「資源高でデフレ」になるGDPデフレーターの罠
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CPIやPPIよりもGDPデフレーターを見た方が日本経済の実相に迫れるというのはエコノミストの間では過去10年頻繁に登場してきた論点ですが、今ほどその重要性が浮き上がる局面も珍しいと思います。「デフレの原因はインフレ」という副題の通り、日本経済低迷の背景に交易条件の慢性的な悪化があったことはある程度疑いようがありません。円安に対する評価がいつまでも変わらずに後生大事に抱えられてきたことも無関係とは言えないでしょう。
入り組んだテーマであるため、極力平易に書くことに努めました。もしご関心があればご一読頂けると嬉しいです。GDPデフレーターは政府が重視してきたデフレ脱却4指標のうちの一つですから、足元のように輸入インフレでCPI上がっても、GDPデフレーター大幅マイナスではデフレ脱却とは言えないわけですね。
中々興味深い論点。
「輸入財価格主導で交易条件が悪化し、日本人の所得が海外(資源国)へ流出することで人々の覚えるデフレ感が強まってきたという総括はさほど的外れではあるまい」
これに同意する(私もある程度している)人は、日本のマクロ政策ではどうしようもない要因もあることを認める必要がある。いわゆるデフレ脱却論は誇張。
実質賃金は、(賃金総額/労働)/物価=(分配率×名目GDP/労働)/物価=分配率×実質GDP/労働=分配率×労働生産性、のようにはなるが、交易条件は直接は関係しないように思う。理論値とあるので貿易論上の関係を援用してるのだろうけれど、そこには注意が必要だ。少なくともそうであれば、実際の実質賃金の動きかどうか疑われる(交易条件は関係しない)。
「「デフレ」感はそうした資源高による交易条件悪化に主導されてきたという歴史がある」
しかし、日本は内需中心の国であり、長きに亘る不況の間には円高やエネルギー価格低下局面もあった。そう考えると、妥当な主張もあるが極論であることは否めない。一般に、金融業界のアナリストは、常に人々の興味を惹きつけるのも仕事だろうから極端な議論が多い(極端な悲観論や楽観論、株年内に〇〇円まで上昇とか)。であるから「デフレの原因はインフレ」みたいなことを言うのだろう。そもそも「デフレ」は流行り言葉のようなものであり、それに囚われているのが間違いだと思う。確かに円安、資源価格上昇でこれまで並に海外の資源を利用しようとすれば、本質的には我々の持つリソース(資源)によって支払う必要がある。しかし、日本はこれまで蓄えた巨額の外貨を保有しているので、今すぐ内需のための資源を海外の支払いのために使う必要はなく、交易条件は成長鈍化という経済の停滞の主因にはなりそうもない(一因ではあるかもしれない)。経済学者にとっては真実、真理こそが重要であり、議論は至って地味だから、タイムリーな出来事でもない限り言動は注目はされないか。
追記:CPIがPPIやGDPデフレーターより動きが小さいのは、以前ポールクルーグマンがどこかで言っていたように、輸入品価格上昇によってそれらにより多く支出すれば、国産品への支出が減って結果国産品価格が下落する所得効果のためであり、それ程特殊な出来事ではないだろう。