2022/11/4

【世界共通】メンタルをむしばむ「孤独」のはなし

NewsPicks編集部
新型コロナの世界的なパンデミックによって、メンタルヘルスの問題は、世界が取り組むべき喫緊の課題になりました。
戦争や物価の急激な上昇など、変化が激しく、先行き不透明感が強まっている中では、心の健康維持が引き続き大きなテーマになりそうです。
それにしてもなぜ、こんなにもメンタルヘルスに問題を抱える人が増えてしまったのでしょうか。そもそも、この分野は有効な治療法が少ないと感じる人も多いでしょう。
メンタルヘルスの分野の取材経験が豊富な米ニューヨーク・タイムズのジャーナリスト、エズラ・クライン氏が、そんな素朴な疑問をアメリカの大物精神科医、トーマス・インセル氏に投げかけます。
自分と周囲の人のメンタルの問題にどう向き合えばいいのか、考えるヒントになる対談です。
INDEX
  • メンタルヘルスの「皇帝」コロナを語る
  • 健康とは「愛することと働くこと」
  • メンタルヘルスの「ケアの危機」
  • 「カリフォルニアは良くなりましたか」
  • 「孤独」がメンタルをむしばむ
  • 人間がキレやすくなる時
  • メンタルヘルスを知る3冊

メンタルヘルスの「皇帝」コロナを語る

エズラ・クライン アメリカの成人の5分の1が、メンタルヘルスの治療薬を処方されています。その一方で、アメリカでは約11分に1人が自殺しています。
かつてないほど多くの人がメンタルヘルスの問題で治療を受けているのに、結果はよくなっていません。奇妙な矛盾です。
つまり、現代はメンタルヘルスの危機であると同時に、メンタルヘルスケアの危機でもあるわけです。
精神科医で公衆衛生の専門家であるトーマス・インセル氏は、この危機をよく知っています。
彼は13年間、米国立精神保健研究所(NIMH)の所長を務めました。カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムの特別顧問としてメンタルヘルスケア問題を担当し、加州の「メンタルヘルスの皇帝」と呼ばれるようになりました。
しかし、彼は新著『Healing』で、メンタルヘルスケアに関する大きな失敗について明らかにしました。
そして、私たちがすでに持っているものや知っているものを使って、メンタルヘルスの問題のためにもっと多くのことができると語っています。
「メンタルヘルスの問題は医学的なものだが、解決策は医学的なものだけではない。社会的、環境的、政治的なものになる」
どのような解決策なのでしょうか。インセルさん、ようこそ。
トーマス・インセル とても楽しみにしていました。お招きありがとうございます。
クライン 最初の質問です。今、この国にメンタルヘルスの問題が蔓延していることについてどう考えていますか。