米、中国による台湾周辺での軍事行動非難 「挑発的で不安定化招く」
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オースティン国防長官は強い調子で中国軍の最近の強硬姿勢を批判しました。印象的だったのは「インド太平洋は米国の戦略の中核だ。この地域ほど、21世紀の方向性を決定づける地域は他にない」という表現です。バイデン政権の最優先の外交課題が、ウクライナ危機が起きても変わらず、中国であることを明確にしました。「中国は領有権主張に関してより一層高圧的で攻撃的なアプローチを取っている」という表現もこれまでよりもトーンが強まっているようにみえます。
実は、米国も中国も基本となるスタンスを変えていません。米国の「力による現状変更を許さない」という中国非難は、中国にとっては米国が中国の行動を妨害しようとしているように見えるのです。もちろん、中国がしようとしていることが日本や米国を始めとする国際社会にとって許容できない、武力行使を含む「力による現状変更」であるからこそ、米国も非難を強めているのですが、中国は強い権利意識と被害者意識を持っています。
尖閣諸島や台湾は中国の一部であるという権利意識に基づいて、どのような手段を取っても中国のものにすることが最優先です。一方の日本や米国は、武力行使をさせないことが最優先です。そうすると中国は効果の高い選択肢を奪われると感じ、「米国が不当にも中国の権利を侵害している」と非難することになります。
国連憲章が禁じていても自らが主張する権利を守るためであれば武力行使を躊躇なく行う専制主義国家と、武力行使をしてはならないという考えの民主主義国家の間では、価値観や意識が異なるということでしょう。
皮肉なことに、武力行使を選択肢の一つとしていつ実行するか分からない専制主義国家を抑止するためには、「してはならない」と言っても通用せず、「できない」ことを実力をもって示すしかないのです。
必然的に緊張は高まることになります。ただ、専制主義国家が「できる」状況を作り出そうとし、民主主義国家が「できない」ことを示すために、軍事的手段に加えて相互依存の武器化や経済制裁等といった経済的手段も多用されており、状況をより一層複雑にしています。オースティン国防長官のこの話にしろ、米中国防相会談、岸田首相の基調講演、岸防衛相の登壇にしろ、シンクタンクIISSが主催するアジア安全保障会議(シャングリラ対話)がこれだけ注目されたことは過去になかったかもしれません。ウクライナ侵攻、中国の現状変更の動き、北朝鮮の核・ミサイル開発など、それだけ日本をめぐる東アジアの安全保障環境が悪化してしまっているのがその理由。