[東京 2日 ロイター] - カジュアル衣料店を展開するファーストリテイリングでユニクロ北米事業を統括する塚越大介・最高経営責任者(CEO)は、人権問題を巡る米国の法令などに基づいて同社のサプライチェーン(供給網)を作り替えたことを明らかにした。事業に大きな影響は及ぼさない、との見解を示した。

米国をはじめ世界各国では、サプライチェーンに関して人権侵害を理由に規制強化が進む。2021年には、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働により生産された綿花の疑いがある衣料品として、米国の税関当局がユニクロの一部商品の輸入を差し止めた。関係はないとするユニクロの主張は認められなかった。

塚越氏は「米国の法令や基準に沿った形でサプライチェーンを作っていく。今後も適切に対応する」とし「事業に対する大きな影響はない」と語った。

<黒字化に自信、ブランドが定着>

一方、北米事業の業績に関しては、今期の初の黒字化に改めて自信をみせた。ブランドの定着に加え、経費節減などの構造改革が奏功し、「値引きをせずに黒字化する局面にきた」と話す。

塚越氏は、コロナ禍で来店客数が減少した際に構造改革を実行。原価や粗利、経費などにもメスを入れ、「利益が出る体質を作り上げた」と述べた。

米国のアパレル業界の事業環境が大きく悪化し、同業大手ギャップなどが苦戦するなかでも、「売り上げが急激に落ちるとか、在庫が増える状況にはない」と語った。その理由について、ブランドが市場に浸透した結果だと分析する。

Tシャツやインナーアイテムなど生活必需品である「普段着」としての品質や機能性を広告やSNS、事業活動などを通じ発信し、認知度の向上を図ってきたことが実を結んできている、と説明した。

UBS証券の守屋のぞみアナリストは「収益管理力が上がった」と評価し、今後赤字になるリスクは小さいとみている。一方で、「米国は、大きな市場だが競合も多い。市場の成熟度から見ても、開発途上にあったアジアと比較して難易度の高い市場で、どの程度の成長軌道に乗せられるかは注視していく必要がある」と指摘する。鍵となるのは出店ペースだと解説する。

ユニクロは今後5年間で、北米に年間30店舗の出店を計画し、現在の59店舗を200店舗まで拡大する。計画最終年度となる27年8月期には、売上高3000億円(21年8月期実績は非開示)、営業利益率20%を目指す。

ユニクロは05年に北米事業に参入。同年9月のニュージャージー州の出店を皮切りに、翌06年には初のグローバル旗艦店をニューヨークのソーホー地区にオープンした。

塚越氏は11年秋にニューヨークに開いた34丁目店を率いた。その後、西海岸で初となるサンフランシスコ店の立ち上げも担うなど、長く米国市場に関わってきた。「苦戦が続いたが、ここからは成長を加速していくステージ」という。

*インタビューは8月30日に実施しました。

(浦中美穂、Rocky Swift 編集 橋本浩)