2022/8/30

なぜ、エリートほど英語が上達しないのか

News Picks Brand Design Senior Editor
 もし、今日あなたが職場にかかってきた電話をとり、相手が英語で話してきたら、あなたは自信を持って対応できるだろうか。 

 たどたどしく自社の担当者名を聞くか、慌てて保留ボタンを押してしまう人がほとんどだろう。

 以前から知られている通り、日本人の英語力は国際的に見ても下位レベルだ(112か国中78位※)。※「EF EPI英語能力指数」イー・エフ・エデュケーション・ファースト
 その一方で、企業が英語力を求める熱は高まり続けている。

  昇進や採用に際して実務的な英語力を求める企業も増え、海外の取引先への英語での電話やプレゼンが求められる職場も増えつつある。
 現時点では日本人同士のコミュニケーションだけで済んでいる職場も、いつ仕事で英語が必要になるかわからない。
 今や英語でのコミュニケーションができないことは、ビジネスパーソンにとって大きなリスクだ。
「多くの方がなかなか話せるようにならないのは、努力不足でも賢くないからでもありません」
 そう断言するのは、レアジョブの教育サービス事業本部長を務める深井朋子氏だ。日本人の英語力の弱さの原因、そして英語の効果的な学び方についてお聞きした。
INDEX
  • TOEICの点を伸ばしても話せるようにはならない
  • 学び方をどう変えたらいいの?
  • 新しい基準「CEFR」とは?
  • 本当に話せるようになるの?
  • 50万円は高くないですか?
 ── 未だに「話せる日本人」が少ないのはなぜですか?
 学習の方向性を間違っているからです。英語を正しく学び、話せるようになったという方は、おそらく英語学習者全体では少ないのではないでしょうか。
 実は高学歴で大企業に勤め、なんならTOEICで高得点の人ほど、「話せない」んです。

TOEICの点を伸ばしても話せるようにはならない

── TOEIC高得点でも話せないんですか? それはなぜでしょうか。
 彼らは英語の本筋と外れた「スコア狙いの学習」をしてしまっているんです。
 英語を話せるようになるには、知識として知っているだけの語彙(パッシブボキャブラリー)を増やすのではなく、会話などで使える語彙(アクティブボキャブラリー)を充実させていく必要があります。
 TOEICなどのスコア自体を目標に学習してしまうと、試験対策用に詰め込んだ英単語の知識ばかりが増えるような学習に走ってしまいがちです。
 特に注意していただきたいのが、先ほど申し上げた有名大学出身者などの学歴エリートの方々です。彼ら、彼女らはこの「TOEICはできるけど、話せない状態」に陥りやすい傾向にあります。
 学校教育で高得点をとってきた成功体験があるため、スコアというわかりやすい目標に燃えやすいですし、テキストや音声教材を使ったインプット中心の学習も得意です。
 ただ、彼ら、彼女らは「地道な知識のインプット=英語学習」なのだという根本的な勘違いをしています。
 その結果、TOEICでハイスコアでも、話せないという人たちが大量に生まれてしまっているのです。
── では、TOEICは受ける意味がないのですか?
 それは違います。「留学や社内昇進のためにスコアが必要」といった明確な目的があり、それに向けて学習するのであれば良いでしょう。
 また、英語の中でもパッシブボキャブラリーを測定・評価し、ご自身の英語力を図るという目的のために受験することも良いと思います。
 ただ、語学学習というのは、できない表現を一つずつできるようにして、他者とコミュニケーションできるようになっていくものです。
 TOEICをはじめとした資格試験を受ける際には、「何が話せるようになったか」「何ができるようになったか」という具体的な成長のために試験を活用できているか、常に意識してほしいですね。

学び方をどう変えたらいいの?

── なぜ、多くの人は学習方法の誤りに気づけないのでしょうか?
 多くの学習者は、パッシブボキャブラリーをひたすら伸ばすという誤った学習を頑張っていながら、結局話せないという状況に陥ってしまっています。
 それにもかかわらず、「話せないのは努力が足りないからだ! もっとスパルタに学習時間を増やそう!」と認識してしまっているのだと思います。
 その結果、学習の見直しに思いが至らず、いつまでたっても同じ学習段階に留まっているのでしょう。
 英会話が上達するためには、それに特化した対策が必要だ!と気づく人が増えれば、英語を話せる日本人は増えるでしょうね。

新しい基準「CEFR」とは?

── そうは言っても、スコア以外の目標を設定するのは難しいのでは?
 昨今、弊社を含め多くの企業が、英語の習得段階を表す指標として、「CEFR(セファール)」という指標を取り入れています。
 CEFRはヨーロッパで作られた「外国語の学習者の習得状況を示すガイドライン」で、現在は文部科学省の学習指導要領にも取り入れられています。
 読む、聞く、話す、書くという4技能をそれぞれ6段階で評価し、次の段階に進むために何が必要か、といったことが明示されています。
 一般的にビジネスの現場ではB2以上の英語力が必要と言われ、海外企業の採用などではC1以上が必要とされています。
 多くの日本人の場合、「読む」がA2〜B2、「聞く」「話す」「書く」はA2にとどまっています。
── 資格試験の基準と何が違うのですか?
 CEFRの特徴は、生活や仕事の場での実践的な英語力にフォーカスし、次のレベルに到達するための道筋を示してくれる点にあります。
 根本にあるのは、「点数や知識を追い求めるのではなく、できなかったコミュニケーションをできるようにしていく」という思想です。
 CEFRは1点刻みで点数をつけるという評価者視点ではありません。
「ここまではできるようになったな」「今よりもうまく話せるようになるために、これを頑張ってみよう」という学習者視点の指標として作られているのです。
 弊社の「スマートメソッド®」は、ビジネスで必要となる会話を、CEFRを基準としたカリキュラムに落とし込んだプログラムです。
 1回50分×週5回×16週間の密度の高いレッスンで、確実に英会話力の上達に導きます。

本当に話せるようになるの?

── たったの16週間で本当に話せるようになるのでしょうか。
 英会話はきちんと目的を設定し、正しい学習設計に則って学習すれば、何年もかける必要はありません。
 私たちは16週間を一つの単位とし、CEFR-J(※)を1レベル上げるという成果保証をしています。(※CEFR-JはCEFRをベースとした日本独自の新たな英語能力習熟度指標)
 受講者の平均的な英会話力の成長は、CEFR-J基準で1.4段階程度。モチベーションが高い受講者の場合、2段階上がる人も少なくありません。
── 実際にどのように英会話力を伸ばすのでしょうか。
 まずは徹底した反復練習による「アクティブボキャブラリー」の増加です。
 日本人の多くは、中高の学習で知識としては十分な語彙を獲得していますので、使えるようにしてあげればかなり話せるようになります。
「新しいものを覚える」のではなく、「知っているものを何度も使って、使えるようにしていく」ことに特化します。
 知っている単語を使えるようにしていくプロセスでは、筋トレのような反復練習が必要になります。
 自己紹介、買い物、ホテルのチェックイン、プレゼン、会議など自分が上達したいシチュエーションを決め、習った表現を繰り返し会話の中で使っていくことでしか、自信を持って使えるようになりません。
 スマートメソッド®で「自己紹介」について学ぶ週であれば、その週は予習から実践、復習、テストまで全て自己紹介に関する英語づくしです。
 生徒さんが名前と職業と会社名までは言えるようなら、講師は「今日のレッスンでは、経歴や具体的な仕事内容を説明できるようになりましょう」と一つ上のレベルに行くために身につけるべきことをアドバイスします。
「また、この表現か。もう嫌ってほど使ったよ」というくらいやりこんで、初めて会話で自然に使えるようになるのです。
── 反復練習と聞くと、モチベーションが続くか心配です。
 確かに単純な反復学習は知識欲の強い人には苦痛かもしれません。ただ、弊社にはこれまでオンライン英会話事業を続けてきた実績から、モチベーション維持のためのノウハウの蓄積があります。
 まず、受講者の学習動機の具体化です。
「とりあえず英語やったほうがいい気がする」「できたほうが仕事で有利かも」といったぼんやりとした学習動機を、面談を通じて深掘りし、具体化していきます。
 例えば「英語を仕事で使うとしたら、どんな場面で役立てたいですか」とか「3年以内のビジネスの目標とその過程で必要になりそうな英語スキルを考えましょう」といった具合です。
 そうすると「技術展覧会で自社商品を英語で案内できるようになりたい」とか「海外支社に赴任して、マネジメント職に就きたい」といった具体的な目標が浮かんできます。
 成長後の姿を具体的にイメージしてもらうことは、学習意欲に直結します。
 それに加え、「成長の実感」も大事にしています。
 レッスン後には何が身についていたか、次に何を身につけてほしいかをフィードバックするので、学習が常に進んでいる実感を持っていただけます。
 また、週末には「ウィークリーテスト」という形でその週に習った内容を確認し、定着をバックアップします。
 以前は話せなかったことを一つずつ丁寧に「話せる」ようにしていくので、毎週自分が成長していくのを実感でき、確信を持って学習に取り組めます。

50万円は高くないですか?

── 今までの英会話と何が違うのですか?
 従来型の英会話教室などで行われている英会話も、確かにアウトプット中心です。
 覚えた表現や単語を使いながら「アクティブボキャブラリー」を増やしていくことができ、英会話力を伸ばしていくことが可能です。
 しかし、一つだけ問題があります。それは、フィードバック機能の弱さです。
 例えば英会話で間違った表現を指摘したり、次に身につけるべき表現について提示したりしてくれる講師は少ないのではないでしょうか。
 話すことに慣れる、日常的な雑談ができるようになるという意味では、従来の英会話で十分かもしれません。
 ただ、ビジネスレベルで使えるようになるには、プロによる指摘と復習をセットにして学んだほうが近道です。
── 16週間で55万円は少し高いのでは?
 料金の550,000円には、教材費、オンライン英会話レッスン料(1回50分×週5回×16週間)、スピーキングテスト受験料、コーチング管理ツール利用料、1on1コンサルタント相談料なども含まれています。
 人によってアクティブボキャブラリーとパッシブボキャブラリーは様々。スマートメソッド®では、その人にあわせた英会話学習体験に加えて、コンサルタントによる日々のモチベーション管理も行います。
 確かに少し高いと感じる人も多いかもしれません。しかし、もう一度CEFRの表を見てみてください。自分が1レベル上がった時に、きっと仕事や人生の見える景色が変わって見えるはずです。