肺がんを治す放射線の「ピンポイント照射」 手術と同等の成績を示す研究結果が明らかに
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高いレベルの取材に基づいて書かれた質の高い記事です。私が知る限りの範囲において記事の内容は極めて正確です。内容については記事をお読みいただきたく思います。
ここでは、関連情報を付け加えます。
(1) 治療法の優劣が言えない背景について
肺がん治療がよいか、手術がよいか、薬物での治療がよいか、あるいはそれらの組み合わせればよいかについては、記事にあるように検証することが難しいと思います。無作為に割り付けた試験をしなかった場合には、意図的な結果を出す可能性受け入れることになり、検証の基準を満たせません。また治療法が違いますので、どの治療が行われたかわからないように臨床試験を行う「盲検比較」はできませんが、この点についてがん治療の場合は、結果はがんマーカーや死亡率など明確な指標がありますので「盲検比較」でなくても、相当な正確性は保証されると思います。
(2) 「治療法に関する」推奨の質について
しっかりした病院では、医療機関でかかわるチーム(外科、内科、放射線科など)で、適切な治療方針を検討することが多いと思います。仮に手術だけでしか治療ができない医師に放射線治療の効果を聞いても、手術に関する知識よりも低いために正確な回答をもらえないか、自分に経験がある手術を勧める可能性もあります。このような場合は、他の医療機関にセカンドオピニオンを求めるのもよいかもしれません。ただ、ややこしいのですが、そのセカンドオピニオン外来を標榜するところが医学的根拠が薄い代替医療(免疫を活性化しますなど)を勧めてくる事例が報告されています。その場合、よくない方向に行くことがあるため、気を付ける必要があると思います。
(3) 肺がん治療の技術向上について
ピンポイントに照射する技術が進んでいますが、肺がんのみならず肝臓など他のがんでの放射線療法のイノベーションとして期待されています。手術療法は「切る」ことから切られた病巣部分以外にダメージが及ぶことは想像できますが、放射線療法で不適切な部位に放射線が当たった場合は、造血機能などに大きな影響を及ぼすことがあり、副作用の点でも一概にどちらが良いとは言えません。これを考えて医師は治療にあたっています。一般にピンポイントでの放射線照射技術の向上は広く治療効果の向上に貢献する可能性があると思います。手術のできない head and neck 領域のガン治療で行われていた技術ですねぇ 一時期大学病院の先生と一緒に研究してました 簡単に言うと、ガンの3次元形状をct画像からつくって、それを放射線照射方向に投影した形の穴を開けた板 (穴の形は変えられます)を通してビームを色んな方向からあてるんですねぇ
それだけなら簡単な図形問題なのですが、実際には3次元ではなく、組織内の放射線吸収特性も考慮した多次元データを投影しますので、最終的にガン全体に充分な放射線が行き渡りつつ、周辺被爆を最小にするように、放射方向、強度、治療回数を決める逆問題を解くのはは面白い最適スケジューリング問題でしたねぇ
治療を続けると、ガンの形が変わる (小さくなる)ので、毎回取る簡易ctのデータ (ノイズ多い)に基づいてノイズ考慮のロバスト修正計画を再計算したりするのも面白かったですねぇ
ただ計画部分はほぼ線形問題なので (今はよい商用ソフトがあります)、結局は画像認識 (セグメンテーション)が肝心、ということになって、学生さんの博士論文はphysics-informed deformable registrarion の話に落ち着きましたねぇ 学生さんの書いたコードを、有名なオープンソース医療画像認識ライブラリーのdistributionに入れて頂いたのもオマケでした もう十年以上前になりますねぇ 今はみんなAIさんがやるんでしょうねぇ肺がんを治す放射線の「ピンポイント照射」が、手術と同等の成績を示す研究結果が明らかになったとのことです。
「からだにメスを入れない「放射線治療」は、高齢や持病があるなど手術が受けられない場合の二番手の治療に位置付けられてきた」