[ロンドン 2日 ロイター] - 国際決済銀行(BIS)は2日、大手ハイテク企業の影響力が増しており、中央銀行と金融規制当局が直ちに状況を把握する必要があるとの報告書をまとめた。

規制当局の間では、フェイスブック、グーグル、アマゾン、アリババといった大手ハイテク企業が、大量のデータを活用して金融のあり方を急激に変え、銀行システム全体が不安定になるのではないかとの懸念が強まっている。

BISは、カルステンス総支配人らがまとめた報告書で、大手ハイテク決済企業2社がモバイル決済市場のシェア94%を握っている中国の事例などを紹介した。

中国はハイテク・電子商取引企業に対する取り締まりを強化しており、すでに市場の混乱を招いている。当局は昨年11月、アリババ傘下の金融会社アント・グループの新規株式公開(IPO)を阻止。最近では他のハイテク企業や個別学習指導企業などへの監視も強めている。

他の多くの国でも、ハイテク企業は急速に存在感を高めており、個人・中小企業向けの融資や、保険、資産運用などのサービスを提供している企業もある。

BISは報告書で「大手ハイテク企業の金融サービスへの参入は、市場支配力の集中とデータガバナンスを巡る新たな課題を生み出している」と指摘。

欧州連合(EU)、中国、米国では「個別企業に基づくルール」を採用する余地があるとし「支配力を持つプラットフォームの登場が通貨システムの統合性に及ぼす影響は、中央銀行の重要な関心事となるべきだ」としている。

報告書は、大手ハイテク企業の参入で、ループの閉じたシステムが登場し、ソーシャルメディアや電子商取引プラットフォームから得られるデータのネットワーク効果で、そうしたシステムが強化される場合、

ステーブルコイン(既存の通貨の裏付けのある仮想通貨)など、大手ハイテク企業の取り組みは、通貨システムにとって「ゲームチェンジャー(流れを変える出来事)」になる可能性があると指摘。

決済インフラが分断され、公共の利益に反する恐れがあるとし、「急激な変化の可能性を踏まえれば、支配的なプラットフォームが現在は存在しなくても、中央銀行は安心すべきではない」としている。

報告書は、中央銀行が今後の動向を予測し、大手ハイテク企業の取り組みで決済などの金融システムの一部がすでに変わりつつあるというシナリオの下で、政策を立案する必要があると主張。

「中央銀行と金融規制当局は、こうした動向を監視・理解するため、緊急に投資する必要がある」とし「そのような方法を通じて、必要な場合に素早く対応する準備を整えることができる」としている。