(ブルームバーグ): ANAホールディングス(HD)の芝田浩二社長は、政府に対して早期に訪日外国人観光客の受け入れを再開するよう改めて訴えた。

芝田社長は23日のブルームバーグのインタビューで、今月に実施される少人数の団体旅行での実証事業を踏まえ、政府が外国人観光客の入国について「徐々に」緩和していくことを期待していると語った。再開されれば、円安効果もあることから同社の旅客収入に大きく寄与するとの見方を示した。

海外では外国人旅行者の受け入れ再開の動きが広がっているが、日本はこれまで厳しい水際対策を続けてきた。政府は徐々に引き上げてきた入国者数の上限を来月に現在の1万人から2万人に引き上げるほか、一部の国・地域については入国時の検査と待機を求めないとの方針を示しており、「鎖国」との批判もあった方針には変化の兆しがみられる。

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政府が進める入国者数の上限引き上げなどの水際対策の緩和には世論調査では概ね支持が得られているが、観光業界はさらなる取り組みを求めている。ANAHDを含めた12の観光関連団体・企業は今月、日本はこのままでは「観光孤立国」になりかねないとして、観光目的の入国の早期再開などを求める要望書を国土交通省に提出した。

芝田社長によると、早期の再開がされず夏場の観光需要を逃すことになるのは「非常に痛い」という。「日本全体として大勢の観光旅客を一度に受け入れる土壌が今あるのかわからないところもあるので、そこは状況に応じてできるだけ早く観光も受け入れていただきたい」と続けた。

今月、20年ぶりに一時1ドル131円台まで進んだ円安は航空業界にとってプラスばかりではない。旅行コストが割高になるため日本人による海外旅行の需要が減る可能性があり、芝田社長も「実のところ心配している」という。その上で、「過度な円安はあまりわれわれには追い風にはならない。いま円安のスピードが速すぎる」と急激な動きに懸念を示した。

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