NY外国為替市場 円相場 1ドル112円台に値下がり 1年7か月ぶり
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今までは円安になると輸出産業の黒字が増え、日本経済にとって良いと思われてきました。しかし、学習院大学の清水教授の分析によると、日本の製造業は過去の円高局面で海外への生産移転を進めており、円安のメリットは大きく減少したと仰ってます。また、急激な為替変動も海外拠点の収益性が低下するため、好ましくないとも。今まで常識と言われてきたことも、ファクトフルネス的に検証して考えることが大切ですね。
円安よりも変動抑制に利点 日本経済と為替相場：日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD0322A0T00C21A8000000/既に実質実効為替レートで測った日本円の実力は、相当に下落しています。それが輸出の実弾に貢献している、という話には、かなり無理があるように感じます。
円安であれば投資収益が膨らむという話もありますが、それがまた海外で再投資されれば日本のマクロ経済全体にとっては、あまり意味がない話とも言えます。
憂国論ではありませんが、円の価値をどう維持するかという話は、これから嫌でもついて回ります。海外から労働力を調達するにせよ、安い円で英語すら喋れない国に誰が来てくれるのか。
こうした視点が欠落している、ないしは意図的に無視している「論者」が少なくありません。
私は職業柄、欧州のエコノミストから日本財政に関して質問を受けることがよくありました。特に財政の持続可能性に関してですが、国内均衡を優先する裏で円の価値を犠牲にしていると説明すると、まず理解してくれました。大胆な金融緩和を主張するアベノミクスへの期待と２度の黒田バズーカを経てドル円の相場は８０円から１２５円前後まで一気に円安になり、１１０円前後に戻って長らく一進一退を続けています。１１２円なら未だその動きの範囲内。
低インフレに止まる日本をわき目に諸外国、なかでもアメリカでインフレ傾向が進んでいます。１ドル１００円の時に日本で１個１００円、アメリカで１個１ドルだったハンバーガーが、低インフレの日本で１００円に止まり、高インフレのアメリカで２ドルになったら、ドル円が５０円の円高にならない限り、１００円玉で日本のハンバーガーは１個買えるのにアメリカのハンバーガーは半分しか買えないことになってしまいます。そういう意味で、円は高くなるのが購買力に従う通常の動きです。
アベノミクスが始まる直前の８０円という円の実力（実質実効為替相）は、長く続いたインフレ率の格差等で、既にリーマンショック前より円安でした。それにも拘わらず極端な金融緩和で円安に導いたため、円の実力は当時の７割程度に下がり、今では戦後間もないころに並ぶ歴史的な円安水準です。円ベースの賃金は殆ど上がっていませんから、日本の勤労者の賃金は世界の中で７割ほど切り下がったのと同義です。
海外での生産が増えるなどして円安になっても昔ほど輸出は増えないのは確かですが、円安で賃金が諸外国対比で相対的に下がれば企業にとって日本での生産コストが下がり、日本に仕事が戻ります。受けられるサービス等の値段が相対的に下がるので、外国からの観光客も増えて行く。現に、２０１２年まで上昇を続けた日本企業の海外生産比率は２０１３年以降横這いに転じましたし、年間８百万人程度だった訪日外国人客数も、コロナ禍直前には３千万人を超えていた。そういう意味で円安は日本に一時的な活気をもたらしますが、それは長期的な日本の貧困化と引き換えです。
米国が５％を超えるインフレ状況で日本の物価は低迷していますから、ドル円は円高になってこそ釣り合うのです。日米のインフレ率の差とそれに従う長期金利の差を考えれば、円安に向かうのはむしろ異常で、この先の円安は、日本の弱さの反映です。円高を無理に抑え込むため極端な緩和策に力を入れるより、円高でも勝てるビジネス環境を日本に取り戻すことを新政権に望みたい。通貨の弱さは国の弱さでもあるのですから (^^;
