2021/11/3

【壮絶】日本に、すごすぎる「大豆キング」がいた

NewsPicks 編集部
日本の未来は大豆にあるーー。
脱炭素と聞くと、まずエネルギーを思い浮かべがち。だけど、農業で排出される「牛のげっぷ」も喫緊の課題で、特に牛が吐き出すメタンは、CO2よりも短期の温室効果がはるかに大きいので、COP26でも議題になっていると聞く。
そんなげっぷ問題の答えが、「植物肉」だ。
もちろん食べ物は好き
植物肉は今、動物肉の代替として、欧米で浸透していて、市場は2020年の時点で約294億ドル(3兆円強)まで拡大しているらしい。
とはいえ、これまで「海の向こうの話でしょ」と見過ごしていたのが正直なところ。だけど、ここに来て日本に「すごい植物肉がある」との噂を聞きつけた。
「ミラクルミート」と呼ばれるその植物肉は、日本食に欠かせない「大豆」を操り、牛肉、メンチカツ、唐揚げなどの味や食感を再現してるというのだ。すでにフレッシュネスバーガー、ニチレイ、イオンなどでも採用されているという。
だが、そんな「おいしい話」があっていいのか。私は、食べるまでは信じないぞ…!
張り切って食べてみたら、正直、想像を超えるクオリティだった。
めちゃめちゃおいしかった。味も、食感も肉を食べているみたいで、植物肉へのイメージが180度変わってしまった。
これは、もしかすると、本当にすごいテクノロジーではないのか……?
その真相を探るべく、私はフードベンチャー「DAIZ」でゼロからこの肉を開発してきた落合孝次氏を直撃した。すると、大豆を操るテクノロジーだけでなく、その人生までもが壮絶だった…。
INDEX
  • ① 大豆が「肉」になるからくり
  • ②地味な5000回が「魔法」に変わる
  • ③借金5億…。「発芽キング」の壮絶人生
  • ④ 今は「スルメの硬さ」も再現できる
  • ⑤「脱炭素」で米国にも進出
  • ⑥大豆で「世界平和」を実現する

① 大豆が「肉」になるからくり

──正直、半信半疑で食べたのですが、衝撃を受けてしまいました…。
落合 植物肉には「異風味」とか「食感が足りない」というイメージがありますね。
でも、ミラクルミートはそのペインを解決できているからこそ、多くの方々に採用してもらえてると思っています。
実は、今をときめくアメリカのビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズでも、原料として使われるのは、大豆からサラダ油やデンプンを搾ったカスなんですね。
だから、油特有のクレヨンみたいな匂いがして、味付けの際にかなり添加物を入れる必要が出てきちゃう。食感も油かすだから、ワンパターンになってしまうんですね。
一方、ミラクルミートは原料に、発芽大豆を丸ごと使います。
大豆は発芽させることでうま味や機能性を上げるので、本物の肉のような味や食感を再現できちゃうんです。
──大豆を発芽させると、肉になる…?いきなりぶっこまれた気が。
昔から大豆は、タンパク質が豊富で「畑の肉」と言われていますね。だけど、発芽前の大豆は青臭いし、消化が難しくて、「どこがやねん」という感じです。
でも、我々の発芽技術を使えば、本当に「畑の肉」にできちゃうんですよ。