2022/10/4

【超高速輸送】その後「ハイパーループ」ってどうなった?

INDEX
  • 先導役のヴァージンが「方針転換」
  • 「政治と規制」が停滞の原因
  • 「人の輸送」を目指すべきか?
  • 「貨物輸送」のメリットに疑問符

先導役のヴァージンが「方針転換」

それは150年以上も前から、輸送の夢だった。
空気圧式の真空管を使って、マンハッタンのウォーレン通りからマレー通りまで人々を運ぶシステムが試験的に運転されたのは、1870年代のこと。
2010年代には、真空管技術を大幅に改良したハイパーループが登場。数ブロック先ではなく、都市間を飛行機並みのスピードで移動し、磁気浮上させた乗客ポッドを時速600マイル(約965キロ)以上で走らせることが可能になるとうたわれた。
だが、この技術はいまだ夢物語にすぎない。
インド、オランダ、サウジアラビア、米国などで、ハイパーループシステムの設計・建設に数億ドル規模の資金を調達している企業もあるが、実現にはほど遠い状況だ。
ヴァージン・ハイパーループ社がラスベガス郊外に建設したハイパーループ試験施設(Bridget Bennett for The New York Times)
盛り上がりが頂点に達したのは、2020年11月のこと。ヴァージン・ハイパーループ(当時の社名はハイパーループ・ワン)が、この技術を使って初めて人を移動させたのだ。
このときは、ラスベガス郊外にある同社のハイパーループ試験施設で、2人の社員が実物大の真空チューブに乗り込み、500メートルの試験コースを時速170キロで移動した。
時速965キロには遠く及ばなかったものの、このシステムが機能することを証明したと、同社のジェイ・ウォルダーCEO(当時)は自賛した。
「これは100年以上ぶりの新しい大量輸送システムです。乗客は生身の人間です。このテストで安全性が示されました」
しかし、そのわずか1年後、同社は開発にブレーキをかけ、その規模を縮小した
ウォルダーは2021年2月に会社を去り、後任となった同社の共同創業者ジョシュ・ギーゲルも昨年10月にCEOを辞任している。
(Bridget Bennett for The New York Times)