(ブルームバーグ): 厚生労働省の専門部会は22日、エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム(一般名アデュカヌマブ)」の製造販売ついて、現時点で得られたデータでは有効性の明確な判断が不可能とし、同部会で再度審議することを決めた。

厚労省の薬事・食品衛生審議会の専門部会が同日夜に公表した資料によると、今後実施される臨床試験の成績などに基づき有効性や安全性を再検討し、その結果に応じて再度審議する必要があるとしている。

同部会では、承認申請の根拠となった2つの国際的な共同臨床試験の結果に一貫性がないほか、原因物質とされる「アミロイドβ(ベータ)」が脳内で低下しても、アルツハイマー病の臨床的な改善との関連が明確ではないことや、投与により脳の浮腫や出血がみられる点などが議論に上ったという。

厚労省医薬品審査管理課の担当者は、欧州のように承認拒否とはなっていないと述べ、薬剤としてのポテンシャルはあるとの意見は出ており、追加のデータ内容を見極め、再審議するとの結論に至ったと説明した。再審議の時期については、回答できないと話した。

アデュヘルムを巡っては欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)も17日、アミロイドβの減少とアルツハイマー病の臨床的改善との関連が証明されていないとし、販売の承認を見送った。両社はCHMPに対して再審議を求める方針だ。

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米FDAは承認

米食品医薬局(FDA)は6月に同治療薬を承認。しかし、効果を疑問視する医師の声や平均的な患者向けに設定された5万6000ドル(約636万円)という高額な年間費用が医療制度を圧迫するとの意見が相次いだ。

こうした状況を踏まえ、バイオジェンとエーザイは20日、価格を2万8200ドルまで約50%値下げすると発表。米欧に続く厚労省の判断に注目が集まっていた。

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アルツハイマー病の根本的な原因に作用する治療薬としてFDAの承認を得たのはアデュヘルムが初めて。しかし、FDAの迅速承認には、両社が今後もアデュヘルムの有効性を確定させるための追加の臨床試験実施が条件として付与されている。

アルツハイマー病の治療では2003年以降に承認された新薬がなく、従来の治療薬は一時的な症状の緩和に寄与しても、根本的な原因に対処するものではなかった。

厚労省によると、20年時点の65歳以上の認知症患者数は約600万人で、25年には高齢者の約5人に1人となる700万人まで増える見通し。認知症の原因疾患の68%がアルツハイマー病とされている。また、米ワシントン大学医学部健康指標評価研究所の試算では、世界の認知症患者数は50年に1億5280万人と19年推計値と比べ約3倍に増える見込みだ。

(情報の詳細を追記します)

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