葛西敬之氏が死去 JR東海元会長 81歳 「国鉄改革3人組」
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晩年は、アメリカでリニア含む高速鉄道を走らせるため、精力的に活動していました。ワシントンにもJR東海の拠点を設け、ワシントンDC=ボルチモアのリニアとフロリダ州の高速鉄道の実現に向け、葛西氏が旗振り役として日本の高速鉄道を売り込んでいました。
このうち、フロリダ州の実地ボーリング調査を取材した経験があります。世界的に高速で安全な新幹線システムですが、アメリカへの輸出に向けては「衝突基準」がネックでした。日本では、車体を軽くして高速化をはかる一方で、安全システムで列車を制御し、事故が起こる前に防ぐ発想です。一方、アメリカは運転士の組合などが強固で、衝突した場合に人命が守れるかが根底にあり、まさに「鉄道文化」の違いがここにあらわれていました。
結果、アメリカでは車体を戦車に匹敵するほど硬く頑丈にすることが求められました。日米の鉄道交渉では、新幹線輸出にあたりこの「衝突基準」の違いが焦点となり、私は10年ほど前「報道特集」でこの点を当時の葛西会長に問いました。葛西氏は「衝突基準は、現行の新幹線システムでも対応できる。欧米でも理解が得られると考えている」と自信をのぞかせましたが、未だ実現には至っていません。
国鉄改革3人組の元JR東日本社長・松田昌士氏、元JR西日本社長・井手正敬氏も、晩年に少しだけ担当記者として接する機会を得ました。国鉄が海外にも拠点を持ち、鉄道を通じた世界戦略を描いた時代のひとりが、葛西氏でした。ある意味で一時代が終わった感があります。ゆっくりお休み下さい。あぁ‥残念です。2ヶ月ほど前、葛西会長が若手育成を目的に設立された勉強会での講師をご依頼いただいたのですが、何をおしても出席される方なのに突如ご欠席となり、心配していたところでした。
エネルギー政策におけるポピュリズムを強く懸念されていた、まさに「国士」という方でした。
ご冥福を心よりお祈り致します。