2022/4/13

【解説】なぜ企業は「キャッシュ」を重視すべきなのか?

NewsPicks 編集部 記者・編集者
民間旅客機の三菱スペースジェット(旧・MRJ)に大型客船事業──。この2つはいずれも、近年の三菱重工業が撤退した事業だ。
特に、スペースジェットについては1兆円規模の投資をしたにもかかわらず、納期を6度延期した末に、実質的に開発を凍結している。
大型客船事業についても、欧州向けのクルーズ船「アイーダ・プリマ」の納期を3度延期した末、どうにか完成にこぎつけたが、累計で2540億円の特別損失を計上し、事実上の撤退を表明した。
まさに、注力事業の失敗ともいえそうだが、実は、その裏側で、三菱重工業を全体としてみると財務状況はこの10年間で徐々に改善している。
一体、なぜこんなことが起きているのか。
その実態を紐解いていくと、2010年度以降、経営管理指標をPL(損益計算書)の売上高や利益から、「キャッシュフロー」に変更し、経営改革を推進した経緯がある。
なぜ三菱重工は、キャッシュを重視したのか。そして、いかに経営改革を進めていったのか──。
同社でCFO(最高財務責任者)や顧問などを務めた財務のエクスパートである小口正範氏(現・日本原子力研究開発機構理事長)に語ってもらった。
INDEX
  • ①「キャッシュ」があると、何がいい?
  • ②「評価軸」を変える
  • ③「金のなる木」の活用法
  • ④「リスク事業」に投資する

①「キャッシュ」があると、何がいい?

小口 そもそもなぜ、キャッシュに主眼を置いたのか。
長期安定的な企業価値の向上を実現するためには、キャッシュが必要だからです。