30年後に備える資産運用

生活余裕度の高い徳島県、日本株好きな三重県

投資に“地域性”はあるのか?

2014/11/27
首都圏は外貨預金、外国株、外国株投信等海外資産志向が強く、中部圏は日本株の比率が高い。関西圏は毎月分配型投信とFXの比率が高いのが特徴だ。意外にある、投資の地域性とは?

3大都市圏で投資に特徴が出る

もうじき師走です。今回は、「30年後に向けた投資」とはちょっと趣が違いますが、師走に実家に帰る方々に向けて、自分の田舎は投資にどんな傾向があるのか、ちょっと遊びかたがた「そういえば、そんなの、ある、ある」と楽しんでいただければと思います。

私は仕事柄、地方での講演も多いのですが、行く先々で「この地域は他と比べて保守的なところで、なかなか投資に興味があってもセミナーなどに参加されないんですよ」とよく言われます。まあ私が講師では集客力がないのもわかりますが、どこでも保守的といわれると、「ほんとかな」と思うことも多いものです。

本当に投資に地域差があるのか、なんとなくあるようで、ないようで、というのが本音でした。しかし、3万人の回答者を得たアンケート調査では、地域別にもデータが厚くなり、その結果、やはり投資に地域差があるということが、判明しました。レーダーチャートは、3大都市圏ごとに、投資している商品の比率を全国平均と比較して分析した結果です。

首都圏は多くの投資対象に投資が分散されている結果、海外ものの割合が相対的に高くなっています。一方、中部圏は総じて債券よりは株式への嗜好が強く出ており、特に日本株への嗜好が強く出ています。そして、関西圏は毎月分配型投信への嗜好が色濃く出ているほか、FXの嗜好も強く出ています。こうして挙げてみると、地域差があることがわかります。
 10_3大都市圏の投資対象の違い

徳島県の生活余裕度に注目

次に都道府県別の特徴もみていきましょう。まずは、退職後の生活に関する準備状況についてです。

● 「今の高齢者よりも自分たちが高齢者になった時の方が良い暮らしが送れる」と思っている人の比率の高い県は、沖縄県12.6%、宮崎県12.3%、東京都9.9%、熊本県9.5%、長崎県8.9%。

沖縄県や宮崎県は、温暖な気候に恵まれた土地柄のせいか将来に楽観的なのは納得できますが、東京都の比率が高いのにはちょっと驚きです。

● 「退職後、家族との時間が楽しみ」と答えた比率の高い県は、大分県13.2%、島根県12.8%、鹿児島県12.6%、徳島県11.9%、山口県11.0%。

子供のいる世帯の比率が高い県が上位にくるわけでもないようです。

● 金融資産が年収の何倍あるかでみた生活余裕度のランキングで上位5県は、徳島県2.9倍、奈良県2.7倍、滋賀県2.6倍、岐阜県2.6倍、静岡県2.5倍。

年収を収入とみるだけでなく生活費の代理変数としてみれば、金融資産が年収の何倍あるかは生活の余裕度になるはずです。意外にもトップは徳島県で、平均年収は371.1万円で全国25位ながら、保有金融資産の平均は1073.1万円で全国4位。上手に貯蓄を進めている県なのでしょうか。

次は、投資性向です。

● 投資をしている人のなかで日本株に投資をしている比率の高い県は、三重県80.6%、茨城県72.8%、富山県72.7%、愛知県72.0%、熊本県71.4%。

3大都市圏でみると中部圏が高かったのですが、さずが第1位の三重県、第3位の愛知県、そして第6位の岐阜県と上位が揃っています。

毎月分配型投資信託に投資している人の比率の高い県は、大分県31.1%、滋賀県26.6%、岩手県26.2%、島根県25.7%、新潟県25.4%。

関西圏で多かった毎月分配型投資信託ですが、県別にみると大阪府は第20位、京都31位、兵庫県39位といずれも低い位置です。

実は、3大都市圏でみると首都圏、中部圏が関西圏よりも低いというだけで、それ以外の県では3大都市圏よりも毎月分配型投資信託への投資嗜好が高いのです。

確定拠出年金加入者の多い県はNISA口座の開設も多い

NISA口座開設率の高い県は、徳島県20.2%、三重県19.9%、和歌山県18.8%、石川県18.3%、富山県17.9%。

NISA口座の開設率は、NISAの認知度の高い県とか、投資をしている人の比率の高い県で高くなる傾向は当然と言えます。しかし、それ以外には確定拠出年金の加入者が多い県で高くなる傾向があり、退職に向けて資金準備をしている比率にも影響しています。

また、お金の情報を新聞記事から得ていると回答する人の比率が高い県でもNISA口座開設率が高くなる傾向があります。

こうした投資に関する地域性は単純に括れるものではなさそうですが、例えば持ち家比率が高いとか、生活費が相対的に低いとかといった生活基盤を形作る要素が、間接的に投資のリスク許容度や嗜好性に影響を与えているかもしれません。一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。

※本連載は毎週木曜日に掲載します。