【全図解】エネルギーという、もう一つの戦争
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開戦前の2月21日から3月7日だと、
石油(WTI): 30%
天然ガス(米国): 11%
石炭(米国): 80%
値上がりしています。
石炭の需要が際立ってひっ迫しています。これは、開戦前からのことで、中国やインドで石炭の需要が高まっていたのですが、とにかく電力を確保するためには、石炭の確保を必要とする国が増えています。ドイツですらそうです。
近代の歴史で、戦争に勝利することでエネルギー資源の獲得に成功した例はありません。第2次世界大戦に参戦する時の日本は、それらしいこともいっていましたが、別に石油は米国から禁輸されてもオランダ領インドネシア(当時オランダ本国はドイツの占領下)から買えばよかっただけのことです。あれは、中国から撤退せよという米国の要求がのめなかったから始めた戦争です。中国での戦争など、経済的利益にはならないので撤退した方が得だったのですが、戦争は国民経済の利益のためには始まりません。個別の企業で儲けるところはありますが。
エネルギー資源のための戦争、というのは実在しないのですが(普通に貿易した方がどう考えても得です)、戦争はエネルギー価格を高騰させます。それに乗って興隆した企業や国家もいくつもあります。
エネルギーの革命は、経済を大きく動かすので、その結果としての戦争は起こります。鉄道も蒸気船も、これらが無かったら起きなかった戦争、というのはあります。シベリア鉄道が無ければ、日露戦争は、歴史の通りには起こらなかったでしょう。
石油産業の興隆がイランなど中東諸国で急激なインフラを引き起こし、イラン革命や、それに続くイラン・イラク戦争が起きました。
今回のウクライナでの戦争も、中東などでの新たな戦乱に波及していきます。直接的には、小麦の高騰の影響が大きいと思いますが、世界的なインフレとスタグフレーションに耐えきれなくなる国は、中東やアフリカには複数あります。
エネルギー資源を奪うために戦争が起きる、というような単純なことはなくて、むしろエネルギー資源が経済を変えることで戦争が起きる、という方が多いですが、エネルギーと戦争の関係は、相互に複雑に作用しあい、世界各地の経済に津波のように波及していきます。ちょうど今週、世界最大級のエネルギー・カンファレンスが開かれています。
「ここで欧州勢は、どこかに潜在的なLNGの輸出企業が残っていないか必死で探し、交渉している」と、今回取材に協力してくれた石油ガス業界の権威、ダニエル・ヤーギン氏は言っています。
ロシアは常に石油ガスの輸出を「(政治ではなく)純粋にビジネスだ」と主張してきましたが、今回の戦争ではそれが変わり、明らかに政治性を帯びた戦略物質になっています。エネルギー自体に制裁は課されていません(現在は米国が単独で石油のみの輸入禁止を検討中)が、購買者がロシア産を避ける動きも顕著です。
改めて、こうやって歴史をたどってみると、100年以上前の戦争から、化石エネルギーが、戦況に影響する決定的な資源であり続けていることに、改めて衝撃を受けます。オイルショックと原発、再エネの隆盛も一度来た道とも。
ここから短・中期的には、欧州の「エネルギー安保」としてのガス確保、エネルギー自給のための再エネ強化、そして原発、などの各国の思惑がぶつかり合い、各国がそれぞれのエネルギー戦略を打ち出すでしょう。
そして、こうした石油ガス中心の「地政学」が変わるタイミングは、果たしていつ訪れるのでしょうか。エネルギー安全保障は日本にとっても極めて重要になる。再エネの比率を高めることなどできることを進めていかなければ、電力価格が上がり家計には大きなダメージに。
僕が支援している15〜25歳の若年層支援も、コロナによる緊急事態宣言やマン防などの影響で明らかに滞納や借金を抱える率が高まっており、家計負担を下げるためにできることを考えていく必要がある。原油価格の上昇は企業収益を圧迫し、雇用にも大きな影響を及ぼす可能性もあるだろう。エネルギー安全保障は市民生活を支える上で極めて重要なことになる。