2021/12/3

「前例のないフィールド」で活躍できる人材とは

NewsPicks Brand Design editor
 素材や部品、完成品、そしてIT・社会インフラまで、BtoBビジネスは、用途もユーザーも極めて多様だ。

 社会の縁の下としての活動は見えにくく、複雑でつかみどころがない。内容は専門的で、BtoCと比べて発信すべき情報量は各段に多い。

 このようにハードルが高いBtoBコミュニケーションの突破口となるのが「デジタル」だ。これまで3回の連載で、日本のBtoB企業にとってのデジタルコミュニケーションの可能性や、改革の必要性について述べた。

 その実現に向け、戦略から実行フェーズ、そして伴走まで、デジタルコミュニケーション支援を一気通貫で引き受けるのがイントリックスだ。ダイキン工業浜松ホトニクスなど、数多くのBtoB企業を担当している。

 なぜ、イントリックスは一気通貫して実行でき、支持されるのか。同社で働く4名の社員に聞いた。
INDEX
  • 全部で12職種。一気通貫の舞台裏
  • 意見がぶつかる。だから融合できる
  • 私たちがBtoBコミュニケーションに取り組む理由

全部で12職種。一気通貫の舞台裏

──イントリックスではどんな職種の方が集まって、「一気通貫」を実現しているのでしょうか?
千代康彦(以下、千代) 私たちの言う「一気通貫」とは戦略を描くだけでなく、具現化から成果刈り取りまでを、責任を持って伴走支援することです。
 企業のデジタルコミュニケーション推進は、
・全体戦略の立案
・Webサイトをはじめとしたコミュニケーションの設計・構築
・品質維持・向上のための運用
から成ります。各社の業種・業態・文化に応じたデジタルコミュニケーションのあり方を定め、それに沿ったデジタル接点の構築を、クリエイティブとテクノロジーの両面で実現するのです。
 そのため、当社には全部で12の職種があり、多様なバックグラウンドの人材が集まっています。60名の会社としてはかなり多いですが、一気通貫するにはどれも欠かせません。
 例えば、私は前職がSIのエンジニアで、企業の業務基幹関係やビッグデータ解析、仮想通貨決済など、さまざまなシステム構築に従事していました。
──なぜSIではなく、イントリックスを選んだのでしょうか?
千代 システム構築を主体とした携わり方に限界を感じたんです。
 例えば、既製のツール導入が最善策であった場合でも、SIの収益構造上スクラッチで開発したり、資本や業務提携の兼ね合いから特定のサービス・ベンダーにひも付く提案をすることがありました。
 しかしイントリックスは、戦略・クリエイティブ・テクノロジーと、デジタルコミュニケーションに必要な要素を全方位でカバーし、特定のソフトウェアやサービスを使わない完全中立の立場を貫いています。
 つまり、お客様の課題に忠実に向き合い、本当に必要なことだけを提案できる
 ある企業でシステムまわりのトラブルを調査したところ、今後数年にわたって足かせになりそうな兆候を見つけました。
 そのシステムは導入されたばかりでしたが、最終的に廃棄をおすすめし、「最初はありえない提案だと思ったけど、結果的に負の遺産化を回避できた」と感謝されました。
 こんな提案は、SIでは難しかったと思います。普通はさまざまな制約がありますからね。
──SI時代と比べ、関わるフェーズや仕事への向き合い方など大きく変化したと思います。
千代 自由ほど怖いものはない、と言いますが、それを地で行く経験でした(笑)
 SI時代はお客様のビジネス課題が明確で、やるべきこともある程度はっきりしていたんです。
 ところが、デジタルコミュニケーションでは、お客様のゴールがはっきりしておらず、要求事項も漠然とした状態から始まることが多い。だから、何をやるべきかから考えなければいけません。全て、自由なわけです。
 これこそが自分の求めていた、根源に立ち返っての課題解決だったのですが、慣れるのには時間がかかりました。
 SIの観点だと、具体的な仕様に落とし込めていないことがあまりにも多く、最初は「本当にこんな粒度で問題ないのか?」と不安を覚えたものです。
 しかし考えてみれば、本格的なBtoBのデジタルコミュニケーションにはまだ10年程度の歴史しかありません。
 つまり、ここは教科書のない世界。だったらこの自由を楽しもう。途中から、そう思うようになりました。
──金藤さんと中村さんは新卒入社とのことですが、BtoBのデジタルコミュニケーション支援という聞き慣れない領域への不安はなかったですか?
金藤恭世(以下、金藤)「新卒なんて分からないのが当然だ」と開き直っていたので、正直不安はありませんでした。むしろ知らない世界が広がっている、その可能性にワクワクしていました。
 当初、戦略立案に興味があったのですが、研修を経て情報設計を担うIA職への興味を強め、配属希望が通りました。
 ただ、数か月前まではその職種すら認知しておらず、会社というものもわかっていない自分が、興味だけでいきなり企業サイトの情報設計などできるのか。一抹の不安もありました。
 でも、その心配は杞憂でした。最初に取り組んだ建材メーカーのプロジェクトでは、「BtoBビジネスへの理解なくして価値ある情報設計はできない」という上司の判断で、IAとしてではなくアナリストとして調査・戦略立案フェーズにアサインされたのです。
 このプロジェクトでは、設計士、建設会社、施主、エンドユーザーといった多様なユーザー像や、建築における商流など、BtoBの複雑さを具体的に学ぶことができました。この経験は、今の仕事の土台となっています。
 イントリックスではよく、「職種間の“のりしろ”が大切」と言われます。職種が揃っているだけでは連携が機能しないため、職種同士で重複する領域を身に着けて接点を広げろ、という意味です。
 IA配属後の最初の仕事がIAではなかったことは、イントリックスがどれだけ“のりしろ”を大切にしているかの表れだと思います。
中村和哉(以下、中村)私はイントリックスの特徴である、戦略・クリエイティブ・テクノロジーを融合させた「三位一体」に惹かれて入社しました。私も不安は全くなかったです。
 もうすぐ入社4年目になりますが、戦略とデザインの協業だけでなく、さまざまな職種の方と連携する機会が多いので、物事の捉え方が多角的になりました。
 例えば、私たちが支援した機械メーカーのWebサイトでは、製品の基本情報がメインサイトに掲載されている一方、関連する製品資料(カタログ、CAD、マニュアル等)は別サイトで提供されていました。
 ユーザーにとっては二度手間ですし、2つのサイトを管理する労力の問題もあり、戦略やクリエイティブの視点からも、すぐの統合しかありえない、と考えていました。
 しかし、当社のITコンサルタントから、抜け落ちた視点を指摘されました。
 製品資料のシステムは、業務システムとの連携性など、資料の管理に最適化されているため、統合にはそのメリットをどう残すのかの検討も必要だったのです。
 ユーザー視点での統合のメリットばかりを見て、運用視点でのデメリットへの配慮が不十分でした。
 戦略とデザインの融合に興味があって選んだこの仕事ですが、多様な関係者の満足を最大化するには、システムまで含めた「三位一体」でなければ意味がないことを痛感したできごとでした。
──山崎さんはクリエイティブ領域を管掌されていますが、入社されてからどのような日々でしたか?
山崎紘史(以下、山崎) ロジカルシンキングの必要性を痛感しています。
 Webサイトはベースだけでなく、各階層やコンテンツごとにデザインが必要になるため、デザイン量そのものが多い。ブランドや運用の観点から、デザインに一貫性を持たせる必要もあるのが特徴です。
 また大企業の場合、100を超えるグループサイトへの展開性も考慮しなければいけません。
 さらに、イントリックスではデザインを作るだけではなく、長く使われるためのデザインシステムを確立することが求められるので、ロジカルシンキングが不可欠
 そのため、入社した頃は戦略系のメンバーから、論理思考やドキュメンテーション、プレゼンテーションスキルを必死に盗もうとしていました。
──大規模Webサイトに必要なこと、イントリックスならではのアプローチなど、身に着けるべきことが多そうですね。
 イントリックスにいて特に感じるのは、お客様との距離が近く、リアルな課題感や期待の機微を直接感じられること。この環境は、とてもありがたいですね。
 デザインはデジタルコミュニケーションを実現する手段に過ぎません。お客様のことを正しく伝えるには、根っこの課題と実現したい姿の理解が必要です。
 例えば、私がWebデザインと撮影の両方を担当しているある電機メーカーでは、すべての国内工場を回り、現場の方から工場長まで、幅広い方々とお話をしました。
 そうすることで、普段本社部門から聞く以上のリアルなストーリーに触れられます。逆に、『あの方針がここまでしっかり浸透しているんだ』と、企業の明確な軸を肌で感じることもあります。
 デザインする際には、こうして得たものが生きてきます。
 お客様の強みを生で感じるほど、表現への思いは強くなりますし、BtoBの場合は外部からは見えにくい価値が本当に多いので、伝えがいもあります。

意見がぶつかる。だから融合できる

──みなさん、異職種連携から多くを学んでいるのですね。とはいえ、実際には大変なこともあるのでは?
金藤 最終的に目指すゴールは同じでも、職種ごとの視点や思考回路は、びっくりするくらい異なります。
中村 例えば、戦略チームは物事をざっくり捉える傾向が強い。お客様からのご相談の多くはぼんやりしていて、細かいことは横に置かないと話が進まないからです。
 一方、システムチームは精緻に考えようとします。10万行のプログラムに1行の間違いがあるだけで動かない世界なので、それが自然な振る舞いなわけです。
千代 業務システム構築では、業務・処理・データの流れを精緻に理解し、さまざまなファクトを丹念に積み上げていくことが求められます。
 一方、デジタルコミュニケーションの構築は、業務フローがあいまいで、ファクトもないため、論理的にこうだろうという仮説で臨むしかない。
 最初は仮説から入ることを、いい加減に感じましたが、ファクトの積み上げにこだわっても徒労に終わることがわかり、逆に今ではこれしかないと思っています。
 結局、視点が異なるといっても、立ち位置がそうさせているだけで、同じ立場になれば同じ結論になることって多いんですよね。
 立ち位置を合わせれば理解できる。この考えのもと、イントリックスでは、双方の視点を理解できるまで徹底的に議論します。
山崎 それができる環境って、Web制作やシステム構築を手掛ける世界では、かなり珍しいと思います。工数面を考えていたら、普通、そんな余裕はないですから。
 でも、議論を尽くさないで、根源的な課題解決策は見つかりません。多様なメンバーのベクトルを合わせるためにも、徹底した議論は欠かせないのです。

私たちがBtoBコミュニケーションに取り組む理由

──なぜ、そのように手探りの続くBtoBのデジタルコミュニケーションに可能性を感じるのでしょうか?
山崎 日本のBtoBには、伝えるべきことがたくさんあるとわかったからです。
 “作れば売れる”状態が長く続いたため、日本のBtoBは、あまり「伝える」努力をしてきませんでした。
 しかし、大競争時代を迎えた今、クリエイティブの目線を通じて、BtoBの難しい技術や思想、目に目えない価値を訴求することは 、製造業が生き残るために不可欠です。
千代 日本の製造業はよく「技術で勝って、ビジネスで負ける」と言われます。「ビジネスでも勝つ」ためには組織改革や人材育成も必要ですが、これには時間がかかります。
 しかし、今ある技術を伝えることなら、今日からでもできます。むしろ、これまで伝える努力をしてきていない分、改善余地は大きく、即効性も期待できると思います。
 デジタルコミュニケーション強化は日本の製造業復権の“勝ち筋”。そう思えたので、入社時のショックも乗り越えられました。(笑)
──このお仕事に、深い意義を感じていらっしゃるのですね。最後に、イントリックスではどのような方が活躍できると思いますか?
金藤 日常の中で接点の薄いBtoB企業を理解するのは大変ですが、発見の連続でもあります。それを面白いと感じる方には刺激の多い環境です。
中村 私も金藤さんと同じです。
 日本の製造業に関心がある方には、デジタルコミュニケーションで企業の強みを余すことなく伝え、業界の未来づくりの一端を担える面白さがあると思います。
山崎 私は、クリエイティブ戦略に関わる中で、どのBtoB企業も写真・動画素材が大幅に不足していることに気づき、写真撮影・ストックサービスを立ち上げました。
 BtoBのデジタルコミュニケーションは本格化して間もない分、足りないことだらけ。見方を変えれば、踏襲すべき前例のない、とても自由なフィールドです。
日本のBtoB企業の価値を伝えるために必要なことは何でもやる』『教科書がないなら自分たちで整備する』そう考えているのが、イントリックスです。
 日本の製造業の活性化に貢献したい方は、是非、その思いを当社で発揮してください。