サマーズ氏、FRBは高インフレの重大さ認識を-景気後退リスク
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サマーズさんの指摘はもちろん尤もですし、自らの債務として通貨を発行している中央銀行の責務がその価値の安定(→物価の安定)であること自体は、広く共有されていると思います(デュアルマンデートとされる米国も、中長期的な雇用最大化は物価安定を通じて実現されると説明されています)。
サマーズさんの指摘でより複雑な論点を含むのは、中銀の物価予測です。世界的に中銀が物価予測を数値で出すようになったのは比較的最近のこと(日本は2000年)です。これにはもともと、以下のような課題が意識されていました。
一つは、短期金利操作という政策手段を持つ中銀が「インフレが続く」という情報発信をすれば長期金利に上昇圧力をかけかねないため、そういう情報発信はしにくいのではないかという論点です(もちろん、だからといってバイアスのかかった予測を出していると、中長期的に予測への信認を失ってしまいます)。
もう一つは、民間も中銀も予測は間違えるということです。今回の米国でも、多くの民間も予測を間違えたわけですが、民間はしばらく黙っているという手を使えても、当局者はそういうわけにはいきません。
これらへの特効薬がない中、「中銀は自らの予測の不確実性も良く説明した上で、政策対応の側で十分な機動性を確保すべき」と誰もが言いますが、これ自体決して簡単ではありません。サマーズさんはこれらの論点はもちろん全てご存知のはずで、痛い所を突くなあと感じました。「昨年から高インフレを予測していたサマーズ氏」とありますが、サマーズ元財務長官が巨額の財政支出に警鐘を発したのは、就業率こそコロナ禍前に戻っていないもののその他の雇用指標は総じて強く、就業率の低迷も巨額の失業給付と一律給付金で就労意欲が落ちているせいと見る向きがあり、米国経済が順調に回復してインフレ傾向も強まっている中でのことでした。
雇用は弱くインフレは短期的と強く反論して警告を無視し、巨額の財政支出を繰り出したバイデン政権と、それに同調して金融緩和を続けたFRBにサマーズ氏はたぶん思うところがあるのでしょう。パウエルFRB議長は雇用の強さを背景に米国経済は軟着陸できるとの前提で金融引き締めを進めていますが、サマーズ氏の目には今回もまた「連邦準備制度の予測はあまりに楽観的な傾向があり」と映るのか・・・ (・・;
バイデン政権の大盤振る舞いが供給制約の中で過剰な需要を生んでインフレを加速させたのは間違いなさそうに感じます。財政政策にせよ金融政策にせよ、過度な景気刺激策が景気の振幅を大きくして中長期的な成長力を落とすリスクがあるのは良く知られるところです。対応が遅れてインフレが加速したいま、「インフレの道筋はロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻とそれに伴う石油価格への影響次第」で「バイデン政権が押し下げに向けてできることは多くない」となると、FRBの舵取りは相当に難しそう。
バイデン政権も検討していると伝えられる「中国とのより「戦略的な」関税政策を追求すれば、米国の消費者物価や生産者物価の抑制に寄与する」とのことですが、これは見返りなしに対中関税を下げることになりかねず、政治的にかなり難しいんじゃないのかな。(・・?
一時流行ったMMTに従えば、今こそ政府が増税で需要を抑えてインフレ抑制に動くべき時でしょう。しかし、選挙の洗礼を受ける民主国家、しかも中間選挙を控えたこの時期に政府が大幅増税を打ち出せるはずもなく、増税によるインフレ抑制が民主政治の現実の中では虚構であるといみじくも明らかになりました。
米国経済が失速したら大変です。今となっては軟着陸できると主張するパウエル議長の手腕に期待するほかなさそうに感じます (^.^)/~~~フレ!