2021/8/30

【独占】誰も知らない「史上最速ユニコーン」の正体

NewsPicks NY支局長
「怒濤の勢い」とはまさにこのことだ。
2018年に創業したばかりの企業が、すでに8回にわたって約18億ドル(約2000億円、デット含む)を調達し、時価総額はすでに30億ドル(3300億円)を超える。
その名はThrasio(セラシオ)。日本ではほぼ知られていないこの企業が、今米国で旋風を巻き起こすのは、彼らが、誰も気づいていなかった現代の「ゴールドラッシュ」を探り当てたからだ。
それは、アマゾンの出品者ビジネスである。
あまり知られていないが、アマゾンのうち第三者が出品する「マーケットプレイス」はアマゾン直販を大きく超え、数十兆円が取引される経済圏となった。ここで生まれた出品者(セラー)たちは、億円単位を稼ぐ人も珍しくないにもかかわらず、手がつけられていなかった「金のなる原石」だった。
セラシオは、そうしたセラーたちを買収するRollup(買収事業)のビジネスで、一気に時代の寵児に。買収ブランドを統合し、オペレーションを最適化することで数倍に成長させることから、爆発的な評価を得たのだ。
今やセラシオフォロワーが数十社生まれるほどのブームになる中、NewsPicksは創業者カルロス・キャッシュマンに日本初のインタビューを敢行。この新ビジネスの創業から、今年の日本上陸までのすべてを「10つのポイント」とともにお届けする。
INDEX
  • ①史上最強の「起業家創出マシン」
  • ②「出品者が黒字」の不思議
  • ③ブランドの「意味」が異なる
  • ④アマゾンの世界展開についていく
  • ⑤「10兆円上場」の真偽

①史上最強の「起業家創出マシン」

──セラシオがアマゾン出品者の買収ビジネスを始めてから、この1年でこの分野にすさまじい額のマネーが集まっています。そもそもこの領域で起業しようと思ったきっかけはなんだったのですか。
まず私は、これまで10社以上を起業してきました。
Thrasioのきっかけとなったのは、2013年ごろにFacebook向けの広告企業を起業したことです。ECの顧客を抱えていたのですが、顧客獲得チャンネルとしてFacebookやインスタグラムがマストになり、全てを代行するようになっていたんです。
そこで気付かされたのが、2、3人という少ない人数でアジアからアメリカに製品を出荷するECがもたらすすさまじい価値でした。その中で、大金で事業売却したり、高額な資金調達をする人が出ている。
これはすさまじい地殻変動です。
そのときに、「自分でやればいいじゃん」と考えたのです。実際、広州の見本市に足を運べば、そこで見つけた商品をピックするだけで世界での販売をスタートできるわけですから。
これは一番単純化した創業のきっかけです。
そのとき、共同創業者となるジョシュ・シルバースタインに連絡を取りました。10年来の友人で何か一緒にやろうとずっと話していたのですが、ちょうど顧客のEC企業を買収するディールを終えなければならず、金融のプロである彼に助けを求めたのです。
彼はこの種のディールには天才的で、魔法使いとも思えるレベルです。このECのディールをまとめるなかで、一つのことに気付かされました。