(ブルームバーグ): 東京五輪・パラリンピック終了後に選手村から生まれ変わる大規模マンション「晴海フラッグ」(東京都中央区)に注目が集まっている。価格発表後に五輪の1年延期が決まり、引き渡し時期が遅れることで販売が一時的に中止となったが、休止期間中に都心部のマンション価格が上昇し相対的に割安感が出ているためだ。

三井不動産や三菱地所など10社は晴海フラッグのモデルルーム公開を8月下旬に再開する。三井不は具体的な件数については言及を避けたものの、6月末に販売サイトをリニューアルして以来、想定を上回る反響を呼んでおり、販売休止期間中も5000件を超える資料の請求があったことを明らかにした。五輪の開催により晴海フラッグに対する関心が高まっているという。

晴海フラッグは銀座まで直線距離で約2.5キロメートルの立地に計5632戸の分譲・賃貸住宅のほか、商業施設なども付帯した大型プロジェクト。完成後は約1万2000人が住むことが想定されている。今回販売される区画は2020年1月に価格が発表され案内が始まったが、開催延期で入居開始時期が24年3月に先送りされたことで販売も休止していた。

現在、都心部のマンションの価格は上昇傾向にある。コロナ禍で家に広さを求める人が増えたほか、共働き世帯の増加なども影響している。不動産調査会社の東京カンテイの6月の調査では、千代田区や中央区、港区など都心6区の中古マンションの平均売り出し価格は9164万円(70平方メートル換算)と、前年同月比で11%上昇した。

一方で、晴海フラッグで今回販売される区画は昨年の価格発表時の水準に据え置かれており、72.88平方メートルの物件の価格は5700万円台となっている。安さの最大の理由は駅からの距離だ。

最も駅に近いものでも最寄りの都営大江戸線勝どき駅まで徒歩16分で、20分を超える棟もある。交通手段としては都営バスの始発バス停が近隣にあるほか、バス高速輸送システム「東京BRT」の運行も計画されている。

SBI証券の小澤公樹アナリストは「駅近の物件よりかなり安く、競争力はある」とみている。コロナ禍でテレワークが定着しており、駅に近くなくても割安な物件であれば住みたいという「ニーズが高まっている」という。

リクルートホールディングスが運営する住宅情報サービス「SUUMO(スーモ)」の柿崎隆編集長は、駅からの距離が遠いことを加味しても「確かに割安感と手頃感がある」と話す。勝どき駅周辺の新築物件は70平方メートルで8000万-9000万円前後なのに対し、晴海フラッグであれば6000万円台で同じ広さの部屋を購入できると述べた。

三井不の広報担当によると、昨年1月時点では予定販売数940戸に対し、2倍を超える2220組の登録申し込みがあった。入居時期の先送りでキャンセルされた物件が今回の販売に含まれる可能性もあるが、詳細は未定だという。

三井不動産レジデンシャル・プロジェクト推進室の香月聡室長は、晴海フラッグの価格について「われわれは極端に割安だとは思っていない。いまの公共交通機関の距離などから考えて、適切だと思っている」と話す。主要な交通手段がバスであることを「買う人がどう評価するかで、割高か割安か全く違う評価になる」と述べた。

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