2022/10/6

【新】農業は「淘汰と集約」の時代へ。小さいビジネスで勝つ方法

久松農園 代表
「自分でつくったものを自分で食べる、悠々自適な暮らしに憧れる」「人間関係に疲れてきたから、田舎で農家暮らしをしてみたい」。農業に対するイメージには、何かにつけて「豊かさ」がセットになりがちだ。
しかし、実際には就農のハードルは高く、それでいて多くが低収入であるなど、現実はそう簡単ではない。言ってしまえば、私たちは農業に対して「ある種の幻想」を抱いている向きがある。
それら「知られざる誤解」を明らかにし、現状の仕組みに対して疑問を投げかけた一冊『農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ』(光文社新書)が話題を呼んでいる。
著者の久松達央氏は、農家の「淘汰と集約」を推し進めることで、より高収益を上げる強い農家が生まれていくと強調する。そうした流れができれば、「農家の高齢化に伴い、日本の農業が危機に瀕している」といった課題からも脱却できるそうだ。
日本の農業が抱える真の課題とは、いったい何なのか。久松氏が構想する、農業のあるべき姿とはどのようなものなのか。
業界未経験から20年以上にわたって農園経営を続けてきた、農業の風雲児の声を聞いてみよう。
INDEX
  • 日本の農業の「不都合な真実」
  • 非協力ゲームを今すぐ止めよ
  • 地獄の始まりとしての差別化戦略
  • 言語化できない「偏り」で愛される

日本の農業の「不都合な真実」

──『農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ』では、「高齢化した零細稲作農家が雪崩を打ったように離農する時期が、2030年までに確実にやってきます」と書かれていました。
久松 実は稲作に限った話ではないのですが、日本の農業にはやがて、Xデーが確実に訪れます。
「農業はもうからない」という話を聞いたことがある人も多いと思いますが、ある意味で事実です。農家には、赤字を垂れ流し、年金を持ち出すような形で細々と経営を続けている事業者が何十万人といます。
それが悪いことだとは言いません。
でも、ほとんど事業として成立しておらず、育てた野菜の大半を家族で食べて過ごしているような農家に、補助金がじゃぶじゃぶと注がれている状況は看過できない。