精子取引トラブルで訴訟「京大卒独身日本人と信じたのに…経歴全部ウソ」精子提供者を女性が提訴 全国初か
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難しい裁判。
女性は、「自らの子の父親となるべき男性を選択する自己決定権が侵害された」と訴えているようだが、そもそもそのような自己決定権が法律の保護に値するのかどうかも甚だ怪しい。
法的な観点で簡単に「精子提供のあるべき論」を整理してみます。
①夫の同意を要件とすべき
→日本では2020年12月、「夫の同意のもと、第三者の精子を使った生殖補助医療で妻が妊娠・出産した場合、夫はその子どもの父親であることを否認できない」と定めた民法の特例法が成立しました。つまり、精子提供で生まれた子どもは、原則として、婚姻関係にある父親の子どもであるルールが明確になっています。したがって、生まれてくる子供を夫婦が育てていくためにも、精子提供を受ける際には事前に夫の同意があることを要件とすべきです、
②子の「出自を知る権利」を保護すべく精子提供者の情報は第三者機関による認証や本人確認等を経るべき
→国際的に問われ始めている「出自を知る権利」を保護するため、精子提供者の情報は精子バンク等の第三者機関によって正確な本人確認をもって認証させ、かつ長期間保存させるべきです(子がいつでも権利行使できるよう)。
③精子提供者の感染症検査を定期的に実施
→海外の精子バンクはすでに実施していますが、精子提供者がHIVや肝炎に罹患していないよう、感染症検査を定期的に行うべきです。
④精子提供者の要配慮個人情報による精子の選択はできないようにすべき
→人種やIQ、前科前歴など、精子提供者の個人情報は②③の段階で第三者機関が多数保有することになります。しかし、それは将来的な子の「出自を知る権利」の対象になるとともに、最低限の健康状態が担保されることを保証するためだけであり、生命を選別するためにあるわけではありません。したがって、受領者側がこれらを選択することはできないようにすべきです。
子どもが欲しくても作れない方々、あるいはLGBTQのパートナー同士で子どもを欲する方々に、愛すべき子を産み育てることができるような社会とすべきことは事実です。しかし、それは生まれてくる子どもの人権までをも配慮した適切な環境整備を前提としたものであって、その構築を急がねばなりません。是非こういう記事にコメントする際には、そのバックグラウンドや当事者の気持ちを考えて頂きたいものです。
無論、経歴詐称などは問題ですが、女性側は制度・現実で多数の苦悩を抱えています。
現在、非配偶者間の精子提供については、AID(非配偶者間人工授精)という形で不妊治療として行われる事はありますが、それにより出生した子の出自を知る権利の裁判以降、大きく減少傾向にあり、大学病院でも新規受付を停止しています。
つまり、夫の精子での妊娠が難しい人など、諸々の原因で夫婦間のみで子供を得られない人が子供を得る手段は、特別養子縁組以外にないのです。
この件では夫の難病(遺伝性かは不明ですが)があり、現在AIDを行えないとなると、子供を得る手段は限られるのが実情です。
ただそこに、学歴や容姿をどうしても求めたくなる方も多く、今回のようなトラブルにつながることが考えられます。
妊娠後に現実を知った女性の感情も難しく、それを隠して養育し、虐待などにつながりかねないリスクを考えれば、児童福祉施設に預けたことも、一概に悪とはいえません。
また法規制も難しいところです。明らかに「精子提供」を謳う場合には規制されて然るべきですが、実際に行為が行われたとして、それが同意の上の性交渉なのか、精子提供目的なのかは究極的にはグレーで、この様な形態を取り締まるのは難しい(法規制を敷いたところで、闇で増える可能性が高い)という問題点もあります。
日本では技術に対し法規制が遅れがちな事は往々にしてあり、この件について、早急な取り組みが望まれます。SNSで知り合った男性から提供された精子で出産された女性が、男性が国籍や学歴を偽ったことで精神的苦痛を受けたとして3億3000万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴したとのこと。大変繊細なテーマでありながら個人間の精子取引も拡大していますが、こうしたトラブルが増える可能性は十分にありますし、規制整備の必要性を感じます。