(ブルームバーグ):

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が感染急拡大につながり「重大な結果」をもたらす恐れがあると警告した。オミクロンは感染力が強い兆候も見られる。

オミクロン株の存在を最初に特定した南アフリカ共和国の科学者らは、オミクロンの感染力が強いもようだと指摘。それでも既存のワクチンが重症化を防ぐ可能性は高いとしている。

WHOはオミクロン変異株のリスクは「極めて高い」との認識を示し、広範な検査を行うことを加盟各国に呼び掛けた。オミクロン株についての理解には数日から数週間かかるとも指摘していた。

ニューサウスウェールズ大学(シドニー)のライナ・マッキンタイア教授(バイオセキュリティー)は「オミクロン株に対するワクチンの有効性や感染した場合の重篤度を判断するのに十分なデータがないため、これらについてのいかなる主張も現時点では証拠に基づいていない」と述べた。「これまでのところ、ウイルスが変異して重篤度が低くなることはなかった。実際、その逆だ」と付け加えた。

WHOは加盟国向けのテクニカルブリーフィング文書で、変異したウイルスにはワクチンや以前の罹患(りかん)による免疫が効かず、感染が容易になる可能性があると指摘。

「世界レベルでオミクロンがさらに広がる可能性は高い」とし、「変異株の特性次第では将来に感染が急拡大する可能性があり、その場合は重大な結果をもたらす恐れがある」と警告した。

英保健省によると、英政府は29日に、主要7カ国(G7)の保健担当相による緊急会議を開く。バイデン米大統領も同日、最新情報を公表するとホワイトハウスが発表した。

オミクロン株の存在を最初に指摘した南ア医師会のアンジェリク・クッツェー会長は28日にBBCの番組で、「南アでわれわれが臨床で見ている症例はかなり軽症だ。私は感染の震源地におり、ここで診療していることを忘れないでほしい」と発言。オミクロン株では「誰も入院させていない」とし、「同僚と話したが、同じ状況だった」と語った。 

さらに、オミクロン株に対して世界の当局が不必要なほどパニックに陥っているかと質問されると、同会長は「現時点では明らかにそうだと言える」とした上で、2週間後の状況は変わっている可能性を挙げた。

警戒を促す専門家もいる。米ユタ大学のウイルス学者、スティーブン・ゴールドスタイン氏は、オミクロン株のゲノムには「幾つかの懸念要素」があるとし、ワクチンの有効性に対するそれらの影響は、今後数週間でより明らかになるだろうと述べた。

また、「世界の他の地域で症例が発生し始めており、非常に急速に広がっているように見受けられる。デルタ株よりもさらに感染力が高いのではないかという懸念が生じるが、断定するのは時期尚早だ」と、ズームで行ったインタビューで語った。

 

原題:WHO Urges Caution as South Africa Calls Omicron ‘Mild’ (2)、Urgent Push to Gauge Omicron Threat on Claim Symptoms ‘Mild’ (1)(抜粋)

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