(ブルームバーグ): 日立製作所が検討している日立物流の株式売却で、米KKRやブラックストーン・グループなど海外のプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドが買い手候補に残っていることが9日までに分かった。次の入札は今後数週間のうちに実施される予定という。

複数の関係者が匿名を条件に語ったところによると、ほかに米ベイン・キャピタルと香港のベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)も次の段階に進んだ。

日立は日立物流株の約40%を保有する筆頭株主で、売却を含めた複数の選択肢を検討していた。関係者らによると売却プロセスは流動的で、買い手の日立物流全株式取得による非上場化に発展する可能性もある。一方で、日立物流の株価は過去1年で約6割も上昇しており、価格が折り合わない可能性もあるという。同社の8日終値での時価総額は約4500億円。

報道を受けた9日の株式市場で日立物流の株価は一時7.9%高の5770円と急騰し、昨年12月10日以来約2カ月ぶりの日中上昇率を記録した。

日立はリーマン・ショック後の2009年3月期に7873億円もの純損失を計上したことを契機に、構造改革に着手。同社のIoT(モノのインターネット化)基盤「ルマーダ」との親和性を軸に事業領域の選択と集中を進めてきた。

スイスABBの送配電事業(約7140億円)や米システム開発会社グローバルロジック(約9180億円)など大型買収を行う一方で、日立化成、日立金属などの売却を次々と決定。東原敏昭会長兼最高経営責任者(CEO)は今年1月、ブルームバーグとのインタビューで日立物流について「株を持つ必要があるかというと、ない」と述べ、早期の売却意向を示していた。

日立物流は製造業や小売業などの物流部門を受託するサード・パーティ・ロジスティクス(3PL)を主力とする物流企業で、21年3月期の純利益は前期比5.8%増の229億円だった。今年4月1日付で中谷康夫社長が会長兼CEOに就き、高木宏明常務が社長に昇格する。

日立物流株の売却について日立の広報担当者は「個別案件についてはコメントを控える」と述べた。KKRやブラックストーン、ベイン、BPEAの各広報担当者もコメントを控えた。

(第5、6、7段落などに背景を加筆し更新します)

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