2022/3/23
【3月23日更新】ゼレンスキー、日本の国会で演説
(3月23日 20:30更新)
主な更新はこちら
- ゼレンスキーが日本の国会で演説しました。英国や米国での演説に続き、日本では憲政史上初のオンライン国会演説となりました。
- ベラルーシがロシアを支援するため参戦する見込みだと、米CNNなどが報じています。
- ロシア軍が化学兵器部隊をウクライナ領内に投入したと伝えられ、警戒が広がっています。
- ウクライナ軍が首都近郊の要衝マカリウをロシア軍から奪還した、と米国国務省高官が明らかにしました。
- バイデンが本日ベルギーを訪問し、NATO首脳会議などに参加します。
NEED TO KNOW:ウクライナ
- ①時系列:これまでの要点
- ②各国の経済制裁・企業撤退
- ③ウクライナへの軍事支援・介入
- ④ロシアの行動の背景
- ⑤台湾への波及
①時系列:これまでの要点
3月22日(火):
- 西側諸国がG20からロシアを除外するかを検討中とロイターが報じる
3月21日(月):
3月20日(日):
3月18日(金):
- 米中が首脳協議。バイデンは習近平に対し、ロシアに軍事支援しないよう警告
3月17日(木):
- S&Pがロシアの長期ソブリン格付けを「CC」に引き下げ
3月16日(水):
3月15日(火):
- ロシア国防省がウクライナ南部のヘルソン州全域を掌握したと表明
- 東欧諸国の民主化などを支援した国際機関「欧州評議会」からロシアが脱退
- ポーランド、チェコ、スロベニア首脳がキエフ訪問。ポーランドがNATO平和維持部隊のウクライナ派遣を提案
3月14日(月):
- キエフ近郊で取材活動中だった米国人記者がロシア軍に狙撃され死亡
- 「アメリカがウクライナで生物兵器を開発」というロシアの主張に対し、中国外務省も同調
- 米サリバン大統領補佐官と中国の楊潔篪・共産党政治局員が会談。中国のロシア支援に懸念を表明
- ロシア政府系テレビ局のニュース番組で、女性ディレクターが反戦を訴えるプラカードを掲げる
- 4回目の停戦交渉を開始。ウクライナのポドリャク大統領顧問が交渉に進展があった旨ツイート
3月13日(日):
- プーチンがドイツのシュルツ首相、マクロン大統領と電話会談。停戦を求めるも、プーチンにはその意思が見られず
- ザポロジエ原発について、ロシアが自国の原子力企業の管理下に置いて接収したとウクライナがIAEAに報告。ロシア側は否定
3月12日(土):
- EUが2027年までにロシア産エネルギーの比率をゼロにする計画を発表
3月11日(金):
3月10日(木):
3月9日(水):
- チェルノブイリ原発で停電。すでに稼働停止しており、IAEAは「安全性へ致命的影響はない」との見解
3月8日(火):
3月7日(月):
- ウクライナ第2の都市ハリコフで、核物質を扱う研究施設が砲撃を受け、建物の表面や変電所に被害
- ロシアがシリアで兵士を募集していると米WSJが報道。シリアの戦闘員は市街戦の知識が豊富とされる
- アメリカが欧州と共同でロシア産原油の禁輸を検討。これを受け、原油価格が一時139ドルまで急騰
3月6日(日):
- ロシアがウクライナ東部の要衝マリウポリへの攻撃を継続。この地域では市民の避難ルート設置が決まっていたものの、安全が確保できないとして延期に
- ロシアとウクライナの停戦交渉は3月7日に3回目が行われる見通し
- イスラエル首相がプーチンと会談。イスラエルが停戦の仲介を申し出たと見られる
3月5日(土):
- ロシア軍がウクライナ南部のサポロジエ原発を攻撃し、制圧。IAEA(国際原子力機関)によると、主要設備に影響は出ず
- ロシア下院が軍に関する「偽情報」を取り締まる法案を可決。フェイスブック、TwitterなどのSNSと、外国メディアへのアクセスを遮断
- ロシア石油大手ルクオイルが「武力紛争の迅速な停止を求める」とする声明を発表。ロシアの主要企業が反対を表明したのは初と見られる
3月4日(金):
- ウクライナとロシアが2回目の停戦交渉。戦闘地域に住民の避難ルート設置で合意
- ウクライナ南部にある欧州最大級の原発がロシア軍の砲撃を受け、火災が発生
- 国際パラリンピック委員会はロシアとベラルーシの選手を北京パラから除外すると表明
3月3日(木):
3月2日(水):
- 米エクソンがロシア石油事業「サハリン1」から撤退。仏トタルは事業を継続する一方、今後ロシアで新規投資は行わず
- 消費財の販売停止が広がる。ナイキ、アップル、フォード、BMWがロシアでの販売を停止
- 首都キエフのテレビ塔や第2の都市ハリコフの州庁舎、住宅街がミサイル攻撃を受け、ゼレンスキーは停戦交渉の継続条件として「爆撃を停止せよ」と発言
3月1日(火):
2月28日(月):
- ベラルーシはロシア軍を支援すべくウクライナ派兵を決定。また、ロシアの核兵器を国内配備できるよう憲法を改正
- ロシア中銀は政策金利を9.5%→20%へ引き上げると発表
- 英石油大手BPは、ロシアの石油大手ロスネフチの全株式売却を発表。事実上のロシア撤退
2月27日(日):
- プーチンは西側による制裁を受けて、核戦力を含む核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くよう軍司令部に命じる
2月24日(木):
- プーチンは国内向けの演説で、軍事作戦の実行を表明。その目的は「ウクライナの非軍事化と非ナチス化」だと述べ、直後に軍事侵攻を開始
2月22日(火):
- 事態が急展開。ロシアのプーチンが、一方的にウクライナ東部の地域を独立国家として承認(国際法違反)
②各国の経済制裁・企業撤退
ウクライナ侵攻を受けて、西側の主要各国は、すぐさま対ロシア経済制裁に踏み切っています。
🌏西側諸国
- アメリカ、EU、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、カナダ、日本は、国際決済システム「SWIFT」からロシアの複数の銀行を切り離すと発表。ロシアの貿易に大きな影響が出る見込み
- G7はロシアの最恵国待遇を取り消し。IMFや世銀からの融資も阻止する
🇺🇸アメリカ
- ロシア政府系で国内最大の銀行ズベルバンクと、2位のVTBバンクなど5つの金融機関のドル建て取り引きを制限。アメリカ国内の資産も凍結。これはロシアの銀行資産の80%にあたる
- アメリカ企業が製造する半導体やセンサーなどのロシアへの輸出禁止
- カナダやEUと連携してプーチンの資産を凍結
- 米領空のロシア機の使用を禁止
- ロシア産原油を禁輸。魚介類、ウォッカ、ダイヤモンドの輸入も禁止
🇬🇧イギリス
- ロシアの全銀行の資産を凍結予定。国内2位VTBバンクは即時凍結
- プーチン政権と結び付きが強い100以上の企業やオリガルヒ(新興財閥の富豪)の資産を凍結
- 年末までロシア産原油の輸入を停止
🇩🇪ドイツ
- ロシアードイツ間の新たな天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認手続きを停止
🇪🇺EU
- プーチンやラブロフ外相など、856人の資産を凍結
- ロシア産鉄鋼製品の輸入停止
🇯🇵日本
- ウクライナ東部の親ロシア派関係者の資産凍結やビザ発給停止
- ロシア国債の日本での発行・流通の停止。ロシア中銀との取引を制限
🇨🇭スイス
- プーチンやロシアの資産家、国会議員などの資産を凍結
- 永世中立国のスイスが本格的な制裁を発動するのは極めて異例
🇹🇼台湾
- 世界の民主国家と連携し、制裁を発動すると発表。先端半導体の輸出を制限すると見られる
なお、制裁を行う主体としては国連安全保障理事会(安保理)もあります。
しかし安保理は常任理事国の全会一致でなければ決議はできず、ロシアが常任理事国の一員のため、国連による制裁は期待できません。
ロシア国内から撤退したり、サービスを停止する企業も増えています。
⛽️エネルギー
- BP:ロシア石油大手ロスネフチの株式をすべて売却。事実上の撤退
- シェル:LNG開発事業「サハリン2」を含む、ロシアの全事業から撤退
- エクソン:LNG開発事業「サハリン1」から撤退
📱アプリ、サービス
- ネットフリックス:全サービスを停止
- スポティファイ:ロシアオフィスを無期限閉鎖
- アップル:すべての製品の販売を停止。Appストアからロシア政府系メディアを削除
- グーグル:オンライン広告販売を停止。YouTubeのロシア政府系メディアの動画を視聴停止に
- バイトダンス:TikTokの利用を停止
🧥消費財
- イケア:ロシアとベラルーシの輸出入を停止。店舗も一時的に閉鎖
- ナイキ:全店舗を閉鎖し、自社サイトからの販売も停止
- H&M:すべての製品の販売を停止
- フォード:ロシアでの生産や輸出を停止
- フォルクスワーゲン:販売店への出荷を停止
💳決済
- ビザ:ロシアで全事業を停止
- アメリカン・エキスプレス:ロシアとベラルーシで全事業を停止
- マスターカード:ロシアで全事業を停止
- JCB:ロシアでの決済取引を中止
🍔飲食
- マクドナルド:全店舗を一時的に閉鎖。給与支払いは継続
- スターバックス:全店舗を一時的に閉鎖
③ウクライナへの軍事支援・介入
ウクライナへの軍事支援の動きも広がっています。国是を破って方針転換した国も含め、これまでに支援表明した国は20カ国以上です。
🇺🇸アメリカ
- 対戦車ミサイル「ジャベリン」などを提供
- 追加で約400億円分の軍事支援を決定
🇫🇮フィンランド
- ライフル2500丁、対戦車兵器1500基などを供与
- 紛争国へ武器供与しないという方針を転換。首相は「歴史的な決断」と発言
🇸🇪スウェーデン
- 対戦車砲5000門やヘルメット5000個、防弾ベスト5000着などを供与
- 紛争国へ武器供与しないという方針を転換
🇩🇪ドイツ
- 1000基の対戦車兵器や500基の地対空兵器を供与
- ドイツは当初、装備品提供を拒んでいたが、政策を転換した
🇪🇺EU
🇯🇵日本
- 自衛隊の防弾チョッキやヘルメットを無償供与すると決定
- 武力攻撃を受けている国への装備品の提供は異例
一方、西側が自ら軍事介入する見込みはありません。
欧州の西側諸国やアメリカが加盟するNATO(北大西洋条約機構)は、ロシアの侵攻直後に開いた会見で、「ウクライナに部隊を派遣する計画はない」と明らかにしました。
ちなみにアメリカは、2021年12月の時点でバイデン大統領が米軍派遣は「検討しない」と表明しており、その後も姿勢を変えていません。
その理由は以下の3つに集約されます。
- ウクライナと同盟関係ではないこと。守る義務がなく、介入には消極的です。
- 国民世論。アフガニスタンやイラク戦争の長期化で厭戦ムードが強く、世論調査よると軍事介入には過半数が反対しています。
- ロシアが核保有国である点。大国ロシアとの戦争は、文字通り「第3次世界大戦」を招きかねません。
④ロシアの行動の背景
そもそもロシアは、なぜウクライナに侵攻したのか。最大の狙いの1つは、ウクライナのNATO非加盟と見られます。
NATOは冷戦下の1949年にできた、西側の安全保障同盟です。アメリカやイギリスといった西側諸国の国々が力を結集して、ソ連と戦うために設立した背景があります。
これに対し、ソ連側も1955年、ワルシャワ条約機構という軍事同盟を結成して、「東のソ連」という形で睨み合いを続けてきました。
しかしその後、ソ連は崩壊します。かつてワルシャワ条約機構やソ連の一部だった国々はロシアと距離を取るようになり、次々とNATOに加盟していきました。
ロシアは、現在もNATOに対する警戒感を強く持っています。
そうした中、旧ソ連の中でもロシアに最も近い巨大国家ウクライナが「将来的にNATOに加盟したい」と明言。プーチンとしては、何が何でも阻止したいのだと見られます。
背景には、プーチンの新しい世界秩序観がありそうです。
今回の侵攻は、ウクライナの現状変更にとどまらず、戦後秩序の終わりを印象付けています。アメリカの抑止が効かなかったからです。
⑤台湾への波及
事態の裏で、中国による侵攻に警戒を強めているのが台湾です。
習近平・国家主席は、かねがね台湾統一を「果たさなければいけない」と発言しています。今回のアメリカの出方次第では、仮に台湾に武力行使をしてもアメリカは介入しない、と中国は考える恐れがあります。
万が一、台湾有事が起きれば、日本が巻き込まれる事態は免れません。
編集:NewsPicks編集部取材班
デザイン:九喜洋介
デザイン:九喜洋介