2022/8/31

【深津貴之の仕事術】クリエイティブに集中する時間は「スロット」で確保する

NewsPicks / Brand Design 編集者
日々の業務に追われて集中できない。集中できないがゆえに業務が溜まり、中長期的な見通しが立てられない……と嘆いているビジネスパーソンは少なくないだろう。

改善しないといけないと分かっていても、なかなか実行できない方たちに向けたヒントを、クリエイティブユニットTHE GUILDの深津貴之氏に伺った。

深津氏はメディアプラットフォーム「note」のCXO(Chief Experience Officer)として数々のプロジェクトに携わっているほか、UI/UXデザインの第一人者、そしてエンジニアや経営者としての顔も持つ。

多忙なスケジュールを過ごす毎日の中、「集中するときのエネルギー」としてどんなものを取り入れ、才能を爆発させているのだろうか。

なぜ、仕事を溜めてしまうのか

──深津さんはnote記事にて、「樵(きこり)のジレンマ」というたとえを出されていました。集中できないがゆえに仕事を溜めてしまう。いつも追われている気がする。その結果、中長期への投資ができない……。ビジネスパーソンが陥りがちな、そういったジレンマの要因は何だと思いますか?
深津 基本的には、仕事に使う“スロット(時間枠)”を満タンまで埋めてしまうからだと思います。
 スロットが満タンまで埋まってて、他のことができない状態が、ジレンマの要因。スロットを埋めないようにするには、まずは1日のスロットを整理するのがいいんじゃないでしょうか。
 たとえば、最初に分配比率を決めるのが大事だと思います。
 日常業務のスロットが3、未来の投資に使うスロットが1、R&D(Research & Development)のスロットが1あると決めたなら、スロット比率を厳守する。たとえば仕事は、日常業務のスロット以外には入れないようにするんです。
 人が意志の力で、スケジュールの比率を管理するのは難しいと思います。ですからスロットのように、意志に頼らない構造や仕組みで、自動化するのが大事でしょう。「ここからは別のスロットだから、今日は仕事をやれない」といった感じで。
──1日の仕事のスケジュールをスロットで管理するというわけですね。とはいえ、急なクライアント対応や上司からの依頼などで、スケジュールが狂うことも多いです。
 そんなときは“非常用のスロット”を使います。仕事に必要なスロットの他に非常用のスロットを用意しておけば、緊急のトラブルなどは、その範囲内で解決できるのではないでしょうか。
 もし非常用のスロットで時間が足りないときは、睡眠時間や家族と過ごす時間など、仕事以外のスロットを犠牲にするしかないですが……当然ながらおすすめはできません。そうならないためにも、よく考えてスロットを設定するといいでしょう。
──スロットで管理するにしても、在宅勤務時のビジネスパーソンは、通勤や移動の時間に行っていた頭のリフレッシュやアイデアを考える時間、考えやタスクを整理する時間が取りにくくなっています。今の自分が果たして仕事のパフォーマンスが高い状態で維持できているのか、ということをなかなか俯瞰できない。どうやって見極めるべきでしょうか?
 スケジュール管理と同じく、スロットで見極めるのがいいと思います。自動化すると楽なので。日常業務のスロットが足りなければ、パフォーマンスが落ちていると分かるし、逆に余裕があれば調子がいいと考えられます。
 また、もしも移動時間がなくなったことでインプットが減るならば、在宅勤務でも移動時間分のスロットを作ればいい。
 通勤時間が朝夕1時間だったのなら、その時間帯を充電時間のスロットにあてて、リフレッシュやアイデア出しなどに使えば解決すると思います。

分かってはいるのに、すぐ着手できない原因

──そもそも人はなぜ、分かってはいるのにすぐ着手できないのでしょうか? 物事に集中し、決断や行動に移せない要因について、深津さんのお考えをお聞かせください。
 僕は、意思決定は「有限のリソース」であると考えています。人は疲れるほど、判断が雑になっていきます。で、疲れたあとに重要なことや大事なことを決断したり、行動したりするのはおすすめしません。
 だから僕は週や1日の頭に、重要なことの作業スロットを用意しています。そうすれば、何かあってもリカバリーしやすい。
 つい先延ばしにしてしまうという方は、スロットのような強制的な仕組みに落とし込んで、行動のリソースがあるうちに片付けてしまうのが確実な気がしますね。
──深津さんは手広くお仕事をされているので、スロットが埋まっているときに、急ぎの仕事を依頼されることもあると思います。そういったときは、どのように対処しているのですか?
 スケジュールを正直に伝えます。今週はスロットが満タンなので、来週でもいいですかって。それでもお願いできませんかと言われたときは、条件が見合うかどうかで判断するようにしています。
 そもそも僕は、むちゃな徹夜進行の仕事を持ってくる方があまり好きではない。そういった仕事は順番に減らしていって、別の仕事を入れて整理するようにしています。
 仕事先を増やして分散させるのは、特定の取引先にだけ頼らなくてもいいようにする狙いもあります。収入や仕事の受け口が1つだと、相手の力関係が強くなってしまい、仕事を断るのが難しくなってしまいますからね。

頭を切り替えて効率的に活動する方法

──クリエイティブな作業において、異なる業界ごとに頭の切り替えにも時間がかかるように思えますが、短時間で頭を切り替え、集中力を保つために行っている工夫や環境づくりについて教えてください。
 僕自身、そもそも集中力があるほうではないんです。なので、気が散りそうなものは物理的に排除するようにしています。
 自宅や作業スペースにはテレビを設置していないですし、最近は本も置かなくなりました。PCも仕事をするマシンとゲームで遊ぶマシンを分けるようにしています。
 仕事の一部でもあるので、作業中にネットサーフィンをしてしまうこともありますが、集中しなければいけないときはオフライン環境にしています。スマートフォンも気になるので、集中したいときはプッシュ通知が届かない設定に変えています。
──周囲に邪魔されない、集中できる環境を整えていると。
 とはいえ集中力を持続させるのは難しいので、重たい仕事は午前中に固めるようにしています。ルーティン系の重要な仕事を午前中にまとめて、時間が前後する作業系の仕事をスロットが調整しやすい午後に回す感じですね。
──環境を整えたうえで、やはりスロットの管理が重要になるのですね。
 僕もはじめのうちはスロットがギリギリになってしまうことがあるので、慣れないうちは大変かもしれません。ですが、仕事をこなすうちに自分にあったスロット管理が分かると思います。
 自分の場合は、フリーランスで社長でもあるので、スケジュールの管理を秘書さんに依存しています。特定の曜日や時間は、「絶対にスケジュールを入れないでください」と伝えればそれで済みますから。
 フリーランスの方で、マネジメントを誰かにお願いできるなら、その方にスロット管理をお願いしてもいいかもしれません。
──スロットが満タンなときは、食事をする時間もなかなかないと思います。
 空きスロットが限定されてしまうので、デリバリーかコンビニで終わらせることが多いです。お気に入りのお店でローテーションを組んでいて、メニュー選びに時間をかけないようにしています。
 デリバリーを頼んでいる暇がないときは、手軽にエネルギーが補給できる「inゼリーエネルギーブドウ糖」がありがたいですね。僕はもともとラムネが好きなので、爽やかな風味も気に入っていて。
 実は、僕の自宅には冷蔵庫がないのです。なので常温で保存しておけるのも便利に感じます。コンビニなどにも置いてあるので、ストックが切れているときは、気分転換を兼ねて買いに行っています。

手軽なエネルギー補給で仕事と食事にメリハリを

──クリエイティブな仕事を続けるうえで、やはりエネルギー補給は重要だとお考えですか?
 エネルギーを補給しておかないと頭が回りませんからね。
 自分の場合だと、ミーティングが立て続けに入っていて、6時間ぐらいぶっ通しで参加しなければいけないときなどは、手早く栄養分が摂れる「inゼリーエネルギーブドウ糖」を重宝しています。
 あとは、集中力を切らしたくないときにいいかな、と。デリバリーを頼んでしまうと、どうしても作業が止まってしまいますが、「inゼリー」なら仕事を続けながらエネルギーを補給できますから。集中を保つためのツールとして非常に便利だと思いますね。
 逆に気分転換してリフレッシュしたいときは、外出して本格的な食事を楽しむといい。仕事を効率的に進めるなら、集中して続けるのか、それともひと休みするのか。メリハリをつけるのも大事だと思います。