厚労省の一部業務他省に 政府検討、医薬・感染症に重点
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厚生労働省は、2019年に厚生労働省改革若手チームによる緊急提言を出しています。そこでは、自身の組織が「拘牢省」と言われているとしているほか、強制労働省などと言われたりもし、いわば「ブラック霞ヶ関」の象徴です。
また、「霞が関の各本省の業務量を比較した資料(自由民主党行政改革推進本部)によれば、厚生労働省の忙しさは他省に比べて随一であることが示されている。平成30年中の定員71,000 人当たりの国会答弁数、所属委員会出席時間、質問主意書答弁数、 審議会等の開催回数、国が被告となっている訴訟件数は、その全てで厚生労働省が 1番多い」とも述べています。
これはコロナ前の提言なので、コロナ対応で更に業務量は爆発的に増加しており、もはや組織として回っていないことは内外で認識されています。早急に業務を他省庁に移管するか、民間に移管するか、諸外国と比較して非常に少ない公務員を増加することが必要だと思われます。新型コロナウイルス感染症対策の問題点の解消を狙っての制度改正は、(1)「内閣感染症危機管理庁」の創設による緊急時指示の厚労省からの内閣府への移管 (2)医薬品の承認審査を担当する「医薬・生活衛生局」の非関連業務の他省への移管(厚労省の業務軽減)が柱になっています。ただ、これだけの移管で厚労省が医薬品政策に注力するにはいまだ不十分で、「多種多様なルーチン業務で多忙な省」という状況はほとんど改善しないように感じます。
医薬品行政への低い力量は長年にわたり指摘されていたことですが、一向に改善の兆しが見られないどころか、他国との相対的な地位は明らかに低下していました。医薬品産業を国策とする国と比べるまでもなく、臨床試験体制の整備や有効な新薬の評価に人材を充てない、リスクを許容する新薬開発を指向しない、そもそも職員が少なすぎて仕事に著しく時間がかかるなどの芳しくない評判が目立っています。
一方で日本の医薬品行政は財務省の圧力のもと支出の抑制には非常に熱心で、新薬の開発は遅れても無問題な一方でジェネリックへの切り替えがKPIになるなど、近年は、国内、外資系企業共通に、市場としても研究開発を行う「場所」としても日本の魅力は著しく衰退していました。
現状「厚生労働省医薬・生活衛生局」は治療薬やワクチンの承認手続きといった医薬品行政を所管してはいるものの、最も大切な戦略立案を行っている余裕がないため、承認業務のみならず医薬品産業の育成プランまでも医薬品医療機器総合機構(PDMA)にほとんどを任せています。
外局では能動的な戦略策定に限界があります。このような組織体制でかまわないとしているのは、医薬品行政は「出された申請を機械的にチェックすること」で、その業務をコストセンターととらえていたことの証左であり、米国やEUなどの考え方とは随分違うものだと感じていました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は不幸でしたが、一方で医薬品・医療政策の問題点が世間に知られることになったのは良かったと思います。今後はキャッチアップのための戦略立案とその実行を厚労省本体で主導していかれることに期待しています。