2022/11/30

感謝に「建前」「理由」「モノ」が必要なワケ

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
 最近、職場で「ありがとう」が減っていないだろうか。
 コロナ禍を機にリモートワークが広がりつつある現在。会議後の廊下で「さっきはありがとう」、仕事の後に「1杯おごるよ」のような何気ないコミュニケーションが失われてきている。
 対面の機会や隙間での交流、リアルな社交の場が減り、せっかくの感謝も表情の見えないチャットでの「感謝」スタンプになってしまう。感謝スタンプを誰が押したのか、わざわざ見る人も多くはないだろう。
 実は「感謝」には多くの効能があることが、さまざまな研究から明らかになっている。感謝を可視化し、組織をよりよくするためにはどうすればいいのか。
 話を聞いたのは、ピアボーナスを通じて感謝を送り合うサービス「Unipos」を提供する、Unipos株式会社 執行役員CPO 斉藤知明氏。
 アサヒビールの期間限定キャンペーン、感謝の気持ちを込めてビールをLINEで送信できる「SHARE SUPER DRY」の提供でお送りする。
『SHARE SUPER DRY』は、LINE 上で写真やメッセージに添えて「アサヒスーパードライ(350ml缶1本)」または「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶(340ml缶1本)」の引き換えクーポンを1本390 円(税込)で送ることができるサービスです。受け取った方は、全国のセブン-イレブン・ファミリーマート・ローソンにて、クーポンを「アサヒスーパードライ(350ml缶)」もしくは「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶(340ml缶)」に引き換えることができます。

感謝は“する”側に効果大

──「ちゃんとありがとうを言いましょう」というのは、日常生活の礼儀作法として誰もが習ってきたことです。一方でビジネスにおいては、お互い仕事として役割があります。感謝はどの程度大事なのでしょうか。
斉藤 強いチームをつくる上で、感謝は非常に重要だということがわかっています。
 感謝はする側にもされる側にも、よい効果があるものなんです。
東京大学機械情報工学専攻。学業の傍ら、株式会社mikanにてCTOとしてスマートフォンアプリ開発に従事。その後、Fringe81株式会社に入社。1年間エンジニアとしてアプリ開発等を行った後、Unipos事業責任者となる。2017年12月28日、Unipos株式会社の代表取締役社長に就任。2019年4月には、Fringe81株式会社の執行役員に就任。2021年6月より最高プロダクト責任者に就任。
 感謝される側はイメージしやすいと思いますが、一言でいうと、「自己効力感」と「幸福感」が高まります。
 誰かに感謝されることで、自分自身がやったことに対してこの行動はやってよかったと認識し、次に目標や困難に挑むとき、「自分ならできる」「きっとうまくいく」と思えるようになるのです。
 例えば自分が相手に何かをしてあげて、まるで当たり前のように「ふーん」と言われるのと、「これやらなきゃと思っていたんだ、助かるよ、ありがとう」と言われる場合。当然ですが前者だとあまりいい気分にはなりませんし、後者だと「やってよかったな」という感覚になる。これが自己効力感です。
 一方で感謝をする側について。九州大学の池田浩先生の研究で、「感謝カード」というものを使った調査があります。
 この調査結果で、主に感謝カードを多く渡した人が、仕事への意欲やコミュニケーションの向上などの効果を実感していることがわかりました。
出典:池田浩(2021)『モチベーションに火をつける働き方の心理学』日本法令
──感謝をされた側ではなく、むしろする側に効果が高いというのは意外です。
 そうですよね。でも実は感謝に関する研究では、どれも基本的に同じような結果が出ているんです。
 また組織全体としても、感謝の習慣をつけることでよい影響が出ることがわかっています。
 私たちが提供する、感謝・称賛と少額のボーナスを送り合うwebサービス「Unipos」を平均以上に利用しているチームと平均以下のチームを比べた調査では、称賛の多い(平均以上)チームは、メンバーの働きがいに関わる指標が高いことがわかりました。
出典:Unipos提供データ「導入企業で実施したアンケート結果(金融業界A社、従業員数1,000名以上)」より
 中でも大きく差が出たのは、「上司・部下間でのコミュニケーションが取りやすくなった」という項目。
 先ほどの「ふーん」と「ありがとう」の例でもそうですが、何かやってもムスッとしている上司と、気さくに感謝を言ってくれる上司だったら、後者のほうがコミュニケーションが取りやすいですよね。
──組織力でいうと、どのような効果があるのでしょうか。
 こちらの図を見てください。
 感謝によって人と人との信頼関係が高まるのは言わずもがなです。
 注目してもらいたいのは「職務行動」の「先取行動」の部分。先取行動とは、相手のために必要だなと思って自発的に行動を取ることを指します。
 その結果として感謝が返ってくると、「やってよかった」と自己効力感が上がると同時に、「またやってあげよう」という気持ちになるわけです。つまり組織やチームにとってよい行動の再現性が上がるんですよ。
 結果的にそのチームのメンバーが先取行動を取るようになるので、心理的安全性が上がるというデータもあります。
 また特徴的なのは、心理的安全性の4因子「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」のうち、「挑戦」や「新奇歓迎」の項目も上がること。
 称賛し合うことで組織やチームにとっていい行動をチームメンバーが理解した上で、「挑戦してもいいんだ」と思える組織になる、ということですね。

 「感謝」のコツとは

──職場だとどうしても、プロ意識の高さから、何をやっても「それは相手の担当だから当たり前」「これはチームの役割だから当たり前」となって、その行動が感謝すべき対象ではないと考える人もいませんか?
 確かに「感謝されなくても仕事だからやるだけだし」と考える人もいるかもしれませんが、感謝を表現して損することってありませんよね。「自分は絶対に感謝なんかしないぞ!」というポリシーがあれば別かもしれませんが。
 明確にデータが出ている通り、感謝は組織によい循環を生み出すこと、挑戦する風土を醸成することがわかっているので、言わないより言ったほうがよい組織になりますよね。
 そもそも「やって当然だ」と思うような仕事だって、もし相手がやってくれなかったら困りませんか? ないと困ることをやってくれたんだから、その貢献に対して感謝しない理由はないですよね。
──まさに「有り難い」という言葉通りですね。でもいざ意識して感謝しようとしても、うまく表現できないこともありそうです。コツはありますか?
 やっぱり人って「どうぞいまから感謝してください」と急に言われても難しいですよね。
 コツとしては、最近「これをしてもらえてよかったなと思ったことは何か?」みたいな問いかけから考えてみると、いくつか思い浮かぶと思います。
 あるいは誰かに対して「まねしたいと思ったこと、勉強になったことは何か?」。1対1でしてもらったことではなくても、その人が何かを発表する姿や言葉に勇気づけられたり、勉強になったりしたことに対しても感謝ってできますよね。
──なるほど。それなら直接的な関わりがなくても、感謝できそうですね。
 さらにそこに感謝の「理由」を1つ付け加えると効果的です。「ありがとうございました。あなたの行動のおかげで、自分にとってこう助かりました」とか。
 人によっては、「ありがとう」や「感謝」スタンプだけ伝えても、「また口だけで言っちゃって」と受け取る人もいるわけです。何が相手に感謝されたのかを、明確に理解することで、受け手の納得感が高まり、行動の再現性が加わるんです。
──ちなみに、褒めると評価を間違えることもありそうです。「あのプレゼンよかったですよ」なんて目上の人に言ってしまうとかは、あるあるというか。
 それは「Iメッセージ」と「YOUメッセージ」を意識するとうまくいきます。
 例えば、事前に資料を用意してくれたことに感謝する際。「事前に用意してくれるなんて(あなたは)すごいですね」のように“YOU”を主語に言ってしまうと、受け取る側が「大したことじゃないし……」と素直になれないこともありますし、場合によっては上から目線ととらえられてしまいます。
 でも「(私が)あなたの資料のおかげでスムーズに進められてすごく助かりました」と“I”を主語に言うと、感謝する側がどう感じたかの話なので、された側も否定できないんですよね。
 さらにこれを人前でオープンにやると、組織として、感謝をこのように表現していいんだというカルチャーの醸成につながります。
──人前で感謝をすると、誰かを「えこひいき」している、と思われることもありそうです。
 そこを気にしている方は多くいらっしゃいますね。
 ただ感謝って、別に1対1じゃなくていいですよね。確かに誰かを差し置いて、一人だけを選んで感謝をするとえこひいきになるかもしれない。だったら感謝したい出来事に関わったメンバー全員に、伝えればいいんです。
「えこひいきになるかもしれないから、誰にも感謝を伝えない」というのがいちばん悪手です。複数人にでも、感謝は伝わりますから。

「建前」と「モノ」が感謝のきっかけになる

──感謝はしたほうがよくて、感謝をする事柄の見つけ方もわかりました。でも急に明日から感謝を伝えることを日常化するには「きっかけ」がつかめなそうです。
 日本人は感謝をするのもされるのも慣れていないので、ただ「感謝しましょう」といってもできないのはよくわかります。そこで役に立つのが「建前」です。
 例えば結婚式へ行くと、席札の後ろにメッセージが書いてあったりしますよね。結婚式という建前があるから、普段は言えない感謝の気持ちが書ける。
 でも何でもない日に、出社してデスクに感謝の手紙が置いてあったらちょっとギョッとしますよね。 
 また日本にはもともと、お中元やお歳暮の文化があります。これも、そういうタイミングがあるからこそ日頃の感謝を示すことができる。感謝するための建前があると、贈り手ももらい手も素直になれるんです。
──なるほど。建前がきっかけでもいいんですね。モノを贈るのはどうでしょうか。
 とてもよいと思います。モノを贈るって、基本的にポジティブ以外の意味がないですから。
 現在Uniposの導入企業では基本的に、少額のポイントなどのインセンティブを添えて感謝のメッセージを送ってもらっています。というのも以前実験した際、何のインセンティブもない自由な場にすると、ネガティブな発言をする方が出てきてしまって。でも100円を投げ返して「このヤロー!」って言う人はいないですよね(笑)。
 またインセンティブがない状態とある状態で検証した場合、ある状態のほうが感謝を送る数が倍以上に増えたんです。
 モノがあるからこそ、それをきっかけに感謝を表せる。すごくよい建前だと思います。
──お歳暮を突き返すってこともないですもんね(笑)。
 ひとつポイントとしては、「もらって嫌じゃないもの」であることは大事ですね。
 相手が受け取って喜んでくれるだろうなと想像できると贈る側もうれしいですし、もらう側ももちろん素直に受け取れます。そこに素敵な感謝の言葉がついていたら、なおさらうれしい。
 そういう意味では、今回の企画の「建前」になった、アサヒビールの「SHARE SUPER DRY」のキャンペーンはすごくいいなと思いました。
 たぶんまずこのキャンペーンを知って、「あの人ビール好きだったよな、贈りたいな」というのが先に来る。でもそういうキャンペーンなので、メッセージを書かないといけない。「じゃあせっかくだからあのときの感謝を伝えようかな」という流れになりますよね。
 相手がお酒を好きだと知っていれば、絶対に喜んでくれることがわかるし、心理的にもすごく贈りやすい。もらう側はもちろんビールをもらうことがうれしいし、感謝のメッセージも「そういうキャンペーンだから」と納得できて受け取りやすい。
 職場を感謝しあえる環境にする第一歩という意味で、強烈なきっかけになるなと思いました。
──最後に、Uniposというピアボーナスのサービスを提供していて、斉藤さんが「仕事と感謝」について、気づいたことはありますか。
 極めて定性的な話になってしまうのですが、すごく単純に、感謝されるとうれしいですよね。
 目の前の仕事を当たり前だととらえてしまうと、心が荒むし、「じゃあ私じゃなくてもいいよね」と思えてしまいます。
 特にいまは、所属する組織を変えても、組織に所属しなくても働ける時代になりました。それでもわざわざこの組織にいるのはなぜか。
 それは誰かと仕事をしたいから、あなたと仕事をしたいから。そういうことだと思うんです。
 実際にお客様からそういう気づきの声をたくさんいただきました。
 今日はいろいろお伝えしましたが、まずは「ありがとう」からでいいと思うんです。それをちゃんと言葉にするだけで、いろんな効果が生まれて、自然と組織が強くなる。
 ぜひ感謝の気持ちを伝え合うことで、チーム・組織をよりよく、働きやすい場にしていってほしいなと思います。
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