2022/7/29

地方でも都市部に負けない新卒採用の勝ち筋がある

編集オフィスPLUGGED
コロナ禍で採用活動に大きな打撃が出た流行1年目から時間も経ち、新卒採用の形も変わってきました。人材戦略コンサルティングを行う東京・中野区のNOMALの代表取締役・松本祥太郎さんは、今こそ地方企業にも全国から良い人材を採用できるチャンスだと話します。コロナ禍で人材採用はどう変わってきたのでしょうか。
INDEX
  • 事業の要は採用コンサルティング事業
  • コロナ禍で地方企業の採用チャンスは拡大した
  • オンライン採用の光と課題
  • 採用の勝ちルールは毎年大きく変わる

事業の要は採用コンサルティング事業

「多くの企業の採用の課題として挙げられるのが『自分の会社には何が合っているのか、どういう手法が向いているのかが見えていないこと』なのです」
株式会社NOMALで採用コンサルティング事業を担当する社長の松本祥太郎さんは、多くの地方企業が抱える採用の問題をこう語ります。
独立前は、大手総合人材サービス企業のマイナビに勤務し、法人営業を担当。人材に関する悩みを抱える企業に対して、予算や課題に合わせた採用戦略を打ち立ててきました。
NOMAL代表取締役 松本祥太郎さん
松本 「人生の転機に関わることができる仕事がしたいと思い、人材業界に興味を持ってマイナビに入社しました。そこで培った経験とスキルを持って独立し、NOMALを立ち上げました」
松本さんは、企業の成長戦略を実現するために、採用予算や採用活動に合わせた戦略を練り、円満な採用や人材育成へと導き続けています。
「例えば、地方の中小企業では、採用のターゲットもこれまでは『地元で働きたい大学生』ならいいというざっくりした設定が多かった。しかも、自社の採用情報が行き渡らず、結局誰かの身内や知り合いから見つけてくるしかないというのもよく聞きます。しかし、オンラインの活用で採用が広がると、自分たちが求めていることを考え直すようになり、『この分野の勉強をしてきた学生』というように、より欲しい人材を採用することができるようになりましたね」

コロナ禍で地方企業の採用チャンスは拡大した

現在、企業の採用状況はコロナ禍にあって毎年大きく変化しています。松本さんは、コロナ禍によって2020年の採用は軒並みストップしたものの、その翌年からは地方の中小企業にとっての好機が訪れたと言います。
松本 「採用活動が対面からオンラインに移行したおかげで、地方の中小企業は優秀な学生、欲しい学生との接点が無限になりました。ですから、オンライン化の対応が早かった企業さんは、東京と変わらないような採用活動ができています」
例えば、以前はハローワークや地元の新聞で募集をし、年間の応募数が3名程度だったのが、オンライン化し、さらにWebサービスをうまく活用したことで、100名の応募があった地方企業もあったのだそうです。
「3人から2人を採用するのと、100人から2人選んで採用するのとでは大きな違いが出ますよね。採用活動で重要なのは“ちゃんと選ぶ”こと。選び抜いた優秀な人材を採用できれば、その人が育ち、企業も育つ。そういう人がいる企業ということで、さらに人を集めることもでき、良い循環が生まれていくのです」
企業の担当者と採用について相談する松本さん(写真:NOMAL提供)

オンライン採用の光と課題

中には、東京や大阪で大学を卒業するが地元に戻りたいと考えている学生もいます。しかし、地元の新聞や広告だけでは、そういった学生には情報が届いていませんでした。オンラインを活用することで、情報が確実に届くようになった一方、課題になったのはオンラインでの採用面接だったといいます。
VioletaStoimenova / iStock
松本 「オンラインで自社の魅力を伝えることや、面接をするのはとても難しいので、私たちも全面的にサポートしています。ネットの繋ぎ方、Zoomなどの使い方、パワーポイントなどのオンラインでの会社説明会資料の作り方、そうした一つ一つが中小企業にはハードルになりますよね。
以前は『うちは地方の中小企業だから(いい人材を採用するのは無理)』と卑下される会社さんもありましたが、正しい採用広報のノウハウを学んで活用し、実際に100人の応募が集まると『いける!』と手応えを感じられているようです。そこまでが一山ですが、そこを抜けると大きく変わります。これは採用状況だけでなく、すべてにおいて言えることだと思います」
これまで、オンライン採用を取り入れていなかった地方の中小企業に勝ち目はあるのでしょうか。
「採用市場は毎年変化するので、過去に囚われる必要はありません。去年うまくいったから今年もうまくいくとは限りませんし、逆に、去年までやってこなかったから、これからも無理、ということでもありません。ただ、やると決めたら最新の情報を入手する必要があります」

採用の勝ちルールは毎年大きく変わる

現在、採用市場の変化は著しく、2023年卒業予定の学生の内定率は4月1日時点で46.5%(ディスコ調べ)で、過去最高となっています。一時期、後ろ倒しとなっていた学生による就職活動の開始時期は、ここ数年でまた早まってきている傾向にあります。
松本 「これは、私も予想していないほどの速さでした。今後も、採用の早期化は進行していくと考えられます。コロナ下で、どの企業さんも皆『どうやったら良い採用ができるだろう』と考えて動いているので市場は常に動いているのでしょう。ただ、こうした現状を知っているか、知っていないかだけで、採用が成功するかどうかは大きく変わってきます。気づいたら出遅れていた、では良い人材はとれませんよね」
今は、学生のうちに複数のインターンシップを経験し、そのまま就職を決める学生も増えています。オンラインで行われる採用活動がメインになっている一方で、学生同士その情報を得たり共有したりすることが難しく、学生間でも差が広がっている様子です。
コロナの影響によってどのくらい変化していくのか、は未知数であるようです。
各企業の欲しい人材を具体的に聞き取りしていくことが重要だと松本さん(写真提供:NOMAL)
「今後の採用現場では、オンラインとオフラインのすみ分けをどうするのかが棚上げになったままです。求職者との良いマッチングを実現するための正解はまだだれも見つけられていないんです。セオリーは来年ぐらいには見つかっていきそうですが、そのセオリーを、どこの会社がいち早く見つけるか。それによって採用市場は大きく変わっていくことになるでしょう」
コロナ禍によって影響を受ける中、戦略の見直しや方向転換のスピードが重要になってくるのでしょう。
後編に続く