ファイザーをイタリア当局が調査、12億ユーロの利益隠しの疑い
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事業を行っている国の子会社に利益を帰属させるか、親会社に帰属させるかに関して、利益を帰属させられなかった国が「本来帰属させるべき税収を確保するための調査を行っている」という意味をもつ報道で、イタリアの税徴収当局としては自国で得られるはずの税収が他国に流れることが不服の対象です。
グローバル企業においては、海外の親子企業間取引における、利益の帰属先についてある程度の自由度があることから、どの企業も「税率、税効果」や「内部留保の保管先」として「有利な国」を選択しようと考え、その結果生じる問題です。例えば、企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)を輸出入の段階で意図的に設定すれば、一方の利益を他方に移転することが双方向で可能になります。
仮にイタリアでの申告所得が過少だと認められると、利益を移転している国での申告所得が過大になり、両国で修正が入ることになります。各国(特に高法人税国)は一定の基準を設け、自国に必要な税収が落ちるように企業を指導したり、支払い命令を出すことがあり、「どの国が税金を受け取るか」という国家の行政当局の間の問題にまで発展することもあります。
「移転価格」の問題に関して、企業が申告する金額にかかわらず、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなし、強制力を発揮して所得計算させる国があります。今回の対象国イタリアや日本もこの考え方に立っており、日本の考え方については、以下の資料から概要を知ることができます。
「移転価格税制の概要」(財務省)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/177.htm
注目のコメント
コロナ禍の世界に大きな貢献をしたことは間違いないが、このような不正が明るみになるだけで、世間からの信用失墜は極めて大きい。
驕れるもの久しからず。盛者必衰。
まさにこのことだろうか。
そもそも、利益隠しは脱税のようなものなのだろうか?
私はその点について理解できていない。この記事については高橋さんのコメントが適切に内容を示されてると考えられます。
企業にとって租税の管理は重要で、同じ財・サービスであってもどのような方法で、どのような態様で取引がなされたかによって大きく変わります。
ファイザーの場合、この捜査は国内のワクチンに関して、国家に帰属すべき法人税がどうなっているかを調べるものです。
この結果によっては国際会計制度(今回はIFRSですね)に基づいて国家間での法人税調整が行われることになります。
なお私は移転価格税制に対しては制度そのものを否定するわけではないが、長期的な持続性がないという立場です。