2021/10/24

【解説】財政赤字は是か非か。米経済政策の行方を握る大論争

INDEX
  • 対立する「新旧の経済観」
  • オバマ政権が残した教訓
  • 長期金利の低下で事情は一変
  • コロナ下の大規模支出も乗り切る
  • 債務膨張に党内から「待った」
  • 社会支出は長期的にプラス
  • オバマ時代の感覚を刷新できるか

対立する「新旧の経済観」

過去10年余りの間に、財政赤字や国の借金、長期にわたる社会支出といった問題に対するエコノミストの見解は、大きく変化した。
大半の民主党議員は、この新しい見方を受け入れている。バイデンの国内政策の方針も、こうした見方に基づいている。
しかし、ごく一部ではあるが、納得しない民主党議員もいる。彼らはオバマ政権初期に幅広く支持されていた考え方にこだわり、「債務と支出のリスク」に注目している。
両者の軋轢(あつれき)と、それがどのように解決されるか(あるいは解決されないか)は、今後のバイデン政権とアメリカの経済政策の行方を決する核心と言えるかもしれない。
表面的には、政治感覚が異なる議員たちが対立しているように見える。しかしその背後で起きているのは、新旧の経済観の対立だ。
エコノミスト(特に左傾したエコノミスト)の間で主流になった新しい経済観は、中道右派の論者にも部分的に受け入れられている。
(Phil Roeder/Getty Images)