2022/10/3

【片岡剛士】円安でも日本には「まだまだ金融緩和」が必要だ

NewsPicks 副編集長
日本が大規模な金融緩和を始めてから、あと半年で大台の10年が経とうとしている。
現在、アメリカやヨーロッパでは、物価が上がるインフレが収まらず、両地域の中央銀行は、金融緩和を止めて、政策金利を上げる「利上げ」という金融引き締めに走っている。
米欧に追随する形で、他の国々の中央銀行も利上げをし、自国の通貨を守ろうと躍起だ。
その中でも日本銀行(日銀)は、大規模な金融緩和を続けて、経済に刺激を与え続けようとしている。
日銀の金融政策を決めるのは、9人の政策委員──総裁1人、副総裁2人、そして6人の審議委員だ。年に8回行われる金融政策決定会合で議決する。
今年7月まで日銀審議委員を務めていたのが、片岡剛士氏だ。
片岡氏は、積極的な金融緩和を通じて安定的な物価上昇と景気の回復を促す政策(リフレーション)を支持する「リフレ派」の論客として知られる。
日銀審議委員の5年間も、短期金利と長期金利をさらに引き下げることによって、金融緩和を現状より強化することを主張し続けた。
片岡氏は現在、PwCコンサルティングでチーフエコノミストとして活動している。
NewsPicks編集部は、片岡氏にインタビューを敢行。日銀審議委員時代の5年間をどう振り返り、日本経済の現状をどう分析しているのか。
そして、これからの日本の金融政策について、どう考えているのか。大いに語ってもらった。
INDEX
  • 今は「許容できない物価上昇」
  • 円安デメリットが強調されやすい時代
  • リセッション来れば賃金上昇に水を差す
  • 5年間、YCCに「反対した」本当の理由
  • 来年以降も「2%物価目標」を最優先に
  • 「早すぎる引き締め・増税」は絶対ダメ

今は「許容できない物価上昇」

──この5年の日本経済について、どう総括されますか。
片岡 私自身、任期の5年間の中で一番認識していたのは、できる限り早期に、物価安定目標である2%のインフレ率を達成し、その元で、賃金や生産、雇用などの経済の好循環を作っていくということでした。