(ブルームバーグ): サム・バンクマンフリード氏が率いていた暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの破綻処理を進めるアドバイザーらは、同社内での現金と仮想通貨の所在確認に困難を抱えている。顧客資金の不正使用の疑いや、FTX内部の統制と記録管理がいかにずさんだったかが明らかになりつつある。

FTXの新最高経営責任者(CEO)に就任した企業再生・再編の専門家、ジョン・J・レイ氏は「私のキャリアにおいて、ここまで企業統治が完全に機能不全で、信頼できる財務情報が完全に欠落している状態は見たことがない」と、デラウェア州の連邦破産裁判所に提出した宣誓書で表明した。

かつてエンロンの清算手続きを監督した実績もある同氏は「システム整合性の欠陥や国外での規制監督の不備から、経験が浅く不慣れで問題がある可能性のある非常に少数のグループへのコントロール集中に至るまで、この状況は前代未聞だ」としている。

バンクマンフリード氏にコメントを求めたが、これまでに返答はない。

レイ氏によると、連邦破産法11条の適用期間中に回収を望むFTXグループのデジタル資産の「ほんの一部」しか所在を特定できていない。これまでに確保したのは、インターネットと完全に切り離されたコールドウォレット内の仮想通貨約7億4000万ドル(約1040億円)相当だという。

レイ氏はまた、同グループの監査済み財務諸表を信用すべきでないとし、アドバイザーらが現在、バランスシートの再構築に最初から取り組んでいると説明。現金については、FTXは集中管理しておらず銀行口座の正確なりストなどもないとした上で、破産法適用申請時の現金保有額をアドバイザーは把握していないものの、これまでに約5億6000万ドルが見つかっていると述べた。

また、ソフトウエアを利用して顧客資金の不正利用を隠していた疑いや、プライベートキーと世界中の機密データへのアクセスにセキュリティー対策が不十分な単一のグループメールが使われていたことが提出文書で指摘された。

さらにFTXグループの資金が住宅など従業員の個人資産の購入に使われていたとレイ氏は述べた。バンクマンフリード氏は短時間で自動消去するアプリを使って連絡することが多く、従業員にもこのアプリ使用を求めていたため、社の方針決定の記録を入手することは難しいという。

原題:FTX’s New Boss Reveals Chaos Left Behind by Bankman-Fried、FTX Chief Hunts for Crypto, Calls Controls ‘a Complete Failure’(抜粋)

(提出文書の新情報などを追加して更新します)

©2022 Bloomberg L.P.