2021/12/11

【転職】恋愛アプリから発想した「ビズリーチ」の超強気戦略

英日翻訳者・Webライター
NewsPicks編集部による番組『デューデリだん!』は、NewsPicksの記者たちが、注目の成長企業を取材し、経営トップにインタビューする過程を可視化する企画です。

今夜10時から取り上げる企業は「ビズリーチ」を運営するビジョナル。ハイクラス人材の転職支援で成長を続け、創業12年目の今年4月に、東証マザーズに上場したばかりです。前回のワンキャリアに続き、採用市場のキープレイヤーを徹底的に調べ尽くします。
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INDEX
  • 上場1年で時価総額4位
  • マッチングアプリに得た着想
  • 全方位で稼ぐ「ビズリーチ」
  • なぜもっと早く上場しなかったのか
  • リクルートを意識していますか?
  • ビジョナルが見据える世界線

上場1年で時価総額4位

2020年初頭からのコロナ禍は、人々の価値観を大きく変えました。
働き方もその一つです。
今年10月のマイナビの調査では、新型コロナ以前に比べて、転職活動を行った人が増えた一方で、転職に成功した人は減っているというデータもあります。
働き方にまつわる考え方の変化が、個人に転職という選択肢をもたらす一方で、経験者を求める企業側ではマッチングが難航していると読み取れます。
転職市場は、個人の考え方の変化がダイレクトに反映されるおもしろいマーケットです。
今回デューデリするビジョナルは、ハイクラス人材の転職支援サービス「ビズリーチ」を運営しています。
2009年の創業から12年目の今年4月、東証マザーズに上場。
上場したばかりですが、ビジョナルの時価総額は、すでにマザーズ全体の4位です。(2021年11月10日時点)
今回は、おなじみの泉秀一デスクと呉太淳(オウ・テスン)記者のコンビと、成長著しいインターン役の藤村聖子さん(本業は役者)の3人でビジョナルを徹底解剖します。

マッチングアプリに得た着想

ビジョナルを理解するには、メインサービスである「ビズリーチ」を理解しないと始まりません。
ビズリーチは2009年に、求職者に直接スカウトを届ける「ダイレクトリクルーティング」を強みに成長してきました。
ダイレクトリクルーティングとは、人材紹介会社やエージェントを通さずに企業が直接、採用したい人材にラブレターを出す仕組みです。
創業当初のビズリーチは、海外の「ラダーズ」という個人課金型の転職サイトをベンチマークしていました。
その「ラダーズ」は、婚活サイト「マッチドットコム」のビジネスモデルをベンチマークしたもので、ビズリーチにもそのエッセンスが詰め込まれています。

全方位で稼ぐ「ビズリーチ」

ビズリーチの特徴の一つに、稼ぐ手段の多さがあります。一般的な転職支援サービスに、お金を払うのは企業側です。
ビズリーチを利用する企業も、プラットフォーム利用料に加えて、採用にこぎつけた人材の転職後の年俸の15%を成功報酬として支払います。
これに加えて、ビズリーチは求職者にも課金を促すビジネスモデルです。
もちろん無料で利用することもできますが、プレミアムプランに月額課金すると、募集中の企業名がすべて閲覧できたり、閲覧できるスカウトメールの種類が増える仕組みです。
企業からだけでなく、求職者からもお金を受け取り、さらにヘッドハンターからも紹介手数料を受け取ります。
このように、全方位で稼げるビジネスモデルの設計こそが、ビズリーチが順調に成長を続ける理由の一つと言えます。

なぜもっと早く上場しなかったのか

続いて3人は、ビズリーチの財務面をリサーチしていきます。
2021年7月期の売上高は286億円、営業利益は23億円で、利益率は10%弱です。
ビジョナルが、まだ前身の株式会社ビズリーチだった2018年7月期から、すでに黒字だったことに、泉デスクが気づきます。
「なぜ、ビジョナルはもっと早く上場しなかったのだろう?」
その気になれば、3年前、4年前でも上場はできたはずです。
このあたりに、ビジョナルとして中長期戦略が見え隠れしている気もします。
今回インタビューする末藤梨紗子CFOに、まさに聞いてみたい疑問が見つかりました。

リクルートを意識していますか?

ビジョナルの圧倒的稼ぎ頭は「ビズリーチ」ですが、実は、ビズリーチ以外にも、多岐にわたるサービスを展開していることは、あまり知られていません。
ビズリーチと同じHRテック領域では、人材活用プラットフォーム「HRMOS」を運営しているほか、事業承継M&Aプラットフォームの「ビズリーチ・サクシード」や、物流DXプラットフォームの「TRABOX」なども手掛けています。
現在は、HRテックカンパニーの色合いが濃いものの、ポートフォリオを見ていると、今後はHR以外の領域への本格進出も視野に入れているようです。
ここで、泉デスクが疑問を呈します。
「ビジョナルは、リクルートのことを意識しているのだろうか?」
「ビズリーチ」をはじめとする、ビジョナルのプラットフォームの構造は、リクルートの「リボンモデル」に似ていると、泉デスクは指摘します。
消費者(カスタマー)と企業(クライアント)、双方のユーザーを「集めて」「動かして」「結ぶ」というリボンモデルを発明したリクルートは、HR領域を皮切りに、飲食や旅行、不動産など、様々な領域に事業を広げていきました。
確かに、ビジョナルがやろうとしていることは、リクルートがやってきたことと似ているように見えます。
リクルート流とは発想が違うのか、明確にベンチマークしているのか。
これもまた、末藤CFOにぜひ、聞いてみたい疑問です。

ビジョナルが見据える世界線

日本人離れしたスタイルで、長い髪をたなびかせて登場したビジョナルの末藤梨紗子CFO。
モルガン・スタンレー証券、GE、グラクソ・スミスクライン。
外資を渡り歩いてきた末藤CFOに、対峙する呉記者は、少なからず身構えていました。
しかし、インタビューが始まってみると、思いの外、和やかに進んでいきます。
「なぜ、上場のタイミングが今年だったのか?」
「ビジョナルの今後を考える上で、リクルートを意識することはあるか?」
準備してきた質問は、これだけではありません。
「日本の雇用流動性の向上と自社の成長のバランス感覚」
「ビジョナル自身の採用はうまくいっているのか」
終始、穏やかな雰囲気で進むインタビューですが、最後まで見ると、ビジョナルがこれからの10年、20年で、何をどう変えていこうとしているのかが見えてくるはずです。
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