2022/8/30

日本の働くは変わった。次は「仕事の流通2兆円」への挑戦だ

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 2011年の創業から10年を超え、クラウドワークスが事業を拡大している。副業解禁やリモートワークの浸透など、社会の価値観も大きく変化するなか、時間や場所・組織にとらわれない働き方も定着。
 国内No.1のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」は、「“働く”を通して人々に笑顔を」を叶えてきた。
 2021年、自身の存在意義を新たに「個のためのインフラになる」と定めたクラウドワークス。新規事業やM&Aも手掛けながら、成長のスピードを増している。
 吉田浩一郎代表は、今、どんな未来を描いているのか。そのための打ち手とは。本人を直撃した。
INDEX
  • 10年で激変した「働く」の常識
  • 目指すのは「個のためのインフラ」
  • 2022年「副業ビッグバン」到来
  • 流通2兆円、日本最大の就業インフラを目指す

10年で激変した「働く」の常識

──創業から10年が経ちました。人々の働き方は大きく変わり、コロナ禍によるパラダイムシフトも起こった。吉田さんは、社会の変化をどのようにとらえていますか。
吉田 クラウドワークスを立ち上げたのは2011年11月。3月に発生した東日本大震災によって、人々の価値観が一気に変容した年でした。
「いざというときに家族のそばにいたい」「地域に貢献したい」という思いが広がり、従来の働き方に疑問を持ちはじめる方も少なくなかった。
 そんななかで、フリーランスなど個人と企業のマッチングを図るクラウドソーシングサービスをスタートしましたが、当初、投資家など周囲の方からは、非常に厳しい声をいただきました。
「企業が個人を信用するなんて、日本ではありえない」「きっと、うまくいかないよ」と。
 それでも、私たちは新しい働き方を広げることで、創業時に掲げたミッション「“働く”を通して人々に笑顔を」を実現したかった。
 大きな変化を感じたのは、17年末に政府が「副業解禁」を発表してからです。
 翌年秋、当社がテレビで特集されるやいなや、人気の動画SNSやニュースアプリを抑え、App Storeでクラウドワークスのアプリが総合ランキングで1位を獲った。しかも、3日間連続です。
画像は吉田氏の当時のツイッター投稿より
 テレビの力はすごいと感じるとともに、これは「時代が変わった」と手応えがあった。
 21年には、神戸市がクラウドワークスを通じて副業人材を40名募集。わずか10日間で1000名を超える応募が集まりました。
 そして、サービス開始当初は新しい働き方を体現するのはフリーランスやシニア層など組織に属さない方々が中心でしたが、だんだんと企業に勤める正社員もここに加わり始めた。
 今年に入ってからはパナソニックが「選択的週休3日制」の導入を始めたり、三井住友海上が出向や副業など「外部での経験」を課長への昇進条件とすると発表したり。
 トヨタ自動車や本田技研工業、ソニー、日立製作所、富士通など錚々たる大企業も副業人材活用に動き出しています。
 10年前には「ありえない」と言われていた世界が訪れたのです。

目指すのは「個のためのインフラ」

──10年間で、個人と企業の関係が一変した、と。
 これまでは「正社員」が社会のデファクトスタンダードであり、大企業が雇用の主要なインフラでした。
 しかし、労働人口が減り、経済成長が不透明な今の日本の市場環境では、正社員というフォーマット自体が数ある選択肢の一つに変わっていくのだと思います。
 正社員や週休3日社員、業務委託、副業、フリーランスなどが同じレイヤーで選択肢として提示され、多様な働き方を選べるようになっていく。
 各社から週休3日、週休4日というかたちで打ち出されている“正社員のカスタマイズ”制度は、従来の正社員制度は全員に適用できないと、企業がアナウンスしたに等しいでしょう。
 1社だけで活躍できる人材はもう要らない。一人の社会人として役立つことが証明された人材がほしいのだ、と。
 また、数年前まで、企業側には「専門領域は個人に“外注”したほうが安い」というイメージが強くありました。
 しかし近年は、「高い報酬を出してでも、優秀な人と働きたい」という意識に変わっている。
 そこで、稼働実績や企業からの評価によって優れたワーカーを100人限定で認定する「認定パートナーワーカー制度」を始めたところ、制度開始1年で彼らの年間平均報酬額が198万円アップしたという動きもあります。
──そんな社会の変化を受け、21年には企業のミッションを「個のためのインフラになる」と刷新しました。
 創業当初は、時間や場所・組織にとらわれない働き方を広げたいという思いが強かった。つまり、「働く」という枠組みのなかでの多様性を求めていました。
 しかし、ここ3~4年で、従来の“働く”に縛られない「自分の好きなこと・得意なことで報酬を得る」流れが生まれています。
 たとえば、家事や掃除の代行、自分の部屋を貸す、YouTubeやサロンで自分の趣味の知識を共有するといった活動のなかで経済が回っていく。
 そうした人たちも包摂するミッションを求め、生まれたのが「個のためのインフラ」という言葉でした。
 個の才能や経験がインターネットを通して誰かの役に立つ世界へと変化してきた。
 その無限の可能性を、より広げていきたいと思っています。

2022年「副業ビッグバン」到来

──近年、その思いをかたちにする新規事業を多数手掛けられています。
 今、急拡大しているのが、ハイクラス人材の副業・兼業マッチングサービス「クラウドリンクス」です。
 20年のサービス開始から、登録者数は5万人を超え、今も毎月6500名が新規で登録しています。
 副業登録している方の履歴書を見ると、大手メーカーからIT、コンサルなど名の知れた企業に勤める正社員の方ばかりで、日系から外資まで幅広い。
 副業したい方がこれだけいるのかと、隔世の感を禁じえません。
「クラウドリンクス」には、トヨタ自動車・本田技研工業・日産自動車・日本航空・全日本空輸・任天堂・ソニー・パナソニック・富士通・日立製作所・キヤノン・コニカミノルタ・富士フイルムホールディングス・ヤマハ・ブリヂストン・旭化成・サントリー・味の素・花王・森永乳業などの日本の大企業から、楽天・リクルート・LINE・Z HOLDINGS・GMOインターネット・DeNA・エムスリー・ZOZOなどのIT企業、そしてGoogle・Amazon・Microsoft・IBM・スターバックス・P&G・ボストンコンサルティンググループ・アストラゼネカなどの外資系企業まで、幅広い企業からハイクラス人材が集う(iStock/Abscent84)
 昨年12月から社外取締役を務めていただいているサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、「大企業にいる優秀層の人材流動化が、日本経済活性化の鍵だ」と繰り返しおっしゃっています。
 一度、大企業に入ったら最後、定年まで動かないのが日本の課題だった。
 チャレンジしたいのなら、大企業を辞めてベンチャーに飛び込むか、フリーランスになって独立するか、あるいは起業するか。
 安定 or リスクのような、極端な二項対立で語られることが多かった。
 しかし、副業解禁が広がり、リスキリングが重視される今、人材流動化がもっとも進んでいなかった大企業の正社員がついに動き出しました。
 新浪さんとは、「ようやく、大人のインターンシップができるようになった」と話しています。
 今年が、副業ビッグバンの年になると確信しています。
 また、個の才能や経験を届ける新サービスとして、21年にスキルEC作成サービス「PARK」をスタートさせました。
 販売されているスキルを見ると、「おすすめのパン屋さんを10店教えます」「あなたの人生を落語にします」など、こんなことも売れるんだ!と気づきが多い。
 さらに、22年4月には、月謝の支払い管理サービス「メンバーペイ」を買収し、レッスンやサロンなど月謝制の運営をテクノロジーでサポートしています。

流通2兆円、日本最大の就業インフラを目指す

──企業で“働く”ことだけに縛られず、自分のスキルを提供して誰かに喜んでもらう仕組みを作っていく。たしかに、自分の好きや得意で報酬を得られる社会はワクワクします。
 我々のビジョンは創業時から「世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる」。
 社内では、これを“就業インフラ”になると呼んでいます。
 20世紀の就業インフラは雇用でした。企業がオフィスや工場を作って、人を雇う。
 今、日本最大の雇用主はトヨタ自動車で、従業員約37万人に対して年間約1.5兆円の報酬を払っている。
 既存の社会システムに対し、クラウドワークスでは、人と仕事をマッチングして報酬を届ける仕組みを使って、まったく新しい就業インフラになっていきたいと考えています。
 当然、インフラと名乗る限りは、最低限の対価を払えば誰もが簡単に手に入れられる、電気や水道、通信、交通のような存在にならなければいけない。
 あらゆる人が「何かやりたい、役に立ちたい」「誰かとつながって報酬を得たい」と思ったときに、私たちのサービスにアクセスすれば、その機会が得られる。
 そんな存在を目指し、まずは日本最大の“就業インフラ”になるべく、「仕事の流通2兆円」を目標に掲げています。
──2022年9月期の流通取引総額予想は190億円。2兆円までの道を、どのように歩んでいきますか。
 非連続な成長のために何をすべきか。社内では10年単位でマイルストーンを置いています。
 14年のマザーズ上場以来、13の社内新規事業、6社のM&Aを手掛けてきました。
 もちろん、そのすべてがうまくいったわけではありませんが、その際、何が良くて悪かったのか、成功確率を高める要因について、すべてドキュメント化しています。
 クラウドワークスは18年9月期の黒字転換以降、22ヶ月連続で目標を達成しています(2022年7月末時点)。
 この業績達成の原動力となっているのが、「生産性向上」文化です。
 生産性向上に向けた規定や目標を設定する「生産性向上ポリシー」と、成功体験を毎週2ケースずつ全社員参加の朝会でシェアする「PIP(生産性向上ナレッジコンテスト)」を開発。
 年間100ケース以上の知見が貯まり、メンバーのビジネススキル向上につながっています。
 こうした取り組みの結果、今の延長線上の事業計画については、2年先まで精密に読めるようになってきた。
 生産性向上や予実管理の体制など、私たちが培ってきた経営モデルをインストールすることで、M&A先の業務改善も進めていける。
 たとえば、20年にM&Aしたサービスに「クラウドログ」があります。
 シンプルな工数管理SaaSですが、ARR(年間経常収益)はまもなく3億円を突破、YoY(前年比)100%超、つまり倍成長で大きく伸びています。チャーンレート(平均解約率)も1%を切っている。
 この成長には、社内のインサイドセールスのノウハウを横展開するなど、既存のアセットの活用が活きています。
 今後も、こうしたM&A、あるいは新規事業をどんどん仕掛けていくので、流通取引総額2兆円への挑戦は実現可能性の高い目標として、より解像度が高く見えるようになっています。
 また、求めるのは成長だけではありません。
 個のためのインフラとして、地方創生や子育て、介護、シニア、災害復興、障害者就業支援など、日本の社会課題を解決することを両立していく。
 日本を活性化する、社会課題の解決と売上・利益成長の両立という、まったく新しい会社づくりに挑むのがこれからのクラウドワークスなのです。
 今、社内では、既存事業の生産性向上、新規事業、M&Aと、多様なチャレンジの場が広がっています。
 最近では、金融業界の経験を経て、会員数3000名を誇る「東大金融研究会」を主宰する伊藤潤一さんなど、事業畑だけではなく金融やコンサル出身のメンバーも数多く参画。
 幅広いバックグラウンドの方が集ってくれるのも、今のクラウドワークスにチャンスがあると感じられている証だと感じています。
 生産性向上によって営業利益が見込め、株価が上がっていく期待も高い。十分な報酬を自社の社員にも用意できるようになってきました。
 今、クラウドワークスで活躍している人は、本当にさまざまで社内は動物園みたいですね(笑)。
「私はこういうことがやりたいんだ!」と主張するメンバーがあっちこっちにいるのがクラウドワークスです。
 そもそもオーナーシップだけを原動力とした経営が、通用する幅は年々狭くなっていると思うんです。
 社会全体を一人のオーナーが把握して戦略のすべてを描くことは、不確実性の高い今の時代には、非常に難しい。
 ユーザーの意見や、データベース内の新たな変化を現場の一人ひとりがいち早くとらえて、それをサービスにしていくやり方が必須です。
 だから私自身、トップを見て動くような人がいる組織は、まったく目指していません。
 私たちが目指すのは、「個のためのインフラ」を作ることですから。
 インフラ企業の社長は、顔が思い浮かばないくらい印象が薄くていいんです。向かうべきは、社会。
 社会に向いて事業を作りたい、事業を大きく成長させたい方にはぜひ、仲間になってほしいですね。
<新しい社会インフラを創る、仲間を募集中>

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