(ブルームバーグ): ソフトバンクグループの孫正義社長は過去最大のテクノロジー投資ファンドで、新規株式公開(IPO)市場をいま一度活用して多額の資金を借り入れた。

当局への届け出によると、ビジョン・ファンドは9月、2件のマージンローンで資金を調達した。一つは韓国の電子商取引大手クーパンの保有株式ほぼ全て、150億ドル(約1兆7000億円)相当を裏付け資産とした。もう一つは米食事宅配会社ドアダッシュの持ち株88億ドル相当を裏付けとした。ドアダッシュ保有株のうち担保に差し出された株式数は明らかでない。

借り入れた資金はサウジアラビアやアブダビの政府系ファンドなどビジョン・ファンド投資家への分配金の一部になると、事情に詳しい関係者は語った。投資家にはソフトバンクグループも含まれる。同社のマーケティング資料によると、ビジョン・ファンドとその後継であるビジョン・ファンド2は設立以来、計291億ドルの分配金を支払い、第2四半期だけでその額は67億ドルに上った。

ビジョン・ファンドは2019年にも同様の手法を活用。米ウーバー・テクノロジーズを含むシリコンバレーの企業2社の株式を担保に約40億ドルを借り入れた。これら3社は株式を公開したばかりか、もしくは公開を間近に控えていた。流動性のある資産を担保にすれば、借り入れははるかに容易になる。

事情に詳しい関係者によると、インサイダー取引の規定に抵触するのを避けるため、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのパートナー、リディア・ジェット氏が今週に入ってクーパンの取締役を退いた。同氏は2015年にソフトバンクGに入社する以前はJPモルガンとゴールドマン・サックス・グループに在籍していた。

ソフトバンクGは新たな資金調達とジェット氏のクーパン取締役退任についてのコメントを控えた。

原題:Vision Fund Borrows Against DoorDash, Coupang Stakes (1)(抜粋)

(第5段落以降を追加します。更新前の記事で第4段落の企業数を訂正済みです)

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