2022/5/30

【悩める新卒】キャリア形成は「サンドイッチ思考」で考えよ!

NewsPicks Inc. コミュニティチーム
 NewsPicksトピックスのオーナー同士が対談する「Owner meets Owner」。第1回目は、「GenZのたまり場」の糸井あかりさんと園田映美音さん、「人事から見える未来。成長する会社の人と組織の真実」の南和気さんの対談です。
きっかけは、糸井さんが執筆した「新卒のわたしが悩んでること」でした。当該投稿に、南さんが人事のプロとして「思わずコメントしてしまった」ということから、対談が実現。記事では書ききれなかった糸井さんの不安、コメントでは書ききれなかった南さんの視点をお楽しみください!
また、本対談を通じて、2人が感じた「楽屋トーク」もそれぞれのトピックスで展開しています。糸井さんの楽屋トークは「新卒の悩みが一瞬で消えました」、南さんの楽屋トークは「番外編:新卒・若手社員は『何がしたいのか』考えなくてOK 。人事が答えるキャリアの作り方」でお楽しみいただけます。合わせてお楽しみください。

「憧れのあの人」がいなくなったらどうする?

糸井 インターンがとっても楽しく、入社後も楽しみしかなかったのですが、入社して「中期的な目標設定」などと言われて、「なにやりたかったんだっけ」と改めて考えるとぼんやりしてしまい、不安になってます。
 そういう風に思うのが普通ですよね。「この会社に絶対入らなくてはいけない」などという人はむしろ少ないですよ。一方で、企業全体でインターンも増えて、大学生が会社を知る機会は増えているので、色々な人と触れ合って「この会社で働きたい」というより「この人と働きたい」という理由で入社する人も多いですよね。
糸井 私自身も「この人みたいになりたい」「この人と一緒に働いたらわくわくしそう」という理由が大きかった気がします。
 最後は、やはり会社といっても、学生からはそこまで大きな違いは見えないので、人で選ぶというのはあり得る選択肢ですよね。でも、糸井さんが、今その人と一緒に働けているということ自体は、かなりラッキーな状況。多くの人はそれさえできないのが現実です。何百人、何千人の社員がいる会社に入ったとき、「憧れのあの人」が自分の部署にいないことの方が多い。そうなると、完全に「迷子」になりますよね。たとえ、糸井さんのように一緒に働けたとしても、その人と永遠に一緒だなんて分からない。その人が、明日会社を辞めることだってありうるのですから。
糸井 自分の軸がないと...ですよね。
 「この仕事で入った」という専門職や研究職ならいいですけど、自分は何がやりたいんだろう、と気付いちゃうんですよね。
糸井 はい...。「何をやりたい?」と聞かれて、自分って何に興味あるんだろう、何を伝えたかったんだっけ、ということを考え、また悩みのドツボに...。
自分のキャリアに悩み、虚空を見つめる糸井さん

まず「できそう」と思えるものに取り組む

 何をやりたいか聞かれるのは、良い面も難しい面もありますね。日本の大きな会社だと聞かれないことも多いです。新卒の場合、「仕事を選ぶ」というより「会社を選ぶ」意識が強いので、会社に入ったらあとは目の前に降ってくる仕事をがむしゃらにやっているうちに、向き不向き、好き嫌いがだんだんと分かってくる。この場合、自分の特徴が分かるのに時間がかかります。ニューズピックスのようなスタートアップの場合、一人ひとりが「仕事のプロ」として見られるので、何をやりたいか聞かれるのだと思います。若いうちからキャリアについて意識することで早く成長できると思いますが、大変だなと思うのは、そもそも糸井さんの先輩は別の大手メディア企業ですでに鍛えられて今があるのに、いきなり新卒に聞かれても戸惑ってしまう、ということですよね。
糸井 とりあえず、インターン時代に取材していた楽しかった、フードテックやZ世代の行動動向をカバーしてみたい、と思っていて、先輩たちも「やってごらん」と言ってくれているんですけど、正しいのかどうか...。
 正解が分からないですよね。自分で決めると。でも、それでいいと思いますよ。最初はまず興味があって、ガッツで頑張れると思えるものに取り組む。こういうとすごく昭和的に聞こえるかもしれないのですが、意外にすごく大事だと思います。まずは「これなら一生懸命やれる」というもの。そして、その次にすごく大事なのが、「決めたら徹底的にやる」です。僕も、最初は何も特徴のないただの新卒社員でしたし、なんならエンジニアとして会社に入っています。でも、エンジニアとして入ったからには、まずは徹底的にやり抜こうと決めました。
糸井 南さんも「ただの新卒」...。信じがたいです...。
 糸井さん。突然ですけど、キャリアは、サブウェイなんです。
糸井 え...。え...??突然すぎませんか??地下鉄ってことですか?それとも、あのパンを選んで、ハムとか、レタスとか、入れていくお店ですか...?もう少し説明してもらってよいですか?
「サブウェイです」(キリッ)の南さん
 サンドイッチの方ですね。よいキャリアを築くというのは、「食べ合わせがいいサンドイッチをつくる」ということなのだと思っています。
糸井 分かったようで、分からないような...。もう少し詳しく聞かせてもらえますか....。
 サンドイッチの定番は、ハムとレタスですよね。例えば、アボカドシュリンプって、10年前はあまりなかった。でも、食べ合わせがいいので、今は多くの人が好きですよね。時代によって、食べ合わせの良さやトレンドも多少変わってくるのですが、多くの人にとって食べ合わせの良い形で具材が組み合わさっていると、食べてもらえるチャンスが増えます。たとえば「鯖キムチコーン」ってどうですか?
糸井 すいません、ちょっと食べたくないです...。
 そうですよね。でも、もしかしたらどこかではやっているかもしれないし、場合によってはこれから流行するものもあるかもしれないですよね。食べ合わせがいいか悪いかというのは、自分ではなく他人が決めるものです。「おいしい!これがほしい!」と思うのは他人なのです。その「食べ合わせ」のニーズがあれば、色々な人が必要としてくれます。僕は、人事領域や人材開発、グローバル企業、国内大手企業の役員経験、とかいくつか素材となる経験がありますが、今は独立して、また違う視点の経験を組み合わせることで、ニューズピックスさんとのご縁があるなど、新しい出会いが生まれています。
糸井 食べ合わせをよくするにはどうしたらいいんですか?そして、そのサンドイッチを完成させるのは、何歳くらいなのでしょうか?
 繰り返しですが、まず糸井さんのタイミングだと、今、目の前のことや少し興味のあることを徹底的にやり尽くすことです。だって、最初はみんな「パンだけ」の状態なんです。パンだけの状態では、食べる人は好きか嫌いかも、何も判断できない。まずは何かのせてみる。例えば、エビをのせるイメージ。でも、ただのエビだとほかにもいっぱいありますよね。だから、他の人がおいしいって思ってくれるように工夫してエビの質を上げていくことが大事です。次に何をのせるべきかは、よいエビがのっていれば、必ず見えてきます。今は見えなくても。
糸井 私にとっての「エビ」は何になるのでしょうか...。「エビ」が頭に浮かびすぎて、若干混乱しています...。
 例えば、その「エビ」は、記者であればさっき言っていた、フードテックやGenZといった領域でもいいと思うし、執筆能力や取材力、みたいな特性でもいいと思いますよ。まずは、見えている世界でとことん突き抜ける。

一つひとつ真剣に積み上げることが大切

糸井 まずエビを積んでみたのに、「エビじゃなかったー!」となってしまったら、どうしたらよいのでしょうか。
 ちょっとずらせばいい。例えば、記者で、フードテック取材して、スタートアップにいた、というのが糸井さんの特徴になったとします。そうなったら、どれかは生かす、と考える。取材領域が違うなと思ったなら、フードテックをエドテックに変える、とかでもいい。職種を変えるなら、フードテックを生かして、メディアの記者ではなくて、コンサルティングに行く、とか。ここは若いうちならかなり柔軟にできるので、大事なことは、今の自分の特徴をしっかりつくること、そのために、特徴といえるほどある程度しっかりやっておくこと。特徴を作るのが、今やることのすべてだと思います。とにかくまずは「エビ」をのせることに集中するのです。
糸井 エビに集中...ですね!!!
 そのあとで少しずらして積み重ねていけば、食べ合わせのよいキャリアがちゃんとできあがります。
糸井 南さんのキャリアも、サブウェイでしたか?
 まさにそうですよ。僕の場合、実は最初のキャリアはエンジニアでした。そのあと、マーケティングだったのですが、マーケティングの中で、技術の知識が生きるんですね。プロダクトを隅々まで知っているので。それは、その次のキャリアとなったコンサルタントにもダイレクトに活きました。
人事になったときは、エンジニア、マーケティング、コンサルタントを経験している状態だったのですが、人事は、文字通り「人のこと」をやります。会社の中で人のことを理解するには、それぞれの仕事が分かっているのがベスト。直近では、人事という職種を生かして、「外資、IT」といった業界から、「国内大手、食品」に業界をずらすことで、新たな経験を得ました。
ちなみに、どの仕事も、自分で希望したり手を挙げたりといったことはなくて、それまで一つひとつ真剣に積み上げたことで、次のチャンスが巡ってきた感じです。その結果、人事という仕事に出会って、サンドイッチの形がそれなりに見えてきたのが、32、3歳でした。
糸井 なるほど。そんな風にキャリアって積み上げていくのですね。地図なしに突っ込もうとしていましたが、サンドイッチの話でかなり分かりやすく自分のキャリアをイメージできましたし、これからやっていくことに自信が持てそうな気がしました。
「なんか、大丈夫な気がしてきた!」と最後は安心した顔になった糸井さん
園田 あのー...。興味すら見つけられない場合、どうしたらいいのでしょうか。
 ありますね。本当にゼロの場合。エビ以前に、まだパンすらないような状態ですね。その場合は、短絡的に聞こえるかもしれないですけど、会社や職種を選ぶときに、伸びている業界や会社にいってみる、というのでよいと思いますよ。会社の中であれば、勢いのある部署。そうすると、必然、チャレンジができるんですよ。ちゃんと売り上げと利益が立っているから。若い人にもチャンスが回ってくる。そういう度量や余裕があるはずです。僕自身は、文系だったけど、200社就職活動して、まずは「自分が何か勉強できる会社にいこう」とだけ決めていました。最後は、何で決めたかというと「ITは絶対伸びる」くらいのことで、外資系のソフトウエア会社に就職。あとは、「外資系」ってなんだろう、という純粋な興味があった。「系」というのもなんだか不思議ですよね。TOEICも300点だったし、ダブルクリックといわれて、左2回じゃなくて、右左をクリックしちゃう僕でしたが、ITも英語も必死で勉強しました。
園田 同じ状況に、震えています...。私も文系で、外資のIT企業に入社予定です。人事の人からは「絶対じゃないけど、入社前にPythonを勉強してきて欲しい」って言われているのですが...。
 絶対やっておいた方がいいですよ。「絶対じゃない」と人事担当が言うのは、「絶対」と捉えて頑張った方がいい。少なくともそこで差がつくかもしれない。ITに行くぞって決めたなら、一旦死ぬほど勉強した方がいい。あとで損はしない知識だし、そのあとのことはそのあと見えてきますから。
糸井さんと園田さんなどZ世代が中心となって発信するトピックスと、南さんが「人事の真実」を語るトピックスは、以下からお楽しみいただけます!