2022/5/17

【新教養】私たちのゲノムは、なぜ一人ひとり違うのか

東北大学大学院生命科学研究科 教授
今年4月、「ヒトゲノムの完全解読に成功」というニュースが流れたのをご存じだろうか。「ヒトゲノムはすでに解読されていたのでは?」と思った人もいるかもしれない。
ゲノム医療やゲノム創薬、ゲノム編集──。ゲノムにまつわる話題は多い。
ゲノム関連のバイオベンチャーの動きも注目される。研究機関だけでなく、遺伝子検査サービスの企業もヒトのゲノム配列情報を大量に集め、そのデータが様々な分野で活用・研究されている。
一方で、私たち一人ひとりのゲノムがどれだけ違っているのかや、そうした違い(多様性)が、ヒトの集団の中にどのように生じ、維持されているのかはあまり知られていないし、誤解も多い。
ヒトゲノムの多様性とはどのようなものなのか。それはなぜ生じているのか。
最新の知見に基づく解説を、東北大学大学院の河田雅圭教授の寄稿でお届けする。
INDEX
  • 一人ひとり異なる顔を持つ理由
  • ヒトゲノムの10%以上に違い
  • 他の生物と比べると?
  • なぜヒトのゲノムは多様なのか
  • 生存に有利な変異はわずか
  • 多様性が大事な本当の理由

一人ひとり異なる顔を持つ理由

「自分と似た顔の人は3人いる」と言われる。逆に言えば、人は基本的に、一人ひとり違う顔を持っているということだ。顔の違いのような身体的特徴だけでなく、性格などの精神的特性、病気のかかりやすさ、など様々な性質が個々に異なっている。