(ブルームバーグ): 自動車部品で世界2位のデンソーの加藤良文経営役員は10日、将来的に自社の半導体部門を分社化する可能性があるとの考えを示した。

デンソーのチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)も務める加藤氏は愛知県刈谷市の本社でのインタビューで、現在は電子制御ユニット(ECU)やインバーターなど自社の自動車部品用に半導体を生産しているが、将来的には外部販売にも商機があるとみていると話した。その際に半導体部門を分社化した方がいいのかどうか「スタディーしてみる価値はある」と述べた。

ただ、現状は社内向けの生産で精いっぱいで、外販の前提として半導体部門を分社化をすべきかどうかについて社内で議論はまだ行っていないと付け加えた。

前日比下落で推移していたデンソーの株価は報道を受けて上昇に転じ、一時2月21日以来の日中高値となる2.4%高の8330円まで値を上げ、8131円でこの日の取引を終えた。

車の電動化や自動運転技術の普及に伴い車載半導体の需要は大きく増加が見込まれており、経済産業省の試算によると2030年の市場規模は約8兆7000億円と19年比で倍増する。エンジンやブレーキのECUやLidarといったセンサーなどで半導体を使用するデンソーは自らも半導体生産を手掛けるほか、専業メーカーなどとの協業や資本参加を通じて調達力の強化を図ってきた。

デンソーは今月開いた半導体戦略説明会で、25年までに内製する半導体の売り上げ相当額を5000億円と21年の4200億円から拡大する目標を示した。同社の発表資料によると、21年の車載半導体売り上げでは上位を独インフィニオンテクノロジーズなど半導体メーカーが占める中、自動車部品メーカーとしてはデンソーが唯一ランキング入りした。

加藤氏は車載半導体は国内に高い需要があるため「システム部隊と連携して半導体を売っていくのが一番堅い商売だと思っているが、その先の展開というのはチャンスとして考えておきたい」と述べ、外販に事業機会があり得るとの見方を示した。

TSMCの工場にも出資

デンソーは2月には台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に設立した半導体受託製造子会社に約3億5000万ドル(約470億円)を出資し、10%超の株式を取得すると発表した。4月には半導体受託製造大手のユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの日本拠点であるユナイテッド・セミコンダクター・ジャパンと車載パワー半導体の生産で協業すると発表した。

また、デンソーは半導体メーカーにも直接出資して関係構築を図っている。ブルームバーグのデータによると、デンソーは国内半導体大手ルネサスエレクトロニクス株の7.86%を保有するほか、インフィニオンにも0.17%出資している。

半導体分野での他社とのさらなる連携について、加藤氏は「あらゆる選択肢を考えている」としたが、協業先との交渉の有無などの詳細については言及を控えた。

半導体を巡っては需給が逼迫(ひっぱく)した状態が長期化しており、自動車メーカーや部品メーカーの業績にも影を落としている。新型コロナ感染拡大を受けた上海でのロックダウン(都市封鎖)の影響もあり、多くの国内自動車メーカーの4月の生産台数は大きく落ち込んだ。

ホンダ世界生産半減、上海都市封鎖で車メーカーの生産混乱に拍車 (1)

インタビューに同席したデンソーの田尾吉伸執行幹部は、半導体の需給逼迫は今年いっぱい続く可能性があるとの見方を示した。半導体メーカーは供給拡大のため設備投資をしても「設備が半導体が原因で入ってこないという現象も起きていて、非常に不透明だと皆さん言っている」という。需給が緩和するのは「来年にもつれ込むだろう」と続けた。

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