(本文中の一部語句を修正しました。)

[東京 28日 ロイター] - 日銀が15━16日に開いた金融政策決定会合で、民間金融機関による気候変動対応を支援する資金供給制度(気候変動対応オペ)について、中銀の使命との関係に留意しつつ対象範囲を慎重に選ぶことが重要との指摘が出ていたことが分かった。具体的な判断は金融機関に委ね、一定の開示を求めることで規律付けを図る仕組みは適当との意見も出ていた。

気候変動は世界的なテーマとなっているが、どのようなものをグリーン投資とみなすべきかといったタクソノミー(分類)の議論は国際的な合意がなされていない。日銀が28日公表した主な意見によると、外部環境が流動的な中で、市場中立性への配慮と政策の柔軟性を合わせ持つ今回の気候変動オペは現時点で適切な仕組みとの判断がなされた。

同会合では、気候変動対応オペが長い目でみてマクロ経済の安定に貢献すると考えられる息の長い取り組みだとの意見が出た。「息の長い取り組みとなる新たな資金供給は、貸付利率を0%とした上で、貸出促進付利制度上の付利は0%とすることが適当だ」との認識も示された。

ある委員は、気候変動対応に向けた経済・社会の変革には、巨額の投資が持続的に行われるエコシステムの構築が重要と指摘した。その上で、海外で検討が進む国境炭素税の導入や環境債市場の整備などの情勢変化を把握しつつ、情報発信などを通じて変革に貢献すべきだと述べた。

日銀は7月の会合で、気候変動対応オペの骨子素案などを決めた。

<国際商品市況の動向に留意>

先進国の中には、ワクチン接種が進み、経済が正常化する中でインフレ率が高まり、金融緩和の縮小を模索する動きもみられる。一方、日本は2%の物価安定目標の達成には距離があるため、「時期尚早に金融を引き締めないことが重要」との意見が出ていた。

物価については、原油価格をはじめとする国際商品市況が国内企業物価や企業の価格設定行動などに与える影響に留意か必要との指摘があった。

日本でもワクチンの普及が加速すれば経済活動が想定以上に活発化する可能性はあるが、当面、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済への下押しリスクには注意が必要となる。政策運営を巡っては、引き続き「3つの柱」による金融緩和を通じ、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要との意見が出ていた。

「将来、感染症対策の財源を確保していく過程では経済活動に影響が及ぶ可能性があり、財政健全化を巡る今後の議論を注視する必要がある」との意見もあった。

(杉山健太郎)

*内容を追加しました。