2022/12/12

感謝すべき人ほど、感謝が足りない? 時代をつなぐ感謝のカルチャーとは

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
 近ごろ、オンラインのやりとりばかりで、「ありがとう」を伝える機会が減ってはいないだろうか。チャットのスタンプだけで、十分に感謝は伝わっているのだろうか。
 実は以下の記事のように、ビジネス組織やチームにおける「感謝」は、する側・される側どちらにとってもよい効果があることが、さまざまな研究から明らかになっている。
 本記事では、パイオニア株式会社でCDO、CMO、CCOを務め、自身でも飲食店を経営するなど他分野で活躍する石戸亮氏に話を聞いた。石戸氏は、新卒でサイバーエージェントに入社。その後もGoogleやSalesforceなど名だたる企業でキャリアを積んできた。
 人の縁に恵まれたという石戸氏は、「どの会社でも感謝の文化に触れてきた」と語る。感謝を習慣化する考え方とはどのようなものか、感謝を伝えるためには何を実践すればよいのか。
 アサヒビールが実施する期間限定のキャンペーン、感謝の気持ちを込めてビールをLINEで送信できる「SHARE SUPER DRY」の提供でお送りする。
『SHARE SUPER DRY』は、LINE 上で写真やメッセージに添えて「アサヒスーパードライ(350ml缶1本)」または「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶(340ml缶1本)」の引き換えクーポンを1本390 円(税込)で送ることができるサービスです。受け取った方は、全国のセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンにて、クーポンを「アサヒスーパードライ(350ml缶)」もしくは「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶(340ml缶)」に引き換えることができます。

サイバー、Google、Salesforceそれぞれのカルチャー

──石戸さんは現在パイオニアにお勤めですが、サイバーエージェント、Google、セールスフォースなど、さまざまな企業でキャリアを積んでこられました。会社ごとに感謝の文化は違いがありましたか?
石戸 これまではベンチャー的な文化のところが多かったんですが、感謝を伝えるという意味では、会社としてそれぞれの取り組みやカルチャーがありました。
 例えば当時サイバーエージェントでは、個人で感謝を伝えることもありましたが、みんなで誕生日を祝うようなワイワイしたムードでしたね。
 Googleでは、ピアボーナスによる感謝の仕組みが確立されていて。同じ人には繰り返して送れない、四半期ごとに何人までなどいくつかのルールがあった上で、1回数万円のピアボーナスを送れるんです。
 なかなかの金額ですよね。そうすると何が起こるかというと、専門的な知見を持った社員が、それを他の社員にシェアする講習会がたくさん開かれるようになりました。
 その講習会に参加した10人のうち2人でもピアボーナスを送ってくれたら、ちょっとした副業ですよね。それが自然な助け合い、自然な感謝につながっていたように感じてます。
 またSalesforceでは「Ohana」、ハワイ語で「家族」を意味する言葉やチームワーク精神を重要とする“Don't win alone. Don't lose alone.”(一人で勝つな、一人で負けるな)などを企業カルチャーとして定めています。
 ストイックに成果を求める組織では、どうしても雰囲気が殺伐としがち。そうならないために、社員同士が助け合い応援し合う考え方として「Ohana」を徹底的に浸透させているんです。
 この考え方が浸透しているおかげで、助け合いと、それに紐づく感謝のサイクルが根付いているように思えます。
──石戸さんが感謝を伝えるために、普段から実践されていることはありますか?
 ささやかなことなのですが、僕のチームメンバーになった方には、誕生日にポケットマネーでAmazonギフト券500円分を贈るようにしています。自分のカレンダーにはチームメンバーの誕生日を忘れないように登録しています。
 仕事で成功したときに感謝や賞賛を伝えるのは当然なんですけど、そもそも僕と一緒に働いてくれていることに感謝したくて。それをするには、そのひとの一番パーソナルな日、誕生日がちょうどいいかなと。
 仕事をしていて、優秀だったり尊敬できたりする上司はいっぱいいると思います。でも個人的にはそれより、自分をひとりの人間としてみてくれる上司が僕はよいと感じるんです。仕事だけじゃない関係値があるほうが、このひとと一緒に頑張りたいなと思える。
 上司として公式にやると金品の贈与って感じになっちゃうと思いますので、あくまで個人的な表現ですね。パーソナルな付き合いが苦手なひともいると思うので、さじ加減は難しいんですけど。そういう意味も含めて、500円がちょうどいい金額だなと。

究極の“For Me”は“For You”になる

──石戸さんは、仕事において感謝は重要だと思いますか。
 もちろんです。僕自身は、日頃から感謝をその都度口に出すように心がけています。ただより強く意識していることは、何かをしてもらったことに感謝するというより、してもらってもしてもらわなくてもgiveするということですね。
 新卒で入ったサイバーエージェント時代に最もお世話になった上司に教わった、「For You」と「For Me」という言葉がありました。
 僕が入社した2006年当時は、いまよりもさらにベンチャー感が強くて、そして市場が急成長していくので気を抜いていては事業成長が遅れたり、競合に差を付けられる。同期・同僚も競争心が激しかったんです。
 成果の奪い合いというか、若い社員が多いせいか余裕がそこまでないからか、自分さえ達成すればよいような人が多く、なんとか達成したいという必死な環境でした。
 それを課題に感じてなのかはわかりませんが、あるときから「究極のFor MeはFor Youだよね」みたいなことを当時の上司が言い始めて。相手のために何かしてあげると、ブーメランとして自分に返ってくる。For Meをしたいのであれば、For Youすべきだ、ということです。
──情けはひとのためならず、ということですね。
 そうですね。実は入社時は周囲が自分のことばかりで、正直合わないなと思ったり、自分が弱かったからだと思うのですが、辞めたいな、とすら思っていたときもありました。
 でも「究極のFor MeはFor You」という考えがすごく自分にハマって。できる限りFor Youを心がけるようになりました。
 昔からプレゼントもあげるほうが好きだったし。100個giveすれば、そのうち1個か2個は返ってくる。そのスタイルがいまも続いています。
──石戸さんはいつから感謝が大事だと考えるようになったのですか?
 そうですね。僕の場合は、母の影響があるかもしれません。中学2年生で母が亡くなったんですけど、葬儀のときにめちゃくちゃ行列ができたんです。
大企業の要職につかれていたりされたんでしょうか?
 いえ、母は地方銀行の、ただの受付のおばちゃんだったんです。それなのに銀行のお客さんが大勢来て、「石戸さんがいたから銀行に行ったんだよ」って話してくれたりして。
 母は受付で、一体何をgiveしていたんだろうと思って(笑)。何かをgiveしていると死んだときに返ってくるんだな、と思った記憶が強く残っています。

「しそびれた感謝」をいま送ってみたら

──ありがとうございます。石戸さんが、社会人になってからも折に触れ、さまざまな感謝の文化に触れてきたということがわかりました。
 ここでアサヒビールの「SHARE SUPER DRY」というサービスを、石戸さんに実際に使ってもらおうと思います。石戸さんでも、感謝をしそびれている相手はいますか。
 もちろんいますよ。やっぱり感謝しようって意識していても、なかなか十分にはしきれないですよね。
「これはチャットではなく直接言ったほうがいいな」と思って、そのまま言えていなかったり。突然電話して「ありがとう」なんて言っても、「おまえ、どうした?」って思われてしまいそうだったり(笑)。
 だから、今回このようなきっかけをいただけてうれしいです。
──では実際にビールを添えて感謝をした人について教えてください。
はい、何人かの方に送りましたが、掲載を許諾してもらった3人についてご紹介します。
 1人目は、現在僕が務めているパイオニアのAさんです。
 Aさんはパイオニアに、私の人生の長さよりも長い39年以上も働いていて、創業84年のパイオニアの歴史を深く知っていました。それも全然偉そうにしないし、フラットに教えてくれるんです。
 長い歴史のある会社には過去に資産や情報がたくさんあると思っていて、私はAさんにいろいろ教えてもらい、IT企業やベンチャー企業の経験しかない私にとって本当に勉強になりましたし、本当に助かりました。
──すてきなお話ですね。
 2人目は、僕が3年前から複業として経営している飲食店の店長のやっしー(矢代氏)。普段から感謝は表現しているつもりなんですけど、それでは絶対に足りないくらい感謝しているんです。
 やはりこういう機会をいただけると、改めて感謝が足りてなかったなと思います。僕が複業で社長として経営しているお店なのに、毎日の仕込みも、予約の整理も、店締めも、彼が切り盛りしている。
 そんな中、日々日報をくれるんですが、忙しいときは返事をできていないこともあって。本当は一つひとつの作業にも感謝しないといけないんです。
 今回、本当に感謝していると、しっかり伝えられました。
──日々お世話になっている人ほど、感謝をするきっかけがないものですね。
 最後は、昨年定年退職をした父に贈りました。
 先ほども少しお話ししましたが、うちは私が中学校2年生のときに母を病気で亡くしましたので、それ以降は父が苦労して育ててくれたんですよね。
 その父が昨年定年を迎えて、定年のお礼の食事に誘ったとき、「当時は実は大変だった」という話を初めてしてくれたんです。
 これまでも父に感謝の気持ちはありましたし、誕生日を祝うくらいのことはしてきました。でも25年前くらいからずっと苦労してくれていたこと、自分と妹を育ててくれたことに改めて感謝をしたいと思ったんです。
──身近な人への感謝ほど、実は足りていないのかもしれないですね。
 ですから、こうやって感謝の機会を作ってくれる企画ということ自体が、ありがたいと思いました。
 冒頭にも話しましたが、いまはチャットやスタンプなどでも気軽にお礼やコミュニケーションができる時代ですよね。仕事でもオンライン上で業務やコラボレーションができる時代です。
 一方で、本当に感謝したいときは、想いやそこに添える言葉、タイミングなどがとても大事だと改めて気づかされました。
 今回紹介させてもらった3人以外にも、この1年パイオニアで私の組織にいたメンバーにも送らせてもらっています。
 そうやって感謝を改めてしていると、他にも感謝を伝えなければいけない人がたくさんいて、自分は感謝が足りていないんだな、と気づかされました。
 なので、改めて今回はありがとうございました。
──こちらこそ、企画にお付き合いいただきありがとうございました。ご登場いただいたみなさまにもお礼をお伝えください。
 あ、よろしければ、石戸さんのLINEを教えていただけないでしょうか。
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