞を受賞したのは、ログラスCTOの坂本氏だ。
審査員のAWSスタートアップ事業本部 技術統括部 本部長の塚田氏からは、「とにかく熱いピッチに加えて、顧客と徹底的に向き合う姿が印象的だった」とコメントが寄せられた。
そして栄えあるStartup CTO of the year 2022の栄冠を手にしたのは、スマートラウンドCTO小山氏だった。
最終審査委員長のグリーCTO/デジタル庁CTO 藤本氏からは、「年々、CTOのレベルが上がっていて、過去最も議論が白熱した。それだけ6人のレベルが高かったが、スタートアップのCTOに求められるのは、経営視点から、コードの一行一行まで、泥くさいところまでできるかどうか。そこが解像度高く見えたのが小山さんだった」とコメントを寄せた。
スマートラウンドCTOの小山氏は、「業界の大先輩方に評価していただき、本当に嬉しいです。振り返ってみて、私たちのスタートアップ業界を変えようとする挑戦に自信はあったものの、それを知られる機会がこれまであまりなかった。今回を機に広く知られることになって、本当にありがたいです。次の挑戦も応援してもらえると嬉しく思います」と目元を潤ませながらも力強くコメントした。
過去のなかでも最も審査結果の議論が白熱したというStartup CTO of the year 2022。最後に、表彰式で各最終審査員からファイナリストへ向けて送られたメッセージを紹介する。
「ピッチのレベルが想像以上に高くて、各社ほぼ満点だったかもしれない。会社のミッションを深く理解し、CEOとCTOがタッグで成長するスタートアップが増えていると実感できた。CEOの役割にも、CTOの役割にも正解はない。お互いのコミュニケーションを大切にしながら、最適解を見つけてほしい」(MIRAISE Partner&CEO 岩田氏)
「素晴らしいピッチでした。今日のように多様なタイプのCTOを見ることができる機会は、あまりない。今回のピッチコンテストを通じて、CTOの役割がオープンになることで、CTOを目指す多くの人への気づきにもなるはず。引き続き、素晴らしいロールモデルとしての挑戦を応援しています」(Chatwork CEO 山本氏)
「とにかく激戦でした。5分のピッチ+5分の質疑応答という限られた時間で、私たちは判断するしかないし、この評価が決してすべてというわけではない。僕自身は、テクノロジーがわかる人間が経営に寄り添わないといけないと思っている。粘り強く、腰を据えて大きな事業づくりに挑んでほしい」(ビジョナルCTO 竹内氏)
「先ほど聞いて嬉しかったのは、ここにいる6人の皆さんの“横のつながり”ができたということ。CTOは孤独なポジションですし、こうしたつながりはとても貴重だと思います。私自身も今後、よりフェーズが異なるCTOの方ともつながれる場づくりに励んでいきたいと思います」(AWS スタートアップ事業本部 技術統括部 本部長 塚田氏)
「皆さんからもう十分にお話しいただいているので、僕からは1個だけ。今日僕は審査員の立場として立っていますが、この場を離れたら同じCTOとして切磋琢磨する相手、お互い学び合う相手だと思っています。これからもライバル、学び合う仲間として、一緒に頑張っていきましょう」(グリーCTO/デジタル庁CTO 藤本氏)