FOMC議事要旨、大半の当局者が年内のテーパリング開始を予想
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6月のNY連銀によるプライマリーディーラー調査では、コンセンサスは来年1月に開始して12月終了でした。7月のFOMCを受けて若干の前倒しになった感がありましたが、今回の議事録を受けてコンセンサスはクリアになりました。9月と11月のFOMCで議論・決定して12月開始、1年間かけてゼロにするが既定路線になりそうです。ただ、7月時点ではパウエル議長は記者会見でデルタ株の悪影響は軽微と発言していました。問題の本丸は、金融緩和が資産価格を強力に押し上げる一方、実物経済はコロナの変異株により苦境から抜け出せないギャップにあります。資産価格を金融政策ではなく規制で抑える政策を検討すべき状況になってきたと思います。中国は不動産は売買規制、ビットコインは取引禁止、株価は営利性を抑制、所得格差は大金持ちに対して増税、と上手く対処している面があります。
今回の議事要旨は、資産買入れ策の効果に相当な分量を割いているのが特徴ですね。
中央銀行は、資産を買い増す際にはこれを「金融緩和」と説明したい訳です。ただ、そうすると、「では、資産の買い入れを減らすのはやはり引き締めではないか」と言われやすくなります。
これを回避し、「フローでの買い入れを減らしても緩和は続く」と説明することで市場への影響を少なくする方策として、中央銀行は、
①テーパリングと金利引き上げとの「切り離し」(→「テーパリングをしても、その後直ちに金利を上げるとは限りませんよ」)、
②資産買い入れの「ストック効果」の強調(→「中央銀行がフローでの資産買い入れを減らしても、ストックで相当な資産を持ち続けている限り緩和効果は続きますよ」)、
という言い方を強めていくのが普通です。今回の議事要旨もまさにその方向になっており、FRB、本当にテーパリングの準備に入ったんだなあ、と感じました。議事録の時点までの今年と去年のCPI(消費者物価指数)の上昇率は次の通りで()内が去年です。
1月 1.4 (2.5)
2月 1.7 (2.3)
3月 2.6 (1.5)
4月 4.2 (0.3)
5月 5.0 (0.1)
6月 5.4 (0.6) ←FOMC
7月 ? ( 1.0)
コロナ禍前の2019年と今年を比べると、2年間を均したインフレ率もじわじわ上がっています。
1月 1.94%
2月 2.01%
3月 2.08%
4月 2.23%
5月 2.53%
6月 2.99%←FOMC
7月 ?
?だった7月も前年同月と比べ5.4%上昇し、2年間を均した上昇率も3.15%に上がっています。一時的とされるインフレ率ですが、加速の兆候は続いたみたいです。
コロナ禍前に届かないとされる雇用にしても、その後、失業率は6月の5.9%から5.4%に下がり、非農業部門雇用者数は6月に続き973千人増と高い水準を維持し、就業者数もコロナ禍直前には届かないものの2017年くらいの水準まで戻っています。求人は7月に一段と増えて10年来の高い水準で賃金も上がり続け、労働力率が低いのは手厚い失業給付の上乗せで仕事に戻らない労働者が多いからとも言われます。
金融政策の効果が実体経済に及ぶには時間が掛かりますから、この状況で目標達成の結果を十分に見届けるまで更に待つと、景気が過熱して手遅れということもありえます。テーパリングの早期開始を支持する向きが、今は当時より増えているんじゃないのかな・・・
とはいえデルタ株の影響もあってか米国でも新規陽性者数が急伸しています。相手がウイルスだけに先行きは読み難く、急激に反応しがちな市場と時間を掛けて反応する実体経済を相手に、バランスシート・サイズをGDPの4割にまで膨らませたFRBの運営は難しそう。デルタ株が経済にどんな影響を及ぼすかは分からないと近頃おっしゃたと伝えられるパウエル議長が間近に迫ったジャクソンホール会議でどんなメッセージを出されるものか。動きから目が離せません (@@。