2021/10/26

【斎藤隆】メジャーで学んだコントロールできることに集中する方法

NewsPicks Brand Design editor
人生「100年時代」の今、私たちビジネスパーソンの「現役期間」も伸長している。疲れやすさを感じはじめる30代、40代であれば、「今から何か対策しなくては」と考えることだろう。
対策のひとつとして一般的な「サプリメント」という選択に、今変化が起きている。一人ひとりに必要な栄養素を摂る、「パーソナライズド」のムーブメントが起きているのだ。
では、パフォーマンス高く、長く働き続けるために、私たちは何をすべきか。プロ野球選手として長年にわたり活躍した経験を持つ斎藤隆氏と、ファンケルのパーソナライズドサプリメント「パーソナルワン」開発担当者である向山嘉一氏が意見を交わす。
INDEX
  • 不調にならないと「健康」を意識しない私たち
  • 独自の技術開発が世界に先駆けたサプリを生んだ
  • 高パフォーマンスの秘訣は己を知ること
  • アスリートは知っている「体を作るには時間がかかる」
  • 斎藤流「コントロールできるものに集中する」生き方

不調にならないと「健康」を意識しない私たち

斎藤隆(以下、斎藤) 僕がプロ野球選手になったのは1992年ですが、2003年に肩の手術をするまでは、あまり自分の体と向き合っていませんでした。
手術のあと、医師から「動かしていいですよ」と言われたのに、腕が上がらない。それで「俺の選手生命、終わったんじゃないか」と真っ青になったんです。
向山嘉一(以下、向山) 健康な人は、健康について、あまり意識しませんからね。
ファンケルが健康食品事業をはじめたのは1994年です。当時から社会問題になっていた医療費の増大を解決すべく、サプリメントによる健康管理を広めることが目的でした。今でいう「未病」の考え方です。
それから30年近く、サプリメントによって健康を維持・増進する意義を訴えてきましたが、まだ十分に浸透しているとは言えません。
斎藤 肩の手術までは、恥ずかしながら過信がありました。自分の体のことをよくわかっていなかったし、体調をどのように維持するかということにも正直、無頓着でした。
これはまずいと思ってパーソナルトレーナーをつけたのを機に、僕の野球人生が変わりました。球団だと、たとえば一軍にトレーナーが3、4人いても、彼らが25人の選手を見るので「僕だけ」というわけにはいきません。
向山 それだと、それぞれの選手に必要なトレーニングや栄養の管理は難しいかもしれませんね。
斎藤 まさに。僕がプロになりたての頃なんて、まだまだ昭和的でしたし。「ピッチャーは体力をつけるために走れ」と言われ、「なんで走ると体力がつくんですか」と聞いても、「いいから走れ!」としか返ってこない(笑)。
でも、パーソナルトレーナーに同じ質問をぶつけたら、短距離・中距離・長距離を走ったとき、体にどんな影響があるかを教えた上で、「斎藤さんは、こういうバランスでそれぞれの距離を走るといい」と提示してくれた。それを聞いて、初めて積極的に走る気になれました。
向山 やっぱり根拠を示されると納得できるし、やる気も出ますよね。
斎藤 ちなみに、「走ったらピッチングもよくなるんですか」と聞いたら、「もしそうなら、陸上選手を連れてくるだけで全部解決しちゃいますよ」って(笑)。
iStock.com/Matt_Brown
向山 パーソナルトレーナーをつけてから、食事も変わったんですか。
斎藤 「発酵食品をメニューに入れましょう。最高なのは納豆です」と指導されて、実践しました。僕は納豆嫌いなので、キムチにしましたけど。
最近は発酵食品が注目を集めているし、アスリートの間でも腸活ブームになっています。どんなにいいものを摂っても、胃腸が健康でなければ意味がないですからね。
向山 「第二の脳」と言われるほどで、腸の健康は全身に大きな影響を及ぼしますからね。また、アスリートの方は運動量が桁違いに多いので、ビタミン・ミネラルなどの基本栄養を意識的に摂取していても、汗と一緒に体外へ出ていったり、吸収や代謝の過程で不足気味になるケースが多いです。
斎藤 現役時代からサプリメントは摂っていましたが、何をどれだけ摂ればいいかわからないので、いわゆるマルチビタミンを飲んでいました。でも、足りない部分は足りないままだったんでしょうね。

独自の技術開発が世界に先駆けたサプリを生んだ

向山 パーソナルトレーナーの話がありましたが、ファンケルも昨年2月、「パーソナルワン」という一人ひとりに最適なサプリメントを提案するサービスをはじめました。
斎藤 すごく気になっているんですが、パーソナルワンはその人に何が足りないかを、どうやって分析するんですか。
向山 医師監修のもと開発されたウェブアンケートと独自の尿検査です。
はじめに、ご自宅で食習慣や生活習慣に関するアンケートと、日本人が不足しがちな栄養素を確認する尿検査を実施いただき、その方の現在の健康状態を分析しグラフで見える化します。
その結果をもとに、身体の基盤を整えるのに必要なビタミン・ミネラルや、生活習慣などから見える現状の健康悩みに対応したサプリメントをオーダーメイドでご提案します。1回分ワンパックで1日2回、30日分を毎月定期的にお届けするのが基本です。
斎藤 めちゃくちゃいいですね。現役中にあったら本当に飛びついていましたよ。
でも、尿は体に必要ないものや、過多になったものを排出するイメージです。どうして尿で必要なものがわかるんですか。
向山 おっしゃる通りです。もともと尿は血液から作られ、腎臓でこしとられたものを排出していますが、その際に必要なものもごく微量排出されているのです。
まだわからないこともあるのですが、研究技術の発展によって、尿を分析することで体内の状態がわかるようになっています。
なかでも、鉄と亜鉛の充足状態を把握することが難しかったのですが、ファンケルの長年の研究によって、世界に先駆けて実用化に成功しました。
斎藤 健康状態を見るのに、一般的なのは採血です。注射が嫌いで、見ているだけで倒れそうになる人もいますけど、尿検査ならハードルが低いですね。
向山 それもファンケルが尿検査にこだわった理由のひとつです。誰もが手軽に健康管理をするには、簡便で苦痛を伴わないことが非常に重要です。
創業者の池森賢二は、健康食品事業をスタートさせた当時から「健康のためには、一人ひとりに不足している栄養素をオーダーメイドで提案することがもっとも効率的だ」と考えていました。
技術的な問題等でなかなか実現できずにいましたが、ようやく創業時からの夢を叶えることができました。

高パフォーマンスの秘訣は己を知ること

斎藤 僕はパーソナルトレーナーをつけたことで、初めて自分の長所や短所を突き詰めて考えることができました。つらい面もありますが、足りない部分を補い、優れている部分を伸ばすためには、自分自身を知ることが欠かせません。
たとえば、「球技は苦手だけど、ゆっくりならかなりの距離走れる」という人もいます。肉体的にどんな理由があって、そういう長所があるのかを知るってすごく大事だし、それを知ることで、よりよい体を作るために必要なイメージが固まっていく。
優秀なアスリートは、身体的な能力だけじゃなく、イメージする能力も高いことが多いんです。
向山 サプリメントは各々のお悩みに対応したものが多いことから、健康上のお悩みが出てくる40〜50代のお客様が中心です。一方、「パーソナルワン」は20〜30代の女性のお客様にも好評で、これはほかのサプリメントにない特徴です。
必要なサプリメントがワンパックになるという便利さに加え、自分の健康状態が客観的なデータとして「見える化」されることにも魅力を感じていただいていると考えています。
斎藤 口にしていないのか、あるいは体が吸収していないのか、自分以外のみんなも足りていないのか。そういうことも含めて理解すると、ますます健康に対する意識が向上しそうですね。
そもそも、こういうオーダーメイドのサプリメントって結構あるものなんですか。
向山 まったくなかったわけではないですが、パーソナルジムなど、個人に焦点を当てたサービスが普及することで、ここ数年で増えてきたと感じています。
パーソナルワンに申し込むと、自分の健康状態を客観的に「見える化」することができる。
アンケートをもとに、数あるパターンの中からもっともその方に近い組み合せを提案するサプリメントもありますが、アンケートと尿検査でサプリメントをパーソナライズするのは世界に先駆けた技術です。
また、一人ひとり健康状態は異なることから、どんなケースでも対応できるよう、10億通り以上の組み合わせを実現するのは、ファンケル以外ほぼ不可能です。「一度に摂るのではなく、回数を分けて摂ったほうがよい」といった、体内での吸収率も考慮しているんですよ。
斎藤 ビタミンによっても、吸収のしやすさや体内に残る時間に違いがありますからね。
向山 おっしゃるとおりです。それから、いろいろなサプリメントをワンパックに収めるのが、地味ながら技術の結晶なんです。
「形状や大きさも違うカプセル・錠剤が一緒に入っているのは、見る人が見たら驚くはず」と向山氏。
また、一見なんの変哲もないパッケージですが、これもさまざまな実験の知見の蓄積によるもの。湿気や酸化など、サプリメントの品質の劣化につながるものを防ぐ、最適なパッケージを使用しています。
斎藤 昔飲んでいた粉薬の包装と同じように見えますが、全然違うんですね。
向山 パッと見ではわかりませんよね。ファンケルって、お客様が絶対気づかないようなところで、馬鹿正直に努力をしている会社なんです。最近はよく「アピールが下手だ」と言われます(苦笑)。

アスリートは知っている「体を作るには時間がかかる」

斎藤 体について意識しはじめ、いろいろ勉強するなかで、望み通りの体を作るのは時間がかかるということがよくわかりました。
でも、アスリートならともかく、一般の人はなかなか健康管理のための努力を続けるのが難しいでしょうね。今の僕自身も、現役時代と比べるとかなり大らかな健康管理です。
向山 サプリメントに対しても、「本当に効いているのかわからない」という声はやはりありますね。サプリメントは薬ではなく、健康の維持・増進のために摂取するものですから、お客様には「数か月は続けてください」とご案内しています。
斎藤 細胞は日々、生まれては死んでいきます。爪や髪の毛は目で見てわかりますが、実際には、内臓も、筋肉も骨も、どんどん細胞が入れ替わっている。
骨だと、年齢によっては全部入れ替わるのに10年ほどかかると聞きました。カルシウムを摂ってもすぐには変化の自覚がないのも納得です。
逆に、飲んだ翌日から効果が出はじめるようなものは、スポーツの世界では禁止されます(笑)。
向山 健康管理のために重要なのが「継続」ですので、「パーソナルワン」はそのためにいろいろな仕組みを用意しています。専用の無料相談窓口を設けているのもその一環。
食事管理アプリ「あすけん」と連携し、毎日の食事にパーソナルワンを加えたとき、基本栄養素がどのくらい充足しているか確認できるようにもしています。食事記録にもとづいて、栄養士から食習慣を改善するためのアドバイスも受けられます。
斎藤 継続の難しさって、「どういうかたちで成果が表れたのをよしとするか」と密接にかかわっています。だから目に見えて成果が出れば続けやすいし、見えにくいものであれば難しい。
iStock.com/metamorworks
僕の場合、「ときどき、みんなが驚くようなパフォーマンスを発揮する」よりも、「調子の悪いときでも、安定したパフォーマンスを発揮できる」のが目指すところだったので、なおさらです。
なぜかというと、メジャーリーグでは年間162試合もあります。ものすごいパフォーマンスを発揮できても、回復に1週間かかるようでは話になりません。
向山 回復の早い体、疲れづらい体が求められるんですね。
斎藤 そして、162試合のうち最後の3試合は、プレーオフ出場をかけた大事な試合です。レギュラーシーズンを経て、すでにボロボロの状態でもやりきれる体を作れたかどうか。1年かかって、ようやくその答えが出るんです。
ビジネスパーソンであっても、同じことが言えるんじゃないでしょうか。月末や年末といった忙しい時期でも体調を崩さない体は、誰もが欲しいですからね。

斎藤流「コントロールできるものに集中する」生き方

向山 ファンケルでは、よく「健康が目的ではない」という話をします。斎藤さんのようなアスリートだと、「パフォーマンスを発揮するため」と目的がはっきりしているのですが、それがぼんやりしている人は少なくありません。
健康の目的は何か、その先に何が待っているのかを明確にすることはとても大切です。たとえば、「毎週末、子どもと近所の公園に行って、一緒になって遊ぶため」といった、些細なことでもいいんです。
でも、そこを明確にすると「最善の道って何だろう」という疑問が湧いてきて、「栄養を補う」という選択肢も自然と出てくるし、その努力も続けられるんです。
斎藤 たしかに健康は最終目的じゃないですよね。メジャーに行って、カルチャーショックを受けたのが、向こうの選手たちがすごく家族を大事にしていたことです。
シーズン中の大事なタイミングで、「奥さんが出産するから」とレギュラー選手が平気で1週間いなくなる。最初のうちは「え?」と思っていました。でも彼らは、「家族と理想的な暮らしを送るために自分の能力を使って報酬を得ているんだから、当然だ」と言うんです。
メジャーに行く前、うちの娘たちが生まれたとき、僕はキャンプ中で帰れませんでした。おかげで、いまだに妻から「出産のとき、いなかったよね」と言われます(苦笑)。
向山 それはカルチャーショックですね。
斎藤 メジャーでのカルチャーショックといえば、もうひとつ。
打たれてめちゃくちゃ落ち込んでいたら、「おまえ、なに落ち込んでるんだ。明日も試合があるんだぞ」と。「防御率0.00のピッチャーなんかいない。落ち込むくらいなら、明日のことを考えろ」と言われたんです。
結果は変えられない。そういうコントロール不可能なものじゃなく、自分でコントロールできるものに集中しろ、というアドバイスだったんだと思っています。
たとえば、マウンドに出ていくタイミングは監督が決めるし、審判のストライクゾーン、その日の天気、風……スポーツではコントロールできないもののほうが多い。会社でも上司や部下はコントロールできないし、きっと僕らと同じですよね。
じゃあ何がコントロールできるかというと、自分のコンディションなんです。そのなかでも、「何を食べるか」はコントロールしやすい。
iStock.com/kuppa_rock
引退した今では、ついついその日に飲むお酒に合う食事を選びがちなんですが。
向山 食事だけでは足りない部分をサプリメントで補ってもらうというのが、ファンケルの考え方です。
斎藤 自分が望む体作りは長期戦です。だから僕は、「そのための種まきだ」と思いながら日々を送っています。
花が咲くのは来年や再来年になるかもしれないけど、種をまかない限り花は咲かない。そしてサプリメントって、いい種を作るための材料でもあると思うんですよ。
向山 そうですね。望み通りの花を咲かせるためのお手伝いを、今まで以上の精度でできるようになりました。「パーソナルワン」を通じて、日本の人々がより望み通りの生活を送れるようにしていきたいです。