2022/12/22

【深井×大川内直子】頭の中にあるアイデアこそ、フロンティア

COTEN代表の深井龍之介さんがホストを務める連続対談「a scope」。昨年好評を博した第一章「リベラルアーツ編」は、その後対談が書籍化された。
第二章「資本主義の未来編」では、毎回第一線で活躍する論客をゲストに迎え、近年顕在化してきた資本主義をめぐる様々な問いに挑む。
資本主義は悪なのか、はたまた限界を迎えているのか──。
第七回は、アイデアファンド社長 大川内直子さんをお迎えする。
大川内さんは、文化人類学の手法を使い調査をする、アイデアファンドを2018年に設立。21年には著書「アイデア資本主義」を発表されるなど、今注目を集める気鋭の文化人類学者。
文化人類学から資本主義にアプローチをすると、どのようことが見えてくるのか。前編では、資本主義が食い潰した3つのフロンティアについて語っていただいた。
では、フロンティアが食い潰された後はどうなるのか。後編でお話いただく。
本企画はPodcastで「完全版」を無料配信します。深井さんと大川内さんの対談を全4回で配信。第1回第2回はリンク先からお聞きください。
INDEX
  • 「インボリューション」現象とは
  • 注目を集める「アイデア資本主義」
  • クラファンに見る資本主義の変容
  • 「投資効果が測りにくい」という壁
  • 非「アイデアマン」を敗者にしない
  • 身体の復権が必要

「インボリューション」現象とは

──前回は、資本主義の伝統的なフロンティアがすべて消滅しつつある、というお話でした。フロンティアが消滅すれば、資本主義は窮地に立たされるのでは…?
大川内 そう見えるかもしれませんが、意外とそうではないと考えています。
1つは、「インボリューション」と呼べる現象が、ここ20年の間に、経済のさまざまなところで見え始めているからです。
深井 インボリューションとは何ですか?
大川内 伝統的なフロンティアの拡大ではなく、フロンティアの内に向かった拡大、という意味です。
大川内直子(おおかわち・なおこ)/アイデアファンド代表取締役。東京大学卒業。同大学院総合文化研究科修了。専門は文化人類学。修士課程在籍中に文化人類学の方法論をユーザーリサーチに応用することに関心を持ち、海外リサーチ案件を請け負う。金融機関勤務を経て2018年にアイデアファンドを設立。フィールドワークやデプスインタビューなどの手法を活かした調査を数多く手掛け、国内外のクライアントの事業開発・組織開発に携わる。その他、国際大学GLOCOM主任研究員、昭和池田記念財団顧問。著書に『アイデア資本主義』(実業之日本社)。
たとえば、空間のフロンティアでいえば、都市の再開発がそれにあたります。
新たなフロンティアを開拓するのではなく、開拓済みの土地に再投資することで、土地の収益性を再び高めるわけです。
生産=消費のフロンティアでいえば、農業において、他の農地を開拓して生産量を上げるのではなく、1つの農地に労働力を潤沢に投入して農産物の生産量を上げていくのが典型的な例です。
深井 インボリューションが重要なのは本当その通りですね。

注目を集める「アイデア資本主義」

大川内 さらに、伝統的なフロンティアが消滅しつつあることで、新たにクローズアップされてきたのが、「アイデア資本主義」です。