FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる
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寄稿させて頂きました。アトランタ連銀GDP NOWはQ1の実質成長率を概ねゼロ%と推計しました。Q4の高成長を支えたのはほぼ在庫投資でしたから、Q1以降、その反動は覚悟が必要です(もっと言えばQ3でも在庫投資でしたので)。瞬間風速ではありますが、テーパリング完了と利上げ着手がゼロ成長下で実施されることになります。また、NYFEDはブログで金融政策では供給制約に起因するインフレ高進を抑制できない可能性を指摘しました。
こうした当局からの情報発信や最近の高官発言を見ていると、「夜明け前が一番暗い」を体現したのが1月で徐々に態度が軟化しているようにも感じます。
もっとも昨日のADPでも露呈したように、人手不足による賃金インフレという最も厄介な問題は悪化しており、引き締めで意見集約する姿勢は変わりようがないとも思います。しかし、毎会合で25bpsといった観測はやはり過剰であり修正されるものと予想します。昨年の秋口まで、2022年中の利上げはゼロ回かあっても1回と見られていたものが、インフレ率の高止まりと賃金の上昇を受けて今では少なくとも3回、中には最大7回の利上げを見込む向きさえあるようです。平均的には4回1.0パーセントの利上げといったところでしょうか。
供給制約によるインフレの昂進は一時的で、失業給付の上乗せが終わる昨年9月には労働力不足も解消するというのが昨秋までのFRBの大勢だったわけですが、高インフレが今なお継続し、景気に遅れて動く賃金の上昇圧力が強まっている以上、程度の差こそあれ予想が外れて対応が後手に回ったことは間違いなさそうに感じます。そうである以上、早期にテーパリングを終えて引き締めに転じる必要があることに異を唱える向きは少ないでしょうが、「金融政策の効果が半年~1年程度のラグを伴って表れる」ことをどう扱うかが厄介です。
引き締めを躊躇してインフレ退治に失敗すれば、インフレの昂進が賃金水準を引き上げそれが更なるインフレ昂進を招く悪循環に陥る可能性があり、それを怖れる向きは、出遅れを取り戻すに十分な金利引き上げと資産縮小を進めるべしと主張します。その一方、CPIの上昇は7%に達しているが個人の消費選択の動向を織り込んだPCEは5%程度しか上がっておらず、米国の景気は必ずしも強くないと見る向きは、オーバーキルを招かぬよう、先ずは3回程度利上げして効果が浸透するまで様子を見るべしと主張することになるのでしょう。
物価と雇用の両面に責任を負うFRBですが、“長期停滞”と言われる状況が長く続き、基本的には金融緩和で物価を引き上げて雇用を増やせば政策目標が達成できる状況でした。ところが今では状況が一転し、労働参加率が上がらずコロナ禍で経済が痛んだ中でインフレが昂進する難しい状況です。唐鎌氏はタカ派に振れ過ぎたFRBが秋口にはハト派方向に揺れ戻る、つまり利上げは3回程度でその後は様子見になると見ていらっしゃるということでしょうか・・・ いずれにしても難しい局面です。果たしてFRBはどんな舵取りを見せるのか。(@@。