寺口 浩大(Kodai Teraguchi)
株式会社ワンキャリア Evangelist
1988年3月生まれ。京都大学卒業後、三井住友銀行に入行。企業再生、M&A関連の業務に従事したのち、デロイトで人材育成支援に携わる。現在は、株式会社ワンキャリアでEvangelistとして活動中。「キャリアの地図」をつくるプロジェクトを推進。就活生のシゴト服における課題解決のため「シン・シゴト服ラボ」プロジェクトに参画中。
洋服の青山とNewsPicksユーザーとが、ビジネスにおける課題解決を目的に設立した共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」。商品開発や店舗活用のプロジェクトに続き、就活の装いを改めて見つめ直すプロジェクト「#きがえよう就活」に取り組んでいます
本記事では、このプロジェクト発足当時から携わる、株式会社ワンキャリアのEvangelistである寺口 浩大さんに取材。なぜ「#きがえよう就活」に携わるのか、お話を伺いました。

スーツってもともと、かっこいいものだったはず

ーー「シン・シゴト服ラボ」に参画された背景を教えてください。
きっかけは運営メンバーからの「新しいプロジェクトをやるので参加してほしい」というお誘いでした。当時はまだ決まっていないことも多かったですが、就活生が抱える服装の課題に取り組むと聞き、自分も何かアクションを起こしたいと思いました。ちょうど僕自身、ワンキャリアで「キャリアの地図」をつくるプロジェクトをユーザーと共創しながら進めていて、共創コミュニティに可能性を感じていました
また、リクルートスーツ自体に違和感を持っていたことも参加理由の一つです。もともとスーツ自体は大好きで、その背景には百貨店の紳士服売り場でフロアマネージャーをしていて、かっこよくスーツを着こなしていた祖父の影響があります。また、大学時代は社会人になったサークルの先輩がスーツを着こなし、楽しそうに仕事をしている姿を見て憧れていました。
そんな自分も就活の時期に差し掛かると、スーツを着るようになりました。派手な色が好きとか、何か特別なこだわりがあったわけではなく、気に入った質感の生地で体に合ったものを着ていたので、周りから見れば普通の就活生に見えていたと思います。それでも自分にとっては、自分で選んだ初めてのスーツでなんだか大人の仲間入りをしたような気持ちになって、それがうれしかったのを覚えています。
ところが、一人で街を歩いているときは、気分良く過ごせていたのに、合同説明会へ行くとテンションが下がる自分がいました。みんな同じような格好をしていて、客観的に見ると自分もその一員であることに、没個性的な感覚がしたのです。
何より、なんとも言えない気持ちになったのは明らかに「着させられている」人を見たときでした。サイズが合ってなかったり、ヨレヨレだったり、黒系のいかにも就活のための色味だったり...。自分自身の格好というよりは、周りの人の姿を見て「何でこんなことになるのかな」と思っていました。
決してスーツ自体が悪いわけではないはないですよね。スーツに限らずそれぞれが納得して自分の服を選んでいるならそれでいいです。ただ、「就活生だからこうあるべき」「周囲と同じにしておかないと」とあえて好みと違う服装を選んでいるとしたらもったいないなと思ったんです。
コミュニティ参画の決め手になったのは、スーツ業界においてリーディングカンパニーである「洋服の青山」自身がこのコミュニティを運営していたこと。これまでスーツの販売を行ってきた洋服の青山が、あえて自分たちの存在意義を問い直すような勇気あるアクションをとっていて、歴史的な取り組みになる予感がして、今一緒にやらなかったら後悔すると思いました。

「パイセンシップ」に欠ける社会人になっていないか

ーー実際、プロジェクトではどのようなことをされているのですか?
私自身の役割としては「#きがえよう就活」のプロジェクトメンバーとして定期的に企画会議に参加し、就活生と就活時の服装のより良いあり方の実現に向け、プロジェクトを前に進めることです。
企画するにはまずエンドユーザーの声を知ることが大事。実際の取り組みとして、例えば就活に関する課題の解像度を高めるため、就活生アンケート(3/10時点で元/現就活生 (18卒〜25卒):3204名、人事/採用担当:63名を対象)を実施しました。そもそも我々が持っている課題意識を、どれくらい学生や人事の人たちが感じているのかを見える化したいと思ったのです。それと同時に、これからアクションを共にする仲間を集めたいという意図もありました。
アンケート結果は予想以上に発見が多く、とくに就活生と人事の認識を並べて見た結果が興味深いですよね。例えば、就活時、「服装自由」「軽装」「私服可」等の服選びで困ったことがあるか、就活生が困っていると思うかという質問に対して、「困っている」という回答がどちらも多数を占めていました。
両者が同じ認識にも関わらず課題解決がされていない、ということは、それぞれの立場だけでは動かせない構造的な「何か」があるのだと思います。ただ、いくら高いハードルであっても、当事者がみんな困っているのに、ずっとそのままにしておくのは絶対におかしい
そもそも社会の大人たちは自分が通ってきた道なのに、就活生に対してどこか他人事になってしまっている気がします。もっと言えば、就職活動自体は連日いろんなメディアで取り上げられますが、世の中の大人たちにとってはある種の「高みの見物のエンタメ」になってしまっている感覚すらあります。
他人事さは言動に現れると思っていて、例えばSNSでつぶやかれる社会人から就活生に向けた「がんばれ」「お疲れ」といったメッセージには暗に「自分はもう終わったけどな」という気持ちが隠されている。僕が学生だったら表層的なキレイゴトには「うっせぇ」と思うし、そんな高みの見物の姿勢は就活生には一瞬でバレます
自分たちも何か違和感を感じたり、苦しんだりしたのに、通過したらすぐに忘れて高みの見物モードになるのはどこか人生の先輩としての”パイセンシップ”に欠ける気がします。カッコよくない。まさに今、過酷な現実に直面している就活生の気持ちに寄り添い、そこに負があるのなら、過去の自分のためにも、今だからできるアクションを起こすことが大事なのかなと思います。
一方で、認識のズレも浮き彫りになりました。「就活時の服装によって、企業側の評価が変わると思うか」という質問に対して、元/現就活生の大多数は変わると思っているけれど、 人事/採用担当の大多数は変わらないと答えています。
面接は本来、お互いが考えていることを開示しあう双方向のコミュニケーションの場なのに、どこか企業から就活生に向けた一方的なジャッジの場になってしまっているのではないか。その背景にあるのは採用のオープンさの欠如。就活生にとって、それぞれの企業のスタンスや社風が見えなくなっているという問題があるとあらためて感じました。
フェアとか対話とか口ではなんとでも言えるけど、「自由な服装できてください」の一言すら、信じてもらえていないのが企業の採用に対する学生の信頼の現状なんだと思います。

就活生の表情が変わる「シーン」をつくりたい

ーーこれから「#きがえよう就活」プロジェクトではどんな取り組みに挑戦するのでしょうか?
具体的な取り組み内容は、今まさに企画会議でコミュニティメンバーと一緒に詰めているところです。
いずれにしろ大事にしたいのは今まさに就活をしている学生の方との共創で、生の声を聞きながら取り組みの内容を一緒に組み立てることです。私は普段パブリック・リレーションズに関わる仕事をしていますが、経験上エンドユーザーを無視して作られた企画は無視されるか炎上するかのどちらかです。
ただでさえ就活生は年齢や志向で区切られ、広告やキャンペーンのターゲットにされやすいので、本当に自分たちを想ったアクションかを見抜く目を持っていると思っています。だからこそ彼ら彼女らにメッセージを届けたいブランドは、当事者からのヒアリングの機会をたくさん作って、生の声に向き合い続けなければならないと思っています。
個人的には、就活のシーンが変わる瞬間が見たいです。​​普段の仕事でも、仕事の醍醐味は顧客や社会が変わる「シーン」を見れることだと思っています。
例えば、ニュースで当たり前に使われるような真っ黒で浮かない顔の学生たちの表情の写真や映像。それが少しでもカラフルで笑顔のものになったり。そんなシーンを見たときにやってよかったと実感できると思うんです。そのためにやっているのかもしれません。変わるシーンは合同説明会かもしれないし、就活シーズンの電車の風景かもしれない。自分一人ではつくれない風景を、共創コミュニティでしかできないやり方でシン・シゴト服ラボメンバーと実現させていければと思います
就活生と企業との間にある溝を埋め、「就活の装い」をアップデートする。そのための挑戦は始まったばかりです。もし、志を同じくする方がいらっしゃれば、ぜひシン・シゴト服ラボに参画ください
コミュニティについて、さらに詳しく知りたい方はこちらへアクセスください。#きがえよう就活プロジェクトの発足の経緯や、コミュニティマネージャーの想いについてはこちら
編集:山尾 真実子(シン・シゴト服ラボ編集長・青山商事)
共同編集:種石 光(NewsPicks Creations)
執筆:熊井 亜希
カメラマン:工藤 朋子
デザイン:武田 英志(hooop)