[東京 4日 ロイター] - 政府の「新しい資本主義実現会議」は4日の会合で、10月中に政府が策定する総合経済対策の重点項目について議論した。物価上昇率を上回る賃上げを実現するために、労働市場の流動性を高める必要があると判断、具体的指針を来年6月までにまとめる。岸田文雄首相は同会合であいさつし、現在3年間4000億円規模で実施している人への投資支援について「5年間で1兆円へと抜本強化する」と述べた。

今回の内容は6月の「新しい資本主義実現会議」で大枠を示したもの。その内、総合経済対策に盛り込まれる内容の詳細を議論した。電力値上げ対策など短期的な対策は議論の対象外で含まれない。

円安とエネルギー・食品価格上昇が進んでいる足元の情勢を反映し、労働移動の円滑化と学びなおし(リスキリング)、構造的な賃上げを三位一体で進める。転職頻度が高いと、企業は人材引き留めのため賃上げを図る公算が大きいとの前提を置いている。

首相は「来春の賃金交渉では物価上昇をカバーする賃上げを目標にして、個々の企業の実情に応じて労使で議論してもらいたい」と述べた。

賃上げ促進のため、中小下請けの価格転嫁要請を受け入れない企業の社名公表や、公正取引委員会の体制強化を図る。同一労働同一賃金の順守を徹底する。

労働移動の円滑化を図るため、転職を考える会社員が民間の専門家に相談できる仕組みを整備する。

ウーバーイーツなど1人で起業するフリーランスが安定的に働ける環境づくりのため今国会に取引適正化法案を提出する。

産業革新投資機構は、過去4年間で1200億円規模のファンドを通じ、スタートアップ企業に投資をしてきた実績があるが、これを大きく上回る規模のファンドを立ち上げ、法改正を行い運用期限を現在の2034年から2050年まで延長することにより、出資機能を強化する。

現在感染症関連に限定している創薬ベンチャーへの支援を感染症以外にも拡充する。

企業再生を迅速にするため、債権者全員の同意を求めず、裁判所の認可で私的整理(債務整理)が可能とする円滑化法案を来年の通常国会に提出することを検討する。

このほか個人の資産所得倍増の一環として、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充や恒久化も検討し、年末の2023年度税制改正で結論を得る。

経済安保強化のため、半導体や蓄電池の製造拠点整備を支援する枠組みを設ける。

首相は、関係閣僚に対し、今回取りまとめた重点事項を与党と連携して経済対策に反映し、着実に実行するよう指示した。

(竹本能文、杉山健太郎 編集:石田仁志、青山敦子)