【3コマ解説】北欧2カ国のNATO入りはなぜ「歴史的」なのか
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「中立国」が成立するのは、その国が安全や平和を求めた結果というより、大国に挟まれた国で、大国間の妥協の結果として成立する場合が多いです。
たとえば、第2次世界大戦後、ソ連は日本に対して中立国化することを要求しました。米国とソ連に挟まれている日本に対して、ソ連の同盟国になるのは無理だとしても、それなら米国との同盟もやめろ、という要求でした。これが、中立国化、ということであり、ロシアも現在に至るまで、日本から米軍基地がなくなるべきである、という主張を、様々なルートを通して広めようとしてきています。
フィンランドが中立国になったのも第2次世界大戦の結果で、ソ連からの要求でした。ソ連の傘下に入ってワルシャワ条約機構に入るのは無理だとしても、それならNATOにも入るな、という要求で、中立国化しました。
スウェーデンの場合、中立政策は19世紀初めのナポレオン戦争の時からですが、やはりロシアと他の列強の間でバランスをとった結果です。
中立政策は、大国に挟まれた国が、大国間のにらみ合いを利用して、自ら緩衝国(buffer state)になることで生きのびる、という弱者の戦略です。大国間がにらみ合いにとどまらず、戦争を始めれば、侵略を受けます。中立国だったベルギーが、第1次世界大戦でも第2次世界大戦でもドイツに占領されたのが典型例です。
日本も、1950年代に中立国化していても、ソ連に侵攻を受ける可能性が高くなるだけだったでしょう。そのため、米国との軍事同盟を選択しました。
アジアだと、ラオスがベトナム戦争に巻き込まれるのを避けるために、1963年に中立国化を宣言しましたが、結局北ベトナムと米軍の双方に国土を利用されて戦場になりました。
現在のヨーロッパでは、ロシアとNATO諸国の関係がにらみ合いにとどまらない可能性があるので、中立化して生きのびる、という戦略が機能しなくなるおそれがあります。戦争になれば、中立国はむしろ真っ先に占領して軍事作戦の足場にされます。「もう、ロシアに怯え続けるのはごめんだ」
フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟申請にはそうした心の声が込められているように感じます。
あまりに強大で凶暴なソ連、ロシアという国を隣に抱える北欧の両国はこれまで、「中立」であることで自らの安全を守ろうとしてきました。ロシアと積極的に戦う意図がないと恭順の意を示すことで、厳しすぎる安保環境を生き延びようとしてきたわけです。しかし、それでは生殺与奪をプーチンに握られることになる。
今回の両国のNATO入りにはどんな歴史的背景があるのか。そしてすんなり加盟できるのか。こうした点を国際政治学者の鈴木一人教授の協力のもと、ビジュアル解説します。歴史的な背景が特に面白いので、ぜひご一読いただきたいです。