(ブルームバーグ): 米ツイッターの株主は13日、資産家イーロン・マスク氏による総額440億ドル(約6兆3400億円)での買収提案を承認した。

臨時株主総会で過半数の株主は、マスク氏が4月に提示した1株54.20ドルでの買収案受け入れに賛成した。マスク氏はツイッター買収を一方的に撤回し、訴訟に発展している。審理はデラウェア州の衡平法裁判所で10月17日から5日間の日程で行われる予定。

ツイッター側の見解では、株主投票による承認はマスク氏による買収実行の要件をすべて満たすことになる。一方のマスク氏はツイッターにさらなる情報開示を求め、異論を唱えている。

   ツイッターによると、株主投票の約98.6%がマスク氏の買収案を支持。関係者2人によれば、同社の筆頭株主であるマスク氏は一切投票しなかった。同氏はツイッター買収合意時、同社株の約10%に相当する7300万株余りを保有していた。

ツイッターの株価は13日の取引を0.8%高の41.74ドルで終了。マスク氏が提示した買収額を大幅に下回った。

公聴会

ツイッターの個人データ取り扱いに重大な欠点があったと内部告発した同社の元セキュリティー責任者ぺーター・ザトコ氏は同日の上院公聴会で2時間半余りにわたり証言し、同社が古いソフトウエアを使っていたり、ユーザーの個人データに多くの社員がアクセスできたりしたほか、セキュリティー対策が後手に回っていたと説明。米連邦取引委員会(FTC)の規制について、ソーシャルメディア企業に「宿題を自己採点させている」とし、有効ではないと主張した。

ツイッター株上昇、内部告発者の証言に「決定的な証拠」なしとの見方

 

ザトコ氏の証言を受け、一般的に「小さな政府」を志向する共和党からもソーシャルメディアのプラットフォーム規制強化への支持が示された。共和党のグラム議員は公聴会で「今はソーシャルメディアのプラットフォームをあらためて調べるべき時だ」と述べ、公聴会終了後に民主党のウォーレン議員と大手テクノロジー企業を監督する新たな連邦規制に向けた法案作成で協力していると記者団に語った。ただ、議会関係者によれば、両議員はまだ法案の詳細で合意には至っていない。

ザトコ氏は必要なセキュリティー更新からツイッターは10年遅れているとし、同社がプラットフォームのリスク対応より利益を優先しているとの認識を示した。

「ツイッターのユーザーデータの安全でない取り扱い、そして取締役会や規制当局に問題を正直に伝えることができない、もしくは望まないことは、数千万人単位の米国民や米国の民主的プロセス、米国の国家安全保障に真のリスクをもたらしている」と同氏は述べ、同社の経営陣は「規制当局をだましユーザーや投資家にうそつくことで、セキュリティーの失敗を繰り返し隠蔽してきた」と論じた。

ザトコ氏の証言で議員が特に懸念を示したのは、ツイッターが外国の工作員を従業員として採用してしまい、中国のような敵対する国の要求に従うことを許していたという点。同氏によると、米連邦捜査局(FBI)が中国国家安全省に協力している疑いのある人物が社内にいるとツイッターに警告していたことを解雇される約1週間前に知ったが、驚きではなかったという。

ザトコ氏(51)は今年1月、ツイッターを解雇された。同社によれば、業績に問題があったことが解雇の理由。

ツイッターは公聴会について、「ザトコ氏の主張が矛盾と不正確さに満ちていることが確認されただけだ」とするコメントを発表。自社の採用プロセスの正当性を主張し、データへのアクセスは監視システムと身元調査によって管理されていると説明した。

事情に詳しい複数の関係者や従業員のツイートによると、ザトコ氏の証言に対する反応は、ツイッターの現・元従業員の間でまちまち。 ツイッターのようなテクノロジー企業はデータとセキュリティーの問題をより適切に監視する必要があるという同氏の申し立ては総体的に的を射ているとの見方がある一方、同氏がツイッター幹部だったこと踏まえると、なぜ自分で同社の問題を解決するためにもっと多くのことをしなかったのかという疑問も呈された。

原題:Twitter Shareholders Approve Elon Musk’s $44 Billion Buyout (3)、Twitter Whistle-Blower Testimony Spurs Calls for Tech Regulator(抜粋)

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